天文ガイド 惑星の近況 2022年12月号 (No.273)

堀川邦昭、安達誠


木星は9月27日にうお座で衝となりました。 この12年間で最も近日点に近い衝で、視直径はほぼ50秒もあります。 土星はやぎ座を逆行中で、観測の好機が続いています。 おうし座の火星は視直径が10秒を越え、光度も増してきました。

ここでは10月初めまでの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。

木星

大赤斑(GRS)の前方に伸びる南熱帯紐(STrB)は、木星面をぐるりと4分の3周回って、先端はII=116°に達しています。 前方には出発点である大赤斑とその後部にある暗柱(フック)が見えてきました。 9月の伸長速度は1日当たり2.8°で、少しスピードアップしたようです。 先端からII=300°までの前半部分はとても濃いのですが、大赤斑前方の後半部分は細く淡くなっていて、フックも濃度が落ちています。 フックが消失すると、STrBは暗物質の供給が途絶えて急速に淡化消失します。 今後のフックの変化に注意が必要です。

大赤斑は鮮やかなオレンジ色です。 経度はII=25°で、9月後半から90日振動の後退期に入ったようです。 軽微なフレーク現象が続いていますが、長径に変化はないようです。

大赤斑後方の南温帯縞(STB)には大量のジェットストリーム暗斑が並んでいます。 大赤斑へと押し寄せていますが、後部にあるフック周辺で消失してしまい、生き残るものはほとんどありません。 STrBは暗斑群の発生源であるDS7というSTBの暗部をすでに通り過ぎているので、新たな暗斑はSTrBの一部になっていると思われます。

北赤道縞(NEB)ではベルト北部に届く大きなリフトが複数現れ、活動は激しさを増しています。 これらは北縁のループ模様と絡まって複雑な様相を呈しています。 NEBは徐々に幅を広げていて、通常の状態に近づいています。

南赤道縞(SEB)は南組織が活動的で、ジェットストリームに乗って後退する暗斑も再び散見されるようになりました。 II=200°台のベルト北部には長さ40°ほどの乱れた白雲領域があり、一部は赤道帯(EZ)南部に流れ出しています。 SEBはこの領域の前方ではベルト全体が薄暗いのに対して、後方は比較的明るく、南北縁と中央組織が濃く見えています。

[図1] 大赤斑とSTrBの状況
左) STrBの先端(▲)付近で、STrBは北側のSEBに匹敵する濃度がある。NEBに活発なリフト領域が見られる。撮像:宮崎勲氏(沖縄県、40cm) 右) 大赤斑はオレンジ色で顕著。前方のSTrBはやや淡く、南側のSTBの方が目立つ。撮像:大田聡氏(沖縄県、30cm)

火星

大規模なダストストームが9月下旬に発生しました。 最初の観測は9月21日で、渡辺真一氏(新潟県)と宮原正育氏(北海道)によって記録されました。 発生場所はChryse(35W, +10)の北部で、ダストストーム発生の特異点のすぐ南に当たります。 発生日は前日の20日と思われます。

今回は日本から正面で観測できる位置回りでした。 天候が悪かったにもかかわらず、全国の観測者が個々に撮像時間帯を早めたり遅くするなどの工夫をした結果、火星面の広い範囲をカバーでき、ダストストームの全体像をかなり詳しくつかむことができました。

Chryseで発生後した後、ダストストームは南半球へと入り、そこから活動域はおもに東に移っていきました。 9月24日にはSolis Lacusでローカルダストストームが発生し、大ダストストームと合体、26日にはMare Acidarium周囲で発生した複数のローカルダストストームが北から本体に合流し、ダストストーム全体を押し広げるような姿になりました。 現在はまだエンサークリングダストストームですが、今後グローバルダストストームに発展しそうな気配です。

視直径は大きくなってきましたが、ダストストームの発達に伴って、模様が急速に見えなくなりつつあります。 このまま進行すると、11月には模様の見えない火星になってしまいそうです。 小さかった南極冠はダストに覆われてすっかり見えなくなりました。 極冠が見えないと、向きの頼りになる起点がなく、観測は難しくなってしまいます。 画像処理は、かすかな模様をあぶりだすのではなく、ダストストームの輝部や暗部が分かるような処理をしてほしいと思います。

[図2] 大規模なダストストームの発生と発達
左) 発生時の様子。矢印の先の大2つの光斑がダストストーム。撮像:渡辺真一氏(新潟県、35cm) 右) 発生から10日後で、中央上にダストストーム、右半分は全体がダストに覆われ模様が見えない。撮像:井上修氏(大阪府、28cm)

土星

土星は東矩が近づいて、環に本体の影が大きく落ちています。 北北温帯縞(NNTB)の白斑は、10月12日の画像でもIII=95°に見ることができますが、ベルト内部の泡のようで薄暗く、衰えてきたようです。

他のベルトでは北赤道縞(NEB)と北温帯縞(NTB)がよく見えていますが、その中間にあったNEB北組織と思われる淡いベルトはほとんど見えなくなってしまいました。 NEB北組織は今年やや濃くなったのですが、再び淡化に転じたようです。

[図3] 今月の土星
▼の先にNNTBの白斑が見られるが、小さく薄暗くなってしまった。撮像:ティジャーノ・オリベッティー氏(タイ、50cm)

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