天文ガイド 惑星の近況 2022年3月号 (No.264)

堀川邦昭


日没後の南〜南西天には観測シーズン終盤を迎えた木星と土星が輝いています。 12月初めは最大光輝の金星が右下に見えていましたが、いつの間にか西天低くなってしまいました。

ここでは1月初めまでの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。

木星

11月から続く北赤道縞(NEB)のリフト活動で、新たな変化が見られます。 1月6日、I=90°前後にNEB南縁(NEBs)を分断する2つの大きな明部が出現しています。 画像を遡ってみると、12月20日頃に始まったようで、年末までは小さなリフトとNEBsの小白斑や乱れといった小規模な活動でしたが、年が明けてからに急に発達したようです。 今回の活動はこれまでよりもやや南寄りで、NEBsの白雲活動が主体となっています。

NEBのリフト活動は、規模はそれほど大きくないものの、11月からふた月以上続いています。 発生当初は全周で淡化したNEBを濃化復活させるのではないかと思われましたが、これまでのところ期待したほどの変化は見られません。 今回の活動がさらに激しくなる必要があるのかもしれませんが、淡化したNEBが濃化復活するプロセスはよくわかっていません。 小規模な活動が長期間続いて、少しずつ濃化が進む可能性もあるので、これからの進展に注目しましょう。

大赤斑(GRS)はオレンジ色で、相変わらず明瞭です。 11月末から90日振動の後退期に入り、現在はII=9°に達しています。 南側にはDS7が拡散・伸長した南温帯縞(STB)が淡いベルトとして見られます。 徐々に長くなっていて、全長は90°近くもあります。 II=310°付近にある前端部分は細くなって、STBnのジェットストリーム暗斑群に変化しています。 永続白斑BAはII=63°にあり、その20°前方にはWS6が見られます。 どちらも暗いSTBにはさまれていますが、BAの方が丸く明瞭で、WS6は形がやや崩れています。 共に大赤斑に接近しつつあり、南を通過する際、周辺のSTBに同のような変化が起こるかとても興味深いのですが、3月の合の時期に重なるため、状況を確認できるのは来シーズンが明けてからとなるでしょう。

10月から大赤斑の南を順次通過中だった南南温帯縞(SSTB)の高気圧的白斑(AWO)の一群は、最後のA5が12月下旬に通過を終えて前方へ抜けました。 白斑そのものには変化は見られませんが、先頭のA1が加速傾向、最後尾のA5が減速傾向にあり、大赤斑通過前の9月には60°しかなかったA1〜A5の間隔は、現在80°近くにまで広がっています。

赤道帯(EZ)は一連のリフト活動の影響によって、フェストゥーン(festoon)などの暗色模様が少し増えてきましたが、黄褐色の色調は変わっていません。 着色現象はまだしばらくの間、続きそうです。

北半球では北温帯縞(NTB)の淡化が進んでいます。 ギザギザした突起が特徴的だった北組織は消失し、ベルトが細く淡くなってしまいました。 10月に3個の暗斑が合体した長い暗部もほぼなくなり、II=160°の北温帯(NTZ)にある孤立した暗斑が唯一の名残として見えていますが、これも形が崩れてきました。 NTBは昨年のoutbreakで濃化復活してからまだ1年半にもならないのですが、早くも淡化が始まっています。 近年のoutbreakの間隔などから考えると、NTBの活動サイクルはしだいに短くなっているように思われます。

北北温帯縞(NNTB)では、南縁に沿ってジェットストリーム暗斑群が多数見られます。 これらはII=140〜200°にあるNNTBの断片周辺で形成されていましたが、11月半ば以降は新たな暗斑がほとんど供給されていません。 そのため、現在はII=180°から0°までの約半周では相変わらず多くの暗斑が見られますが、残りの区間ではかなり数が少なくなっています。

[図1]NEBのリフト活動
NEB南組織を分断する2個の明部が出現、EZには長く伸びたフェストゥーンも見られる。NTBは淡化が進んで細くなった。撮像:伊藤了史氏(愛知県、30cm)
[図2] 大赤斑とその周辺
大赤斑の南にSTBが東西に伸びる。SSTBのAWOの一群は大赤斑を通過し終えた。NEBには発生初期のリフトが白斑として見えている。撮像:熊森照明氏(大阪府、35cm)
[図3] 12月〜1月初めのリフト活動
NEB南組織の小白斑(▼)から前方のNEB南縁に沿って乱れが広がり、1月初めになると白斑は2個の大きな明部に発達している。今のところNEB本体に波及する気配は見られない。

土星

太陽との合まであとひと月足らずとなりました。 シーズン最後の報告は、今のところ1月4日のビオラ(Lucca Schwingel Viola)氏(ブラジル)の画像です。 日没時の土星の高度は20°を切っていますので、このまま観測シーズンを終えそうです。

土星が明け方の東天に再び見えるようになるのは、3月後半になると思われます。 合の間に環の傾きは3°以上減少し、+14°になります。 年々細くなっていく環を楽しみたいものです。

[図4] 今シーズン最後の土星
低高度のため解像度は低いが、大きな変化はなく、落ち着いた状況にある。撮像:ルッカ・シュウィンゲル・ビオラ氏(ブラジル、20cm)

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