天文ガイド 惑星サロン2011年8月号 (No.107)最上聡

青空に輝く惑星

どこまでも透明な抜けるような青空を見ると、青空の向こうにある惑星を見てみ たくなります。そう思って、昨年から昼間の惑星を撮影してみようとチャレンジ してきました。惑星の中でも表面輝度が高い金星は肉眼でも条件が良ければ見つ けることができますが、火星以遠の惑星は太陽から遠いため表面の輝度が低く、 昼間の撮影は困難とされてきました。

大気中での光の散乱は主に光の波長に比べて十分に小さい分子による散乱と考え られ、散乱の大きさは光の波長の4乗に反比例します。これがいわゆるレーリー 散乱で、波長が長くなると急速に散乱が小さくなります。天球上で太陽から十分 に離れている惑星に望遠鏡を向けた場合を考えてみましょう。太陽からの赤外光 は大部分が透過してしまい、青い光は多くが散乱されて青い背景光となります。 逆に惑星からは赤外光があまり散乱せずに届きます。それゆえ青い光をカットし て赤外光だけで惑星を見ると背景とのコントラストがよくなります。

ところが同じ昼間の惑星でも太陽にごく近い惑星を対象とした場合には、赤外フ ィルターの有無で差があまりありませんでした。この説明として、太陽にごく近 い場所では太陽からの強烈な赤外光がほとんど散乱されずに直接私たちに届いて しまい、迷光となってしまうことが考えられました。作例は太陽に近い木星を昼 間に赤外カットフィルターを使用して撮影したものです。わずかですが表面の模 様も撮影することができました。

以前、昼間の天体観望会で金星を導入して見てもらったところ、とても感激され ました。肉眼では何も見えない青空なのに望遠鏡を向けるとまばゆいばかりに輝 く金星が見えるのは、とても意外で感動します。でも昼間の惑星を見るときは自 動導入を使うなどして、絶対に太陽を覗かないように十分に注意されてください。


[図1] 昼間に撮像した木星
2011年4月24日10時02分(JST)の画像で、木星高度は60°、太陽との離隔はわずか13°。
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