自己紹介と近況報告
- 熊森
- 現在、再任用で仕事中。以前の職場のソフィアに行っている。勤務は土曜日も含まれるため、今までのような自由さがなくなり、休日はいろんな人との共通に時間が取りにくく不便な状況になっている。仕事場では金環日食の担当になっている。C11を使っているが冬から春は天候が不安定でシーイングも悪く良いものが撮れなかった。6月6日はアドバンスGTを買ったのでそれを使って行動しようと考えている。今回は金星日面通過の観測に重点を置いている。
- 柚木
- 1年ぶりか?久しぶりに出てきた。3月11日の大震災以降休みを取ってしまった。画像の処理中に原発の爆発が起こり、4月10日には福島はきわどい状況になった。落ち着かないところに天文ガイドから最優秀賞で原稿を書く話が舞い込んできて困った。その後、いろいろあっていろんなものを処分し、○を飲んで寝ていた。(柚木さんも処分されなくて良かったね:by A)(^^)
昨夜、例会に来るので4惑星を撮った。このところ、ようやく撮る気になってきた。でも、気流が悪く没になるものが多い。DMK618を買って撮った。少しは慣れてきたので、今日はその画像を持ってきた。体調のことを考えながら続けていきたい。
- 安達
- 仕事に追われており、観測はできていなかったが、春休みになったのをきっかけに、火星の眼視観測を集中的に行った。気流が悪くたいした成果はないが、それでも30枚くらいの観測を行った。忙しいが状況が再開されるまでにもうひとがんばりしたいと思っている。
- 畑中
- 光軸をさわって余計に状況を悪くしてしまった。おまけにシーイングが悪い。大きく写したほうが良い結果が出ることが分かってきた。最近はバーローよりもオルソの方が良いように思える。時によって違うのかもしれない。気流が悪く、報告できるよう画像にならない。
- 長谷部
- 今日は、例会に出てエネルギーをもらいにきた。娘さんが大津にいるので、娘を送りがてらやってきた。また、自宅に帰ってがんばりたい。C11でやっている。経緯台式赤道儀でやっている。撮像はバーローを使っている。学生時代はスケッチをやっていた。火星を撮ろうとしたのは今回が初めてだが、像を大きくできないので、どうしたら大きくできるのかと迷っている。
- 林
- 今年は天文現象が多く、どうしてこの一年過ごそうかと考えている。楽しみだ。ただ、自宅はシーイングが悪い。同じ京都なのにどうして風本さんのところは気流がいいのかわからない。2,600枚撮って使えるのは100枚くらいしかない。ひどいときは50枚くらいになってしまう。土星は、時間帯が遅いので、まだましかもしれない。
- 佐藤
- 奈良香芝市から来た。昨年4月に転勤してきた。天文には中学生のときに興味を持っていた。μ210を中古で買おうと思っている。動画でスタックしてやってみたい。柚木さんの記事を参考にしている。惑星の勉強がしたいと思っている。HPはよく見ている。
木星の近況
安達が観測で忙しかったこと、火星に事件が起こったことで、木星のまとめがほとんどできずに例会を開きました。直前に伊賀さんからMLに流してもらったロジャースからの木星レポートを解説したのと、少しのまとめをしました。
(1) SEBについて
1月後半から2月にかけて
・ 乱れた白雲領域 post-GRS disturbanceが発達
・ GRS後方約30°拡がった姿になる。 内部に明るい白斑があって活動的
・ II=200〜300°台で、SEB南組織(SEBs)が大きく乱れている。
・ GRS前方は赤みが強い。
(2) STrZのdark steakについて
・ ようやく淡化傾向が始まる。GRSの前方が淡くなってきている。
(3) NEBについて
・ 全体が幅5°位のやせた姿になっている。
・バージは、北縁の後退によって取り残され、孤立した暗斑になってしまった。
・バージは全周で6個あり、II=110°のものが最も顕著
・巨大バージのすぐ後方(II=120°付近)のNEB南縁に、青黒い暗斑を伴った白斑が出現
・永長氏が捉えた。NEBのリフト活動の再発かもしれない。
・1893年から1918年までの期間、近年の安定したベルトとは異なり、3年周期で濃化と淡化を繰り返したことが記録されている。
