天文ガイド 惑星サロン
2023年10月号 (No.253)
山崎明宏

波長1011nmで撮影した木星

最近のCMOSセンサーは、近赤外域(およそ700〜1100nm)の感度がかなり良くなり、そのおかげで、その波長域でも十分な画質が得られるようになりました。 私はこの恩恵を受けるべく、金星の夜面撮影用として、波長1011nm、半値幅50nmのフィルターを購入しました。 残念ながら、夜面撮影はまだ成功していませんが、このフィルターを木星の撮影に使用したところ、予想外の画像が得られたので、ここでご紹介します。

左の木星画像は、波長889nmで撮影した、いわゆるメタンバンド画像です(メタンバンドについては2021年12月号で解説しています)。 そして右の画像は、波長1011nmで撮影しています。 そっくりですよね。 撮影後に知ったのですが、木星のスペクトルを見ると、木星大気内のメタンの影響で、889nmの次に1000nm付近に大きな吸収域があります。 このフィルターの透過域がこの吸収域とマッチングし、このような画像が得られたようです。

これは面白い! 何かメリットはないか・・・などと考えてみましたが、画像がやや暗くなってしまう点や、極付近があまり明るく写らないことなど、デメリットの方が多く、今のところは889nmで撮影した方が無難なようです。 でも知識として、波長1011nmでもメタンバンドの撮影が出来ることは覚えておいてください。

購入先 : Andover Corporation https://www.andovercorp.com/

[図1] 889nmと1011nmで撮影した木星
左が通常の889nmによる木星、右は1011nmによる木星。大赤斑と極が明るく、可視光では淡化消失している北温帯縞(NTB)が見られるなど、メタンバンドの特徴がよく一致している。筆者撮像。

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