天文ガイド 惑星サロン
2020年9月号 (No.216)
安達誠

昔から学ぶ(木星編)

昔の望遠鏡は、今のような優秀なものとは限りません。 中には無理をして描いているものもありますが、永年眼視観測を続けていると、昔の人は、きっとこんな姿を見ていたのだろうなあと想像できます。 スケッチを描く技量には、かなりの個人差があって、見慣れてくると、見ただけで誰のスケッチかわかるものです。

しかし、私たちに必要なものは、描き方ではありません。 その中にどのような惑星面かを見とることでしょう。 ここに出した2つのスケッチは、どちらも非常に古い木星観測です。 きっと、こんな木星を見ていたのじゃないかと、想像したものを描いてみました。

昔も今も、縞や帯の自転周期は変わらないということを念頭に置くと、ベルトと縞の位置が分かります。 ドーズ(Dawes)のスケッチには、南熱帯攪乱が記録されています。 典型的な攪乱状態です。 一方、デニング(Denning)のスケッチは当時巨大だった大赤斑が目立ちます。 二人に共通することは今のNEBとの違いです。 当時のNEBはそれほど目立ったベルトではなかったということです。 昔のスケッチを見ながら、昔の様子を想像するのは、本当に楽しいひと時です。

[図1] 昔のスケッチから復元した木星面
左) ドーズのスケッチから復元した1857年の南熱帯攪乱。右) デニングのスケッチから復元した1906年の巨大な大赤斑。

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