(4) ロジャースのレポートから
・NEBは拡幅現象の前兆に 明るいリフトと 南縁のprojectionの活動が増加する。
観測は、こういったものに注目して観測したい。
火星の近況(安達 誠)
「火星の不可解な雲」について、現時点で分かったことを報告した。事前に安達と東京の三品氏の協議で分かったことを含むが、三品さんの作ったプレゼンも頂いており、東京と関西と同時にこの話題が提供されることとなった。
(1) 発生の初期
3月21日、アメリカのWayne Jaeschke氏から、3月19日UTに撮影した火星の5フレームの動画が報告された。メールには、南半球高緯度の朝方(西縁)に奇妙な雲を捉えたので確認して欲しいというもので、伊賀さんがアナウンスされた。(右は問題の画像)
(2) 発生の続報続報
フランスのMarc Delcroix氏から、3月21日UTに観測された『Wayneの雲』と同様な現象を、それより9日前の3月12日UTに複数のヨーロッパの観測者が記録している。
(3) HPでの安達のコメント引用
(4) 3月12日のコメント(HPの安達解説)
3月21日に発見の情報が流れた「Terminator Projections」は、この3月12日 の画像に最初に現れている。Marc Delcroix とMichel Jacquessonの二人が、明瞭な projectionとして記録している。また、Javier Beltran JovaniとFumega Camilo Ucha も、かすかな膨らみとして記録している。はっきりしたイメージで記録された時刻は、 23h05m~06mである。22h54mから,23h33mまでの40分間くらいが、記録に適し ていたのかもしれない。 03h36mにWayne Jaeschke そして04h08mにEfrain Morales Riveraは、像の中央 付近で撮影している。しかしながら、それらにははっきりした模様は出ていない。Efrain Morales Riveraの画像には、怪しげな極めて淡い点があるが、今回の現象と関係がある のどうか判らない。 翌日には、Terminator Projectionが見られないことから、最初の活動は3月12日 と考えられる 。
(5) 発生日(暫定)
第1回目・・・・・ 3月12日 240° Marc Delcroix とMichel Jacquesson
第2回目・・・・・ 3月19日 240° Wayne JaeschkeとEfrain Morales Rivera
第3回目・・・・・ 3月21日 240° Jim PhillipsとDonald C Parkerの二人が新しい活動を記録
第4回目・・・・・ 4月06日 84° Donald Parker クサンテ(Xanthe;52W,+13)付近
第5回目・・・・・ 4月09日 270° Yuri Goryachko & Konstantin Morozov
第6回目・・・・・ 4月12日 253° Yuri GoryachkoとManos Kardasis
本当に6回かどうかは調査中
(6) 発生地点と地形との相関関係の調査結果
発生地点を地形図と比較してみたが、地形との関連は見受けられなかった。
(7) 雲の高さ
安達および三品氏の測定結果の紹介 画像からは160kmから230kmの間くらいになった。
(8) 過去の観測
1997年のHSTに同じような画像が見つかっている。右の画像がそれに当たる。写り方や、ターミネーターの位置であることなどは、今回の現象と同じである。ただ、発生場所は、今回の場所とは大きく異なる。
また、2003年には沖縄の宮崎氏も同じだと思われる現象を記録している。宮崎氏の発生地点はほぼ今回と同じ地域になっている。
(9) 磁場との関連
今回の現象は、地表面における磁場の強い地域の近隣となっている。下の図は、その地図に今まで見られた発生地点をプロットしたものである。ただし、南を上にしている。
中央上の色の濃い部分は、地上における磁場の強い部分を示している。経度はこの向きで読める数字が普段常用している西経に当たる。
