天文ガイド 惑星の近況 2006年1月号 (No.70)
伊賀祐一
2005年10月の惑星観測です。10月23日に合をむかえた木星は、福井英人氏(静岡県)から10月1日に最後の観測報告がありました。10月30日に準大接近をむかえた火星の観測は、67人から31日間で1937観測(そのうち海外から39人で608観測)とピークをむかえました。朝方の東天の土星の観測は、12人から8日間で36観測(そのうち海外から2人で4観測)でした。

10月の火星:最接近とダストストーム(安達 誠)
10月は、火星が最接近になる月でした。日没後東天に赤く明るい姿を見せ、一般の市民にも特異な姿に写ったようです。西天の金星と好対照で、子どもにも強い関心を引き起こしていました。

望遠鏡で見ると、視直径はほとんど20秒になり、模様も見やすくなりました。それにつれ、月惑星研究会には、日本だけでなく、たくさんの国々から報告が送られてくるようになりました。先月同様いろいろな面白い現象が見られましたが、中でも、最も大きな興味を引いたのは10月13日のダストストームの発生と、その後の大きな変化でした。画像等は本誌カラーページもご覧ください。


画像1 2005年10月の火星
撮影/池村俊彦(名古屋市、31cm反射)、安達誠(大津市、31cm反射)、福井英人(藤枝市、25cmミューロン)、永長英夫(兵庫県、25cm反射)、畑中明利(三重県、40cmカセグレイン)(拡大)

@ ダストストームの発生

今回のダストストーム(黄雲)はLs=305°で発生しました。過去の例からみて、発生時期は平均的です。それまでに小規模なダストストームがもう少し観測されても良かったのですが、今年は見られないまま、いきなり発生し、火星面のおよそ半分をおおう姿にまで拡がりました。発生した場所は砂嵐が頻発する所として有名なクリセ平原です。この領域は昼夜の温度変化の少ない特別な地域になっています。このクリセ平原のすぐ北側には、アキダリウムと呼ばれる北半球唯一の大きな暗色模様が隣接していることも、ダストストームが発生する要因の一つと考えられます。

今回のダストストームは全部で3つの発生源がありますが、いずれもこのクリセ平原で起こっています。近年の何回かの接近でもこの地域で発生している、ダストストームの名所です。発生日、Ls、場所を示します。

第1波10月13日Ls=305°西経40°北緯0°
第2波10月18日Ls=308°西経43°北緯3°
第3波10月27日Ls=313°西経30°北緯5°

今回のダストストームは特に第2波が大きく、扇形に南方へ拡がって行く様子がとらえられています。東はヘラスの西にあるヘレスポントスまで、西はソリスまで、経度方向に135°程度拡がったとみられます。緯度方向には発生地点からしだいに南行し、最も拡がった時は南極冠をおおい隠すようにまでなりました。しかし、南極をこえて反対側に達するまでには至りませんでした。

A ヘラス北部の白点

10月7日、柚木健吉氏(堺市)はヘラスの北東方向のアウソニア北部に、青画像で白い斑点をとらえました。夕方のリムに近くなる(火星面での太陽の地平光度が低くなる)程明るくなる傾向がとらえられており、明らかに火星表面の変化の記録です。特徴からみると、オリンピア山にかかる山岳雲の特徴を示しています。10月11日にも同じものを根市満之氏(青森県)によって再びとらえられました。この白い斑点は山岳雲の可能性がありますが、この部分には目立った高山は見られません。はっきりした原因が分からない、珍しい現象でした。


画像2 2005年10月7日の火星:ヘラス北部の白点
撮影/ 柚木健吉(堺市、20cm反射)(拡大)

B 活発な北極フード

今月は北極フードが非常に活発でした。特にアキダリウム付近では明るい白雲が見られ、台風だと思われるような明るい光斑がしばしば現れました。全周を点検すると、アキダリウム付近が特に明るく幅も広くなり、その他の地域でも白く明るくなった姿が見られました。

この北極フードの下では、新たな北極冠が作られています。北極地方は一日中、日の当たらない状態が続いていますが、時折、強く明るくなる日がありました。

C 永久南極冠

10月に入ると、南極冠の大きさは非常に小さくなりました。眼視では気流が悪くなると存在すら見えなくなる状態になりましたが、気流の良い時は見えていました。また、画像でも気流が良い時は写ることが分かりました。経度によっては見えないこともあるため、観測には注意が必要です。

現在見られる南極冠は、ドライアイスはすっかりなくなり、水の氷になっています(永久南極冠)。過去の眼視観測者から、南極冠が黄色っぽくなるという記録が残されていますが、今回も黄色くとらえられています。原因はダストストームが南極冠をおおっているためです。見かけが小さいため、色を見るのは、よほどのよい条件がそろわないと難しいようです。


画像3 火星展開図 (2005年9月13日−10月18日)
撮影/ D.Peach(イギリス、35cmSCT)(拡大)

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