天文ガイド 惑星サロン2012年9月号 (No.120)山崎明宏

金星の日面通過

人生初、そして最後の金星の日面通過が終わりました。晴れ間を求めて自宅から 500kmも遠征した結果、全過程を観察することができました。現象自体が稀有な だけに、少しでも次回の参考となるよう、私なりに今回の観察結果をまとめてみ ました。

オレオール現象:当初、撮影にはある程度の口径が必要ではないかと言われてい ましたが、実際はあっさりと撮影することができました(口径125mm)。肉眼で見 た人もいるようです。80mmクラスの望遠鏡でも露出オーバ気味にすれば十分撮影 可能です。また、第1接触時の方が第3接触時より明るかったこと、金星がある程 度太陽の縁から離れると一部が欠けてリング状には写らないことなどが特徴とし てあげられます。毎回そのように見えるのか?が次回観測時のポイントになると 思います。

太陽面通過時の金星:太陽面を通過中の金星のシルエットはまさに真っ黒です。 太陽黒点とは異なり、立体感を感じるほどで、まさに太陽前面を惑星が通過して いるという印象でした。特にHα望遠鏡では太陽の表面模様が賑やかなため、さ らにその印象が強まります。今回気になったのは、近赤外で撮影した金星のシャ ドウ部を強調処理したところ、金星像の外周に沿って半影のような領域が写って いたことです。太陽観測衛星「ひので」や他の観測者の画像では見られないため、 光学系により発生した擬似的なものかもしれません。今思えば、6時間も観察す る時間があったのですから、色々な波長域で撮影してみればよかったと後悔して います。次回は可視光以外での撮影にぜひトライしてください。

次回この現象が起こるのは2117年12月11日、ドラえもんが誕生している22世紀で す。未来の天文家の皆さんにこの短い記事が届くことを願っています。

[図1] 第1接触後のオレオール現象
金星の北側にアーチ状に見られる。東側では不明瞭。

[図2] 太陽面通過中の半影部
金星本体の周囲を薄明るいリングのような部分が取り巻く。

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