今シーズンの木星の北熱帯(North Tropical Zone:NTrZ)に北温帯流−C(North Temperate Current-C:NTC-C)の活動に属するいくつかの暗斑を同定しました。
この北温帯流は北緯24°付近を流れるジェット気流で、過去の観測で9時間46分〜52分の自転周期(平均で9時間49分17.4秒)を持っていることが観測されています。
北温帯流−B(NTC-B) 9時間53分 8.4秒
北温帯流−C(NTC-C) 9時間49分17.4秒
北温帯流−D(NTC-D) 9時間46分51.9秒
北温帯流は体系IIに所属する領域に現われますが、体系Iの自転周期よりもさらに速い流れを持ち(NTC-CおよびNTC-D)、木星面上で最高速の気流です。ボイジャーやHSTの写真から、定常的にNTC-Cに属する模様が存在していることが分かっていますが、地上からの観測で見つかるものは珍しい現象と言えます。
今年の観測から北熱帯(NTrZ)にいくつかの暗斑が存在し、それらがNTC-Cに属する模様であることがわかりました。これらの模様(暗斑)は、多くはInternetで公開されているPic du Midi天文台のI-Bandの画像から見つけました。その後の調査で、関西支部の浅田秀人氏・奥田耕司氏のCCD画像に写っていることを確認しました。また、眼視でも堀川邦昭氏によって観測されています。
今回の解析によって得られたNTC-Cの暗斑は、全部で6個が同定可能でした。模様の名前は最も観測数の多く目立ったものをSPOT-1とし、それから経度の増加方向にSPOT-2,・・・,SPOT-6としました。このうち、SPOT-2とSPOT-3は暗斑(Dark SPot)というよりも暗部(Dark Section)と呼ぶべき経度方向に10°〜20°の広がりを持っています。自転周期は最小自乗法によって以下のように求まりました。
Name | Rotation Period | Δλ1 | N |
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SPOT-1 | 9h49m12.338s | -57.86°/month | 22 |
SPOT-2 | 9h49m10.566s | -59.18°/month | 7 |
SPOT-3 | 9h49m 8.102s | -61.02°/month | 5 |
SPOT-4 | 9h49m 4.582s | -63.65°/month | 10 |
SPOT-5 | 9h49m 1.149s | -66.22°/month | 8 |
SPOT-6 | 9h49m14.644s | -56.14°/month | 5 |
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Average | 9h49m 8.564s | -60.67°/month | 57 |
得られたNTC-Cの模様の体系Iに対するドリフト・チャートを以下に示します。黒丸(●)は暗斑を、白丸(○)は白斑を示します。また、暗部の場合は前端部・後端部をそれぞれ矢印で示します。グレーで示す模様は、今回の解析で同定されなかったものを示します。青色の直線は回帰直線を示します。