SEB(South Equatorial Belt,南赤道縞)は、濃化や淡化を繰り返していて、その濃化現象のきっかけになるものとしてSEB Disturbance(SEB撹乱、SEB Revivalとも呼ぶ)がある。また、それらのサイクルの間に、SEB Disturbanceに似た大規模なSEBの活動が起こることが知られている。
大赤斑の後方のSEB内にはいくつかの白斑が前進する活動が観測されるが、これは大赤斑の北を通過することで消失する。しかしながら、こうした活動期間中に、白いRiftからなる大きな撹乱状態が見られることがある。この現象を、Mid-SEB Outbreakと呼んでいる。 Mid-SEB Outbreakは、SEB南部に小さな白斑が発生することから始まり、数日のうちにSEB内を北に前進する。この発生源から白斑が供給され、複数の白斑やStreakが急速に前方に広がり、乱れたSEBを形成する(図1)。この活動は数ヶ月の期間継続することが知られている。
図1 Mid-SEB Outbreakの模式図(出典1)
図2 SEB Disturbanceの模式図(出典1) SEB Disturbanceは、SEBが淡化している時に発生する。SEB内の1本の暗柱を発生源として、SEBnを急速に前進する暗斑・白斑群(北分枝活動)、SEBをゆっくりと前進する暗柱群(中央分枝活動、その先端にはLeading Spotと呼ぶ白斑がある)、SEBsを急速に後退する暗斑群(南分枝活動)があり、1年ぐらいの活動のうちに、淡化していたSEBが復活する(図2)。一方、Mid-SEB Outbreakは、SEBが濃化状態の時に発生することを除けば、SEB Disturbanceと似た現象であるが、活動期間は数ヶ月と短い。 表3に示すように、過去の観測例では、大赤斑のはるか後方で発生していて、大赤斑の前方で発生したことは1966年を除いて見られない。また、SEB Disturbanceの発生源としてE.J.Reeseが発表した体系IIIに依存した仮説との相関も低い。
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Date | Discoverer | System-II | Reese source(II) | (O-C) | GRS(II) |
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1930 Dec 14 | BAA(UK) | (18) | C:341 | (+37) | 257 |
1931 Nov 11 1932 Feb 4 | Phillips(UK) Schlumberger(France) | (34) about 339 | B:1 B:339 | (+33) (0) | 235 229 |
1966 Nov 24? | ALPO(USA) | 297 | B:322 | (-25) | 28 |
1979 Feb 19 1979 Feb 21 | Voyager1 Neel(France) | 152 | B:322 | (+1) | 55 |
1979 May 31 1979 Nov 1 | Voyager2 Rogers(USA) | 179 170 | B:231 B:192 | (-52) (-22) | 55 55 |
1980 Nov 18 | Dragesco(Benin) | 190 | - | - | 51 |
1985 Jul 12 | Miyazaki(Japan) Andrews(UK) | 130 (145) | - | - | 25 |
1985 Nov 3 | Miyazaki(Japan) Rogers(UK) | 193 | A:174 | (+19) | 25 |
1986 Dec 11 | Randall(UK) Moseley(UK) | 230 | B:246 | (-16) | 19 |
惑星探査機ボイジャー1号、2号は、1979年に相次いで木星の観測を行った。1979年2月21日、大赤斑の後方100度でMid-SEB Outbreakが発生し、その活動が詳細に解析されている(図4、図5)。
図4 Voyager 1号の1979年 2月25日の画像(出典1)
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最も良く眼視で観測されたMid-SEB Outbreakは図6の1985年のものである。これは東亜天文学会(OAA)の眼視観測から得られた展開図である。急速にSEBnに沿って、白斑群が広がっている様子が良く分かる。
図6 1985年のMid-SEB Outbreakの展開図 (OAA:宮崎、浅田、平林)(出典1) |
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