現象が発生した当時は、磁場の強い地域とぴったり重なるように思われたが、よく調べると、右図のようになった。どうも、磁場との関連を考えるのも難しいように思われる。
(10) Lsとの関連
Lsについては、イギリスのマッキム氏が関連があるかもしれないことを示唆されていた。こちらでもすぐに気がつき、調べてみた。今回の現象のLsは次のようになった。
第1回目3月12日 Ls= 82°
第2回目3月19日 Ls= 85°
第3回目3月21日 Ls= 86°
第4回目4月06日 Ls= 93°
第5回目4月09日 Ls= 95°
第6回目4月12日 Ls= 96°
2003年11月08日 Ls=295°
1997年 5月17日 Ls=120°
1950年 1月16日 Ls= 68
これらの数値を作図してみたものが次のものである。
かなりの部分は遠日点を過ぎてのものが多い。2003年のものが、例外的に違った位置に来ているため、断言はできないが、磁場よりもこちら(季節)になんらかの関係がありそうに思われる。
(11) 結論として
決定打は見つからなかった。これからの展開に注目したい。
しいて言えば、地表の冷えているときに起こりやすい。くらいだろうか・・・
(12) 三品さんのプレゼン
事前に三品さんから送っていただいたプレゼンの紹介を行った。三品さんご自身から内容を書いたものを送っていただいたので、ここにはそれを掲載します。例会に来ていただいた方も、改めて読んで下さい。安達が説明できなかったものが一杯出ています。
2012年4月15日 月惑星研究会例会 (東京例会での資料から)
「火星の不思議な雲について」 三品利郎
1 不思議な雲の画像
3月20日に、アメリカのウェイン・イェシュケさんが、火星の南西の縁に火星面から立ち上るような雲が現れていることに気づきました。続いて、アメリカのドン・パーカ-さんも、同じような雲の撮影に成功しました。
アメリカの火星観測者メーリングリストに、画像のピクセル数からドン・パーカ-さんが撮影した雲の高さは195kmから240kmだと、ジャフBと名乗る人が推算して投稿していました。
ウェイン・イェシュケさんの画像 http://exosky.net/exosky/?p=1606
ドン・パーカ-さんの画像 http://alpo-j.asahikawa-med.ac.jp/kk12/m120321d1.jpg
2 探査機が観測した高高度の雲
探査機が何度も、高高度(50km〜100km)の雲を観測しています。探査機によって、どのくらいの高さまで雲が観測されているのかを調べると、以下のようなデータが見つかりました。
その1 出典 : Linda T.Elkins-Tanron著
MARS (THE SOLAR SYSTEM) , CHELSEA HOUSE 2006年, P78
固体の二酸化炭素の雲は、高度60 km / 25km (冬の極域)
水の氷の雲は、高度25kmで観測されています。
その2 出典 : Clancy, R. T. Wolff, M. Whitney, B. Cantor, B. 著
The Distribution of High Altitude (70KM) Ice Clouds in the Mars Atmospere fromMGS TES and MOC LIMB Observations
Bulletinof the AmericanAstronomicalSociety, Vol. 36, p.1128
アメリカ天文学会の発表の予稿集---2004年11月
http://aas.org/archives/BAAS/v36n4/dps2004/117.htm
MGS TES / MGS MOC の観測
季節はLs30前後、及びLs150前後に、緯度15S-15N、経度330-20W 及び 50-120Wで、水の氷または、固体の二酸化炭素の雲が、高度55-75kmで観測されています。
いずれも、195kmから240kmという値とは隔たりがあります。この他にも多数の論文がありますが、195kmから240kmというような高い場所で雲が観測されたというものは見当たりませんでした。
3 何故か、雲の高度が高すぎる?
