ALERT "Conjunction of STrD-2 with the GRS"
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注目、STrD-2(小赤斑)が大赤斑に接近
この小赤斑は、2007年のシーズンに同時に発生した南熱帯攪乱の1つであるSTrD-2が変化したものと考えられています。また、小赤斑はメタンバンドで明るく写ることから、木星大気の高層まで吹き上げている渦であり、大赤斑やSTB白斑と同様な高気圧性斑点(anticyclonic oval)です。 昨年の2個の南熱帯攪乱のなごりと思われる高気圧性白斑はゆっくりと前進を続けています。ドリフトチャートから、STrD-2は-0.28度/日(-8.34度/月)、STrD-1は-0.40度/日(-11.9度/月)のドリフトを示しています。このままのドリフトを続けると、STrD-2は6月下旬には大赤斑後方に達すると予想されます。
興味ある模様の5月5日の経度と長さ(C.Go氏画像から計測) | |||||||||||||||
最新情報The Little Red Spot accelerates now, and may approach to the GRS on late May.小赤斑が加速し、5月下旬にも大赤斑直後に迫る! (5/19) 堀川邦昭氏から送られてきた最新のドリフトチャートを見ると、減速傾向にあった小赤斑が再び加速を始めたようです。 4月初めに、後方からSTB白斑"BA"が接近すると、小赤斑は減速し、停滞するかのように思われました。しかしながら、STB白斑"BA"が南方を通過し終えた5月10日ごろから、小赤斑は再び加速して、元のドリフトを取り戻したようです。さらに、5月中旬にはさらに加速している可能性も見られます。 小赤斑が大赤斑の影響を受け始めるのは、経度がII=140度の大赤斑孔後端に差し掛かるタイミングと予想されます。小赤斑が最も加速したと想定すると5月27日ごろに、"BA"と同じ速度で前進したと想定しても6月10日ごろに、小赤斑は大赤斑の影響を受ける領域に達するものと思われます。 小赤斑が大赤斑孔に達すると、さらに加速することが予想されます。2つの赤斑の会合現象は、早ければ6月上旬に見られる可能性が出てきました。
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今後の予想小赤斑(STrD-2)が6月下旬ごろに大赤斑に接近すると、どのような現象が見られるでしょうか?このような大型の渦が大赤斑の後方から接近する過去の観測はありません。予想される現象を書き並べてみました。 (A) STrD-2は大赤斑後方で停止し、消滅する。 南熱帯攪乱の循環気流から生まれた小赤斑は、過去には1986年に観測されています。1985年に発生した南熱帯攪乱の位置に、翌1986年には今回と同じ形状の小赤斑が観測されました。ただし、この小赤斑は1987年1月に大赤斑に達する前に消滅しました。 2006年5月に大赤斑後方で南赤道縞南縁の暗部が南赤道縞から離れ、南熱帯の暗斑が形成されました。この暗斑は南熱帯を前進しましたが、大赤斑に到達する前に消滅しました。 今シーズンのドリフトチャートを見ると、小赤斑は5月5日にわずかに前進速度が減速しています。 (B) STrD-2は無事に大赤斑を通過する。小赤斑はこのまま南熱帯を前進し、大赤斑の後方に達すると、大赤斑を南に迂回するように移動します。小赤斑は大赤斑と南温帯縞との間の狭い領域を通過し、大赤斑の前方に移動します。この時、小赤斑は細く引き伸ばされるでしょう。大赤斑通過後も、同じ程度の大きさの小赤斑として南熱帯の中央を前進し続けます。 (C) STrD-2は大赤斑を循環する気流に乗って、大赤斑の周りを回ってマージする。同じ緯度にある南熱帯の暗斑でも、大赤斑の前方にあるものは、南赤道縞南縁を後退します。そして、大赤斑前端に達すると、大赤斑孔に沿って大赤斑の北側を回り込み、大赤斑の後方に移動します。この時点で大赤斑を循環する気流に乗っているために、暗斑はそのまま大赤斑の南側を回り込みます。暗斑は大赤斑孔に入り込むと、細く引き伸ばされます。 今回の小赤斑が、大赤斑後方に達した際に、大赤斑孔に入り込んでしまうと、大赤斑を循環する気流にとらわれてしまいます。暗斑が大赤斑の周りを回転していると、そのうちに大赤斑の巨大な渦に取り込まれてしまい(マージ)、暗斑は見えなくなってしまうでしょう。 (D) STrD-2はすぐに停止して、その後ゆっくりと後退を始める。小赤斑は、大赤斑に到達する前に前進運動をすぐに停止するかもしれません。そして、小赤斑は今度はゆっくりと後退を始めるでしょう。この場合は小赤斑と大赤斑の会合は起こりません。また、小赤斑はその後も生き残ります。 これはBAAのJohn Rogers氏から提案された予想の1つです。 以下のケースは可能性は低いかもしれませんが、予想される全ての現象を網羅するために掲載します。 (E) STrD-2が大赤斑を通過すると、南熱帯攪乱が復活する。 この予想は(B)と似ていますが、小赤斑が大赤斑の南を通過した後に、南熱帯攪乱が復活するかもしれない点でユニークです。過去の観測によれば、STB白斑が大赤斑の南を通過した直後に、南熱帯攪乱が発生している例が何回かあります。 今回は、6月下旬にはSTB白斑"BA"がちょうど大赤斑の真南に位置しており、そこに後方から小赤斑が追いつくことがトリガーとなって、大赤斑の前方に再び南熱帯攪乱の暗部が出現するかもしれません。この場合、南熱帯攪乱の循環気流から生まれた小赤斑が、大赤斑通過によって、再び循環気流に戻ることになります。 これは堀川邦昭氏から提案された予想の1つです。以下は堀川氏による予想の解説です。
6月下旬にはSTB白斑"BA"が大赤斑の真南に位置しています。通常であれば、南熱帯の暗斑などは大赤斑とSTBとの間の狭い領域を通り越して前方に進むと考えられます。しかしながら、今回の南熱帯の小赤斑は規模が大きく、まさに待ち受けているかのようなSTB白斑"BA"と相互作用を起こすかもしれません。そして、STB白斑"BA"と小赤斑"LRS"はお互いの周りを反時計方向に回りながら、最終的にマージし、新しいSTB白斑"BAL"ができるかもしれません。 さて、実際にはどうなるでしょうか?
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Drift chart
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議論
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