天文ガイド 惑星サロン2014年6月号 (No.141)熊森照明

PCカメラのゲインと解像度

惑星撮影に使用するPCカメラの感度がどんどん高くなり、望遠鏡の能力をほぼ極限まで引 き出せるようになって、高解像度の惑星を見られるようになっています。ただ、輝度の違 う全ての惑星に対して完璧かと言うと残念ながらまだ十分ではありません。感度を上げる ゲインとシャッター速度の問題は悩ましく、これにシーイングの問題が絡んできますので、 簡単には答えが出ません。

望遠鏡の最大解像能力を引き出す拡大F数は、エアリーディスクの大きさとPCカメラの画 素間ピッチで決まっており、ZWO ASI120MMなどの3.75μmピッチではF20以上、DMK21AU618 などの 5.6μmピッチではF30以上が必要です。大きく拡大すると像は暗くなりますから、 ゲインを上げるかシャッター速度を下げるかして対応しなくてはいけません。シャッター 速度が遅くなるとシーイングの影響を受けて惑星がぼやけてしまいますので、あまり遅い シャッター速度を取りたくはありません。

じゃーどうすればいいのと思われるかも知れませんが、私はシャッター速度が30分の1秒 ぐらいが経験上で一番効率が良いと考えています。ゲインを上げれば速いシャッター速度 を出せるところを我慢して、感度に余裕が出た分を、ゲインを下げることによりノイズを 減らし、解像度を上げることにそのパワーを向けるということです。

図は今期の火星を撮影したもので、下部は北極冠だけを拡大しています。ゲイン700画像 は1/30秒露出、30FPSで200秒間、全6000フレームの内3600フレームを、ゲイン1023画像は 1/100秒露出、60FPSで200秒間、全11281フレームの内6768フレームをAutoStakkert!2でス タックし、Registax6でウエーブレット処理をしています。ゲイン最大の1023画像はゲイ ン700画像の倍近いフレーム数をスタックしているにもかかわらず、ノイズが大きく解像 度も落ちていることが分かります。

みなさんの撮影システムにおいて、どのあたりのゲインと拡大率がベストなのかを是非確 認してみてください。

[図1] ゲインによる解像度の比較
セレストロンC11とBasler Ace acA1300-30gmによる火星、筆者撮像。

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