天文ガイド 惑星サロン2015年9月号 (No.156)安達 誠

MROの画像が面白い

今年は、事実上火星のオフシーズンとなっています。この期間を利用してMRO(マーズ・リ コナッサンス・オービター)の公開画像を調べると、面白いことがいくつも見つかりまし た。ここでは、この春に見つけたものを、ひとつ紹介したいと思います。

2015年2月から3月にかけてのひと月半の間に、北極冠から南に向かって、寒気の吹き出し が何度も見つかりました(図1)。通常、逆三角の吹き出しとなって見られます。調べてみ るとこの期間に、2月は12日と24日、3月は4日・8日・13日・20日・24日・26日の合計8回 見つかりました。いずれも1日か2日間見られ、その後は分からなくなる、短期間の現象で した。

[図1] 今回見つけたMROによる寒気の吹き出し
画像の上部に見られる。

MGR(マーズ・グローバル・サーベイヤー)の画像に見られるような(図2)北極冠からの寒気 の吹き出しは、珍しいものではありません。しかし、面白いのは、これらの寒気の吹き出 しが、いずれも西経180°の場所で起こっているのです。限られた同じ地域に起こるので すから、何か地形的な原因を考えたくなりますが、地形図を見ても、それらしき地形が見 つかりません。北極冠には巨大な谷がありますが、谷の口とは経度が違っています。模様 との関係を考えるのですが、それとて直接の原因かどうかはっきりしません。一体何が原 因なのか、いろいろ考えながら調べることは面白いものです。

[図2] MGSによる画像
寒気の吹き出しが見事にとらえられている。

前号へ INDEXへ 次号へ