ALPO-Japan
2003年 火星観測計画
日本語版
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2002/07/20文責 安達 誠

 2001年の観測シーズンを終え、新しいシーズンに向けて観測の計画
をたてることにした。2001年は例年にない早い時期からの大規模なダ
ストストームの発生により、火星面に大きな変化を変化をもたらせている
ともの考えられる。今年の年末頃から観測に入る火星観測の最初の課題提
示としたい。

1 暗色模様の変化
 前シーズンの後半で、ダストストームの終息してからの観測を整理しな
がら次のような暗色もようの変化起こっているのではないかと考えている。
これらの模様に関する情報は関西支部に寄せられた観測を元に、池村氏が
丹念に整理されたものを安達が見て、示したものであることをあらかじめ
申し添えておく。

(1)シルチス
  大シルチスは池村氏がシーズン後半からたびたび指摘しておられる。
どうやら全体的に細くなったようなイメージをしている。北端の緯度の変
化は見られないが、先端から西側が見えにくくなっており、暗い模様の上
を砂が覆い、様子が変化している可能性がある。この部分はダストストー
ムが東進して来た部分に相当し、西風を受けた可能性がある。もしも一部
分が砂に覆われているとすると、シルチスの上に東西に細く淡い縞模様の
できている可能性が考えられる。

(2)ダエダリア
  1973年の大黄雲の発生したあと、ダエダリアに大きな暗色模様が
出現した。今回も同じ場所に同じような模様のできている可能性が高い。
すでに、ダストストームが終息してきた画像にはこの様子が捉えられてい
る。2度も同じ場所にできると言うことは地形的な原因を考えるのが最も
素直である。
  ダエダリア付近は西からの濃密なダストストームの侵入を受けた地域
である。この部分はソリス南方に見られる眉型の大きな山脈の西側に位置
しており、強風を受けて表面の砂が吹き飛ばされ、暗色模様としてで来た
可能性が高い。模様の様子も去ることながら、飛ばされた砂はどこにいっ
たのだろう。山をこえてソリスのある盆地に落ちていったのだろうか。ソ

リス周辺の精査が必要だろう。

(3)ソリス
  シーズン終了近くになって集まってきた数少ない観測を元に、池村氏
のシミュレーション作成が行われている。かなり微妙な状態だが、ソリス
は今までの位置より若干南にシフトして見えている。また、周辺には今ま
でになく、暗いバンドが見られている。ダエダリアとの関連もあり、この
付近は注意が必要である。

(4)オーロラ湾
  ダエダリア・ソリス・オーロラは一連の変化かもしれない。ベルト状

に繋がっているだけではなく、ダストストームが明るい帯になって長い期
間停滞していた部分に位置している。大きく肥大したような姿に見えるが、
この部分も精査が必要である。

(5)低コントラストか?
  火星の前面にダストストームが広がった。このことにより、全面でコ
ントラストの落ちた火星面になっているかできれば確認したい。前回の時
と同じ状態で画像処理したものを作ることにより、比較ができるかもしれ
ない。

 火星面の様子を掴むためには、今までのような画像だけでなく、IRでの
画像など特定のバンドを使い、早期に様子をつかみたい。

2 ダストストームの発生時期
 ここしばらくのダストストームの発生状況は次のようになっている。
      発生年  発生場所     Ls      季節(南半球)
      1956年  Noachis          240°   晩春
      1971年  Noachis          260°   晩春
      1973年  Solis Lacus      300°   盛夏
      1977年  Solis Lacus      268°   晩春
      2001年  Mare Tyrrhenum   185°   初春
 前回の発生時期がいかに早かったかが分かるだろう。前回の時は、ヘラ
スを中心にダストのベールがかかり、地球からの模様が低コントラストに
なっていた。前兆現象として、こういった現象を事前にキャッチできるか
どうかは、非常に重要な観測対象である。地域的に偏りがでれば、その付
近に発生する可能性が高いからである。
 画像を得るためにブルーフィルターを使うとき、撮影するフィルターの
波長域を確実に画像データとして記録しておいてほしい。単にブルーでは、
傾向だけしか読み取れず、まとめに使いづらいことが分かった。

(1)小規模なダストと風向
  視直径が10秒をこえると、小規模なダストの発生が捉えられる。観
測の焦点として、ダストの消長は大きな問題である。これについては改め
て言うまでもないが、ダストの発生した地域に吹いている風を調べ、流れ
ていった先の地域でベール状に拡散しないかを確実にキャッチしたい。拡
散すると、確実に大気の温度は上昇する。

(2)低緯度地方の氷晶雲
  低緯度地方にかかる、青っぽい氷晶雲のまとめを昨年同様に継続して
いくが、大規模なダストストームの発生前に、かなり濃いものが出現して
いる。今回もこの現象には注意が必要である。

3 極冠の消長
  今回はできていない。10月例会までに整理しておく。



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