天文ガイド 惑星サロン2007年5月号 (No.56)伊賀祐一

火星探査機MROがとらえた木星

2007年1月11日に、NASAの火星周回探査機『マーズ・リコネイサンス・オービター(MRO)』が木星の画像を公開しました。なぜ火星探査機が木星を観測したのでしょうか?

それは、MROに搭載している高解像度撮像装置HiRISEカメラの位置決めとカラーのキャリブレーション(調整)が目的だったのです。HiRISEカメラは50cmとかなり大きな口径で、火星表面の0.75mの物体まで見分けられる分解能を持っています。NASAのニュースでは、ハッブル宇宙望遠鏡で撮影したものに匹敵する分解能とあります。

実は、この時太陽と火星・木星は直線上に並び、地球は大きく外れていました。そのため、地球から木星までの距離(9億700万km)よりも、火星から木星までの距離(5億5000万km)の方が近くなっていました(木星の衝の時には、地球から木星までの距離は6億2000万kmとなります)。ハッブル宇宙望遠鏡は口径2.4mありますが、MROの口径50cmの優秀なカメラで、さらに半分の距離から撮影した画像もかなりの解像力を示しています。なお、撮影に使用したフィルターが近赤外領域のものだったために、カラーバランスは少しくずれています。

この画像は以下のURLから、Release 11をクリックして見ることができます。

http://hiroc.lpl.arizona.edu/images/PSP/index.html


画像7 MROのとらえた2007年1月11日の木星
右は原寸大の大赤斑付近、提供/NASA(拡大)

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