この隔たりについて、安達誠さんは、火星の大気による反射か屈折によって、雲の高さが見かけ上高くなっているとの予想を提案されています。つまり、蜃気楼のような現象という予想です。(石垣島新聞 2008年3月5日に、蜃気楼の記事があります。
http://ishigaki.keizai.biz/headline/photo/233/
或いは、画像処理の影響で、実際よりも高度が高く見えているという可能性もあります。
今回は、安達さんの予想について、探査機の観測データから何かヒントが得られないか、調べてみることにします。
4 探査機の観測を探したら
火星の大気に関する論文は、星の数ほどあります。大きく分類すると、コンピュータを使ってシミュレーションした結果を考察したもの、探査機で観測したデータに基づいて新たな見解を述べたものがあります。
探査機で観測したデータに基づく論文に、興味深いものがありました。
Franck Montmessin(フランク・モンメサン)他
Subvisible CO2 ice clouds detected in the mesosphere of MarsIcarus 183 (2006) 403-410
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0019103506001205
この論文のニュースリリースです。
http://www.esa.int/esaMI/Mars_Express/SEMC4JZ7QQE_0.html
この論文は、マーズ・エクスプレスが火星の高高度にある二酸化炭素の雲を掩蔽観測のような方法で検出した報告です。その際に、大気の気温も測定しています。
この論文のFig.4に高度によって大気の温度がどのように変化するかを示したグラフが掲載されています。
前出のFig.4は、以下の資料が引用しているので、グラフを見ることが出来ます。
F. Gonzalez-Galindo他
Mesospheric CO2 clouds on Mars: observations and study with a General Circulation Model
IAA seminar, 4 November 2010
http://www.iaa.es/sites/default/files/Presentation_2010-11-04.pdf
32枚目のスライド、Mesospheric clouds: observationsのところです。
このグラフを見ると、高度が上がると気温が下がり、高度102kmから112kmで、二酸化炭素が固体になる温度よりも低い大気温になる領域があります。その領域では、二酸化炭素が過飽和になっており、雲が出来ている可能性があります。高度112kmより高いと、再び大気温が上昇しています。すると、高度112kmを境にして、下の方に冷気、上の方に暖気という大気の状態になります。これは、地球で蜃気楼が見られる時に、下に冷気、上に暖気が存在する状態と似ています。
5 まとめ
・2012年3月20日に、アメリカのイェシュケさんらが、火星の欠け際から、高く伸びる雲を撮影しました。雲の高さを推算すると、火星面から195kmから240kmとなります。この値は、探査機が観測した火星面の高高度の雲よりも、さらに、高い高度です。
・なぜ、このような高いところに雲が現れるのでしょうか?
安達誠さんは、「大気による反射か屈折現象ではないかと予想されています。
・探査機の観測結果を探したところ、興味深い論文がありました。
マーズエクスプレスが火星の高高度にある二酸化炭素の雲を検出し、大気の気温も測定しています。大気温の変化を示すグラフによると、二酸化炭素の雲のさらに上では、高度が上がると気温が高くなっています。すると、上に暖気、下に冷気があるため、蜃気楼と同じ原理で雲が浮き上がって見えることが容易に想像されます。即ち、安達さんの仮説を裏付けるデータになり得ます。
以上、三品さんからの解説でした。
(13) その他の火星の様子
○ 特別現象に振り回され、その他の地域については眼が届いていないが、全周において氷晶雲が目立っている。アマゾニス(Amazonis;155W,+15)〜クリセ(Chryse;33W,+10)・イシディス(Isidis;268W,+23)付近だけでなく、その他の地域においても画像ではよく記録されている。ただし、肉眼的には上記の地域が目立ち、今年だけ顕著になったということではない。
○ オリンピカ(Nix Olympica;135W,+25)やタルシス(Tharsis;90W,+5)3山などは赤黒い斑点状に観測されていて、肉眼でも淡くではあるが、確認できる。
○ ヘラス(Hellas;295W,-50)の白雲は非常に目立ち、正午を過ぎると非常に明るく観測され、北極冠と見まがうくらいである。画像では中央が薄暗く記録されこともあるが、肉眼的には全体が白く観測されている。
土星の近況
(1) NNTZのバンドについて
北半球のNNTZ付近で発生した白斑に伴う明るいバンドの名残が、両画像の元では確認でき、時々小さな白斑が姿を見せている。また、散発できだが、あちこちに白斑が報告されている。これらの白斑を本当は追跡すべきだが、目立ったものではないため、追跡している人はほとんどないと思われる。
(2) 前田さんの画像
4月12日、前田さんが宮古島の観測所で観測された画像にはC環(ちりめん環)に筋状の空隙が記録されている。安達はこれまでにこれを記録したものを見たことがなく、これは凄い画像ではないだろうか。最近の画像を見る限り、これ以外には同じような画像は見当たらない。
情報交換
熊森さんから
火星を撮ることについて、今まではLRGBのL画像をモノクロで撮っていたが、Lをブルーでとったものにしてみた。すると、火星の氷晶雲が強調されて出てくるようになった。目的意識を持って処理することで、目当てをはっきりさせることができる。ただ、暗色模様が青っぽくなった。
事務連絡
(1) 会費
例会の時、会費を頂いた。
柚木さん(2012年分)・長谷部さん(2012年分)
(2) 今後の例会予定
10月例会・・・10月21日(日)
1月例会・・・1月13日(日)
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