天文ガイド 惑星サロン2014年2月号 (No.137)堀川邦昭

ガリレオ衛星の多重経過を見よう

ガリレオ衛星として知られるイオ、ユーロパ、ガニメデ、カリストの4つの衛星は、小望 遠鏡でも木星の周りをめぐる様子を楽しむことができます。

これら衛星やその影は時々木星面を通過することがあります。衛星の影はどれも黒い点と して見えますし、ガニメデやカリストも薄暗い大きな斑点として見えますが、イオやエウ ロパは木星周縁では明るく目立つものの、木星面中央付近ではコントラストがなくなって 見失ってしまうことが多いようです。また、経過中の衛星や影は模様と見間違われること がしばしばあり、衛星の影が小天体の衝突痕と報告されて騒ぎになったことがあります。 筆者は初心者の頃、イオの影を模様と間違えてCMTを取ってしまったことがあります。

地球に対するガリレオ衛星の公転面の傾きはわずか(±4°)ですが、外側のガニメデとカ リストは傾き(De)が大きい時期は木星面の南北に外れてしまいます。今年は傾きが久しぶ りに小さくなり、4つの衛星すべてが木星面を通過するのを見ることができます。このよ うな時期には、複数の衛星が同時に木星面を通過することがあり、小さな木星面に衛星や 影がひしめき合います。

イオ、エウロパ、ガニメデの公転周期は、ほぼ1:2:4の関係になっているので、一度多重 経過が起こると、数日置きに同じ現象が続けて見られます。昨年10月はイオとエウロパ、 イオとガニメデの会合が重なり、特に12日はイオとエウロパとカリストの影が同時に木星 面を経過しましたが、残念ながら日本からは観測できませんでした。今年の年末には再び チャンスがありますので、是非堪能してほしい現象です。天文年鑑には衛星や影が木星面 に入る(潜入)時刻と、終わり(離出)の時刻が掲載されているので利用してください。来年 は傾きがほぼゼロとなり、衛星同士の食や掩蔽といった、さらにレアな現象も起こるので 楽しみです。

蛇足ですが、筆者のような眼視観測者にとって、衛星や影は木星面の模様とのコントラス トが大き過ぎて周囲の微妙な様子がわからなくなってしまうため、はっきり言って「ジャ マ」だったりします。

[図1] 10月12日の多重経過
イオ(T)、エウロパ(U)、カリスト(W)の影が木星面を経過中。撮像:レオ・アーツ氏(ベルギー、35cm)

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