天文ガイド 惑星サロン2010年8月号 (No.95)安達誠

金星を眼視で観測すると

金星を眼視で観測しても、明るく輝くだけで模様らしきものはほとんど見えませ ん。1970年代に月惑星研究会の当時の大阪支部では、何人かの観測者と共同観測 を行って、眼視観測でどの程度スケッチが一致するかを調べたことがあります。 怪しい模様は描かないように心がけて観測したのですが、結果は思わしくありま せんでした。極付近に見られる明るい部分は一致するものの、その他の模様とな るとはっきりしなかったのです。

同じ頃、B47(濃い青紫色)のガラスフィルターを入手しました。アイピースに取 り付けて、20cmの反射で観測すると、強烈な青紫色の金星に模様というか、明る さの濃淡というか、何かが見えるのです。このフィルターの透過率は極めて低い のですが、金星は明るいのでかろうじて模様を判別することができました。現在 使用している31cm反射とB47フィルターの組み合わせでも、同じように模様のよ うなものが見えます。

そもそも眼視でこういった微妙な模様が見えるかどうかは、個人差がかなり大き いということを最近感じています。同じフィルターを使って金星を見ても、まっ たく模様が見えないという人もかなりいるのです。実は、金星だけでなく、火星 でも大きな雲の分布はこれで見えるのです。

ここ数年の間に、花山天文台の45cmの屈折望遠鏡でB47フィルターを試してみる 機会を何度か得ましたが、大きな口径で倍率を高くすれは、模様がよりわかりや すくなるようです。CCD画像などのデジタル観測でないと客観的な情報は取れま せんが、眼視でも模様が変化する様子を追うことが可能です。

現在、金星には「あかつき」が向かっています。8月には東方最大離角となり日 没後に観測しやすくなりますので、自分のできる方法で金星を観測してみましょ う。


[図1] B47フィルターで見た金星
スケッチ:安達誠(滋賀県、30cm)
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