天文ガイド 惑星の近況 2020年1月号 (No.238)

堀川邦昭


木星と土星が日没後の南西天に見えています。 木星は高度が下がって観測が困難になってきました。 土星は東矩(10月10日)を過ぎたばかりですが、秋が深まるにつれて観測条件は厳しくなる一方です。

ここでは11月上旬までの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。

木星

観測シーズン最終盤を迎えた木星は、細部を追うことが難しくなっています。 今シーズン注目された大赤斑(GRS)はII=320°にあり、周囲では小規模なフレーク活動が続いています。 後方の南赤道縞(SEB)では、post-GRS disturbanceが少し活発になって、フレークの原因となる後退暗斑群をSEB南縁に供給しているようです。

II=135°には永続白斑BAが明るいリングとして見られます。 前方では、南温帯縞北組織(STBn)が暗斑群によって濃化しているのが、目を引きます。 ジェットストリームに乗って1日当たり-2〜-3°の割合で伸長すると予想していましたが、あまり長くなっていません。 BAの数十度前方で急に衰えているようです。 画像をよく見ると、STBの中に青いフェストゥーン(festoon)のような模様が2つあります。 小暗斑の分布状況では、ジェットストリーム暗斑の一部をブロックしているようにも見えます。 木星探査機ジュノーの画像で見ると、昨年2月にはすでにSTB中の低気圧的小渦として見られ、今年4月には3個の白斑群になっていました。 いつの間にか、フィラメント領域に成長したようです。 STBは長年、低気圧的循環領域が3つできる傾向にあります。 昨年2月のSTB outbreak以降、STBの低気圧的領域はSTB GhostとSpectreの2つだけになっていました。 どちらもお化けという意味です(可視光では見えにくいため)。 上記のフィラメント領域は、第3のお化けになるのかもしれません。

BA後方には、もうひとつのお化け領域であるSTB Spectreが迫っています。 後端は大赤斑の南を通過中ですが、前端はSTB tailが変化した大きな暗斑付近にいると思われますが、よくわかりません。 暗斑が緩衝材のような働きをして、STB Spectreをせき止めている可能性もあります。

その北側の南熱帯(STrZ)にある2つの孤立した暗斑は、ずいぶん淡くなってしまいました。 動きも不規則に変化しているので、消失してしまいそうです。

今年の南赤道縞(SEB)は南組織が活動的なのにもかかわらず、ベルト中央〜北部は淡いという不思議な状況が続いています。 大赤斑の後方では幅広い南赤道縞帯(SEBZ)が伸びていますが、他のゾーンに比べると、薄茶色に濁っていて、着色した赤道帯(EZ)と同じような色調をしています。 大赤斑の前方では濃い中央組織が伸び、先端は崩壊して暗斑群となり、SEB内を前進しながら淡化・消失しています。 中央組織の先端はII=220°付近にありましたが、最近は明るいSEBZの勢力が増して、II=250°付近に後退しています。

北半球ではベルトの淡化が進んでいます。 北温帯縞北組織(NTBn)はII=240〜50°ではまだ明瞭ですが、他の経度では北温帯攪乱(NTD)も含めて淡くなり、北北温帯縞(NNTB)はII=200°台を除いて淡化消失しています。 そのため、II=100°台では、北赤道縞(NEB)の北側に模様がほとんどない状況となっています。

[図1] STBnの暗斑群とフィラメント領域
矢印のところに青いフェストゥーン模様がある。北半球ではベルトがほとんど見られない。撮像:アンソニー・ウェズレー氏(オーストラリア、33cm)
[図2] STB Spectreの前端付近
相変わらずSpectreは不可視で、STB tailの大きな暗斑が目立つ。SEBは中央組織が淡化して明るいSEBZが広がる。撮像:熊森照明氏(大阪府、35cm)
[図3] フレーク活動が続く大赤斑周辺
大赤斑の後方にフレーク活動でできた暗斑とブリッジが見える。活発になったpost-GRS dist.にも注目。撮像:クライド・フォスター氏(南アフリカ、35cm)

土星

土星は開いた環の上に本体の影が幅広く見えています。 春先に比べて環が少し開いたため、本体は再び環の中に収まってしまいました。

土星面では、北極にある六角形模様の外側の領域が赤みを帯びてきました。 普段、この領域は暗い緑色をしているのですが、時々濃い赤や明るいオレンジ色になることがあります。 9月は赤みが不明瞭ではっきりわかりませんでしたが、10月はどの画像でも赤茶色〜暗いオレンジ色に変わってきたのがよくわかります。 春先の画像と比較すると、違いが明らかです。 土星の季節と関係しているかもしれませんし、昨年から今年に初めにかけてこの緯度帯で観測された激しい白雲活動の余波である可能性もあります。 この領域が赤みを帯びたせいで、六角形模様がとてもよくわかるようになっています。

[図4] 今シーズンの土星
現在(左)と春先(右)の土星画像を並べた。現在は環が少し開いているのがわかる。衝をはさんでいるので、環に落ちる本体の影が東西逆になっている。10月は六角形模様外側の領域が少し明るく見える。撮像:(左)柚木健吉氏(大阪府、35cm)、(右)クライド・フォスター氏(南アフリカ、35cm)

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