天文ガイド 惑星サロン
2019年7月号 (No.202)
堀川邦昭

漂流する大赤斑

大赤斑(GRS)は、南北を対向するジェットストリームにはさまれた木星大気中の渦巻きです。 木星本体に固定されていないので、ふらふらと東西に漂っています。 右図は過去45年間の大赤斑のドリフトチャートで、逆S字状のカーブを描いています。 最も経度が小さくなった1988年はII=15°に位置していましたが、その後は後退する一方で、現在はII=309°になりました。 後退のスピードは徐々に上がっているようです。

下の図は1988年の筆者のスケッチと今年の鈴木邦彦氏(神奈川県)の画像を中央で切ってつないだもので、II=345°付近から見た大赤斑です。 1988年に右側に見えていた大赤斑は、30年かけて木星面の裏側をぐるりと回り、左側から顔を出したことになります。 ベテランの観測者にとっては、とても感慨深い光景に思えます。 現在の後退速度が続けば、あと10年以内に一周してしまいそうです。 大赤斑が木星大気中を漂っていることを実感させられます。

[図1] 30年で木星を周回した大赤斑
1988年のスケッチと今年の画像をII=345°付近で切ってつないだもの。大赤斑は木星の裏側を回って、同じ側に戻ってきた。
[図2] 大赤斑のドリフトチャート
月惑星研究会、OAA木土星課、大学天文連盟の観測データから作成。

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