天文ガイド 惑星サロン2013年5月号 (No.128)米山誠一

極寒の旭川での木星会議

今回で36回目となる木星会議が、2月16日と17日の2日間、北海道の旭川市科学館 ・サイパルで開催されました。当日の旭川は最低がマイナス18度、最高がマイナ ス6度で、寒いというより皮膚が痛く感じられましたが、好天で風が弱く、思っ たほど辛くはありませんでした。「地元の人は気温にマイナスをつけない」と聞 いていましたが、確かにタクシーの運転手さんは「今日は"6度"だから暖かい」 と言っていました。

会議の参加者は約35名で、旭川天文同好会の方々の他、関東・関西からの参加者 も多数ありました。また学生11名、女性が7名と若い人が多かったのが印象的で す。

最初に市民講演会を兼ねて、北海道大学の高橋幸弘教授の特別講演「北大ピリカ 望遠鏡と飛翔体で探る惑星と地球の大気」がありました。雷・スプライトなど宇 宙と地球大気圏との間で起こる未知の現象や、気球に望遠鏡を乗せて木星を観測 する計画など興味深い内容でした。その後、堀川さんから木星の近況報告が行わ れ、2012年から今年に起こった北半球の大変動やNEB北縁の白斑の多重衝突など について詳しい解説がありました。初日の最後に記念撮影を行い、夜は旭川駅近 くの大雪地ビール館で懇親会が行われ、大いに盛り上がりました。

2日目は、木星閃光セッションと研究発表が行われました。閃光セッションでは、 観測に参加した学生達から名寄・三鷹・川崎で行った観測の報告や、3大学で行っ た合同観測の概要が紹介されました。また、石橋さんから自宅で独自に行った観 測の報告、田部さんから総括的な報告、山崎さんからメタンバンドでの観測から 得た知見が報告されました。研究発表は2件で、田部さんは通称「床屋の看板構 造」と呼ばれる傾いたベルト構造が、木星の帯状流を解明する手がかりになると いう発表を、堀川さんは、大赤斑の縮小速度がSEBsの活動と関連があり、SEB攪 乱の前後に速度が増すことを指摘していました。

最後に会議の準備と運営にご尽力いただだいた阿久津弘明さんと旭川天文同好会 のスタッフの皆さんに感謝致します。次回の木星会議は、関西で開催される予定 です。

[図1] 木星会議の記念写真

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