天文ガイド 惑星サロン2006年10月号 (No.49)伊賀祐一

真冬を迎えた火星探査ローバー

2004年1月に相次いで火星に着陸したNASAの2台の火星探査ローバーは、2年半を経過した現在も元気に観測を継続しています。1月4日にグセフクレータに着陸したスピリッツと、1月25日にメリディアニ平原に着陸したオポチュニティは、今年5月の時点で15万枚を超える画像を送信しています。 スピリッツは南緯15度の地点に着陸し、着陸以来6.8kmを走行しました。2006年8月8日に2回目の冬至を迎え、2年半の活動中最も低い気温を記録しています。最低気温は火星現地時間午前5時頃で、摂氏-97度だったそうです。それよりももっと大きな問題は、真冬で日が短くなり、太陽電池の発電量が280ワット時まで減少し、観測活動に大きな制約を受けていることです。真夏に900ワット時あった発電量が1/3になっており、太陽に向いた10度ほどの斜面にとどまるなどの工夫をしています。 一方、オポチュニティは8.6kmを走行し、ビーグル・クレーターに到達しました。途中の6月には「ジャマーバーグ」と名づけられた深く非常に細かい砂にはまり込んでしまい、そこから抜け出るのに8日間を費やしました。こちらは赤道付近なので発電量は500ワット時はありますが、これも太陽電池に降り積もったチりがなぜか吹き払われたという現象のおかげだそうです。


画像5 2台のローバーの最新画像
左:スピリッツ「マクマード・パノラマ」一部、右:オポチュニティ「ビーグル・クレーター」(右下は「ジャマーバーグ」)。画像提供/NASA(拡大)

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