天文ガイド 惑星サロン2015年7月号 (No.154)安達 誠

クーリングタワーと気流

惑星観測をしていると、常に気流の状態が気になります。眼視・写真観測にかかわらずこ れによって、成果が大きく左右されます。上空のジェット気流のように人為的に逃れるこ とのできないものは仕方がありませんが、日常的に観測をしているところの近所に熱源が できると大変です。

15年ほど前ですが私の自宅から南西30mのところに、24時間営業のコインランドリーがで きました。コインランドリーといえば、大型の乾燥機もありますし、室内は年中エアコン で室温調整がなされています。この室温調整にもっともかかわるものが室外機(クーリン グタワー)です。建物の横に写真のような大きなものが鎮座しています。

私の場合、観測中の惑星が南西方向に近づいていくと、5分間くらいでシーイングが5から 0まで一気に下がります。木星の場合など縞模様すら見えなくなりますし、土星は環と本 体の隙間も見えなくなります。

これが、クーリングタワーの影響です。惑星観測に絶好の無風の日、クーリングタワーの 上には細長いマッシュルーム型の熱風(冬季は冷風)が吹き上がっています。目視で星のち らつきを見ると、50m以上の高さまで存在がわかります。そしてそれが、上空にどんどん 広がり、熱風の蓋を広げているのです。もちろん観測などできたものではありません。私 の場合、観測はこの熱風の中に惑星がない時だけできるということになるのです。

皆さんの近くにもクーリングタワーがあるかもしれませんね。無風の絶好の日に、熱風の 塊が夜空を覆います。高層マンションからは熱風のベールも漂っています。市街地での観 測は、ジェット気流よりも強敵がいるのです。

[図1] 地表に置かれたクーリングタワー
これが夜空に熱風・冷風を吐き出しています。

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