天文ガイド 惑星の近況 2013年12月号 (No.165)
堀川邦昭、安達誠

10月16日に西矩を迎える木星は、夜半には北東天に昇り、明け方には天頂近くに達するよ うになりました。土星は9月で観測シーズン終了となりましたが、来年4月に接近する火星 の観測がスタートしています。

ここでは9月後半から10月前半にかけての惑星面についてまとめます。この記事中の日時 は、すべて世界時(UT)となっています。

木星

9月に始まった南赤道縞(SEB)のナゾの明部と大赤斑(GRS)の会合は、現在もゆっくりと進 行しており、大赤斑前方のSEBでは、明部から流出したと思われる赤みを帯びた雲が勢力 を広げつつあります。元々、赤斑湾(RS bay)の北から前方のSEB北部には、後方の post-GRS disturbanceから白いストリーク(streak)が伸びており、当初、赤みを帯びた雲 はSEBの中央に細長く横たわっていましたが、しだいに北側に広がって白いストリークの 上を覆って見えるようになりました。明部本体は10月に入って形が崩れ、赤みを帯びた雲 と一体となってしまいました(以下、この領域を明部Aと呼びます)。徐々に拡大している 明部Aですが、今のところRS bayで堰き止められて、大赤斑後方の領域に入り込んでいる 兆候は見られません。

9月下旬になると、RS bayの北縁が一部切れて、SEB内部と赤斑孔(RS Hollow)が連結し、 10月初めには、切れた部分に明るい白斑が出現しました。白斑から伸びる白い雲は、領域 Aにつながっているように見えます。それと時期を同じくして、後述するように、大赤斑 周囲が薄暗くなっていますので、明部Aの赤みを帯びた雲がRS Hollow側に流出した可能 性も疑われますが、明確な証拠はつかめていません。明部Aに滞留している赤みを帯びた 雲は、渦を巻いているようでもなく、拡散した感じで詳細な動きはよくわかっていません。

[図1] SEBのナゾの明部と大赤斑の会合
明部から流出した赤みを帯びた雲が大赤斑前方のSEBに広がる様子がわかる。撮像:永長英夫氏(兵庫県、30cm)、クリストファー・ゴー氏(フィリピン、35cm)、畑中明利氏(三重県、40cm)、小澤徳仁郎氏(東京都、32cm)、阿久津富夫氏(フィリピン、35cm)

大赤斑は9月にII=200°を超え、10月半ばにはII=202°に達しています。2004年末〜2005 年初めにII=100°を超えてから、わずか8年半で100°も後退したことになります。大赤斑 の後退速度は近年増大する傾向にあり、昨シーズンの後退量は約16°に及びます。これは 大赤斑の歴史の中でも最大に近い値です。

大赤斑本体は、まだ鮮明なオレンジ色で大変目立っていますが、前後端にはSEBとつなが る淡いブリッジが存在しますし、10月はRS Hollow内部や周囲の南熱帯(STrZ)が以前より 少し濁って、薄暗く感じられるようになっています。前述の明部Aから流出した赤みを帯 びた雲との関連が疑われる一方、大赤斑前方のSEBsに沿って灰色のstreakが形成され始め ていますので、次第に活動的になっているSEB南縁(SEBs)を流れるジェットストリームも 影響を及ぼしていると思われます。今後、大赤斑が急速に淡化する可能性もあるので注意 が必要です。

北赤道縞(NEB)は北縁の後退が進み、だいぶ細くなってきました。すでに平常時の最も細 い状態になっているとみなすことができますが、II=120°にあるバージ(barge)の前後で は、NEBの北部がさらに淡くなって、バージがNEBから分離したように見えているので、 2009年〜2010年に観測された異常に細いNEBが再現する兆候が見え始めています。NEBの内 部には短いリフトがいくつか見られ、南縁から数多くの明瞭なフェストゥーン(festoon) が赤道帯(EZ)に向かって伸びています。

長命な北熱帯(NTrZ)の白斑WSZは、大赤斑の真北に位置しています。今シーズンは明るさ がなく、卵形の白斑として観測されていませんが、NTrZの中央にあるモヤモヤとした灰色 の雲の塊がWSZの本体と思われます。

WSZの前方にあった2つのバージは9月中頃に合体しました。20日には南北に2つの暗斑が並 んでいるのが捉えられましたが、一時的なものだったようです。バージの合体と前後して、 後方からWSZが追いついています。WSZは速度がやや落ちたものの前進を続けており、バー ジは前方に押し出されるように移動し、徐々に淡化しています。

[図2] 顕著な大赤斑とWSZ
大赤斑の真北にWSZ(矢印)が見られる。前方のNEはかなり細くなっている。撮像:吉田智之氏(栃木県、30cm)

火星

今シーズンの火星は2014年4月14日に最接近を迎えます。視直径は15秒を越えますが、ま だ小接近に近い火星のシーズンとなります。今シーズン最初の報告は、7月25日にイタリ アのフィノッキ氏(Livio Finocchi)からもたらされました。その後、7月27日にギリシャ のカルダシス氏(Manos Kardasis)から表面の様子の分かる画像が報告されましたが、視直 径が小さく詳しい様子は分かりませんでした。

その後、8月29日には、フランスのデュポン氏(Xavier Dupont)が北極に白雲の広がった姿 を記録し、9月に入ると白雲は非常にはっきりするようになりました。9月14日には、スペ インのラサラ氏(Antonio Lasala)が北極を広く覆う白雲と東の欠け際に夕霧が広がってい る様子を鮮明にとらえました。国内でも池村氏がこれらの様子を記録しています。すでに、 北極冠らしい姿が記録されていますが、詳細は分からず、北極冠か北極を覆う白雲かの区 別できません。

9月18日にイギリスのグレイ氏(David Gray)は、ボレオシルチスに明るい光斑を眼視観測 で記録しました。20日には、イギリスのピーチ氏(Damian Peach)が画像でその様子を鮮明 に記録しています。しかし、9月26日には元に戻っていましたので、一時的な現象だった ようです。この日の観測記録からは、北極を取り巻く雲や、中央部がやや暗くなっている 様子から、北極冠そのものが記録されたと思われます。

視直径はまだ4秒あまり。日本からは気流の条件が悪くなりますが、北極冠の周囲や、欠 け際の白雲に注目したいところです。

[図3] 今シーズンの火星面
撮像:アントニオ・ラサラ氏(スペイン、25cm)、ダミアン・ピーチ氏(英国、36cm)、ドナルド・パーカー氏(米国、40cm)

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