天文ガイド 惑星サロン2009年8月号 (No.83)堀川邦昭

30cm木辺鏡の稼動
この春、20年以上使っていた16cm反射を卒業し、30cm反射(木辺鏡、F6.7)への移 行を果たしました。望遠鏡の前の所有者は宇都宮の日賀野さんという方で、亡く なられた後、奥様がずっと守っておられました。中神輝夫さん、平林勇さんの仲 介で、最初に下見をした時は、あまりの大きさに腰が引けてしまいましたが、故 ・木辺成麿氏作の主鏡は中神さん折り紙つきの良鏡ということもあり、思い切っ て架台ごと譲り受けることにしました。とはいえ、総重量400kg超の巨大な物体 です。分解・搬送は中神さん協力の下、ピアノの運送業者に依頼しました。

設置場所となる自宅の庭は狭く、観測室はとても持てません。そこで、凸型をし た鉄筋コンクリートの基礎を作り、地面から30cmほど高くして、周囲をウッドデ ッキで囲むことにしました。この方法は大正解で、望遠鏡足回りの防水や振動防 止に良く、家との出入りも楽で、作業台代わりにもなるという利点があります。 もちろん、見た目にも良く、観測環境を清潔に保てるので、結果的に見て、一石 何鳥もの効果が得られたと感じています。

分解したとはいえ、鏡筒だけで長さ2m、重さ70kgもあります。組立ては大学の後 輩6名の力を借り、丸1日がかりの作業でした。自宅の庭は前の道路から1mほど高 くなっているので、完成した望遠鏡の最頂部は3mを超え、大変な迫力です。これ まで使っていた16cmとはケタ違いで、巨大な装置に見えてしまいます。

完全なオーダーメイドの古い望遠鏡なので、各所に独特のクセがあり、光軸調整 に苦労させられました。まだ完全な状態とは言えませんが、それでも400倍で見 る木星は壮観で、NEBのリフト内部のぐにゃぐにゃした白雲などは、スケッチす る手が止まってしまうほどの美しさです。早く完全に状態に調整して、夏の好シ ーイングでの木星面を堪能したいと思っています。


[図1] 完成した30cm反射望遠鏡(拡大)
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