Kenkichi.Yunoki (260mm Newtonian) |
天体観測所が出来ました。何かの参考になるかもと考え紹介します。
2年前の夏、伊藤氏から望遠鏡を譲るよと言われ、観測所を作ろうと考えました。
早速骨格を自作したのですが、外装や屋根の形式をどうするか迷っていてその後の製作が進みませんでした。当初全自作を考えていましたが、外装が私の様な素人の自作だと周囲は住宅地ですから近所迷惑な景観破壊にもなりそうです。構造材は総檜で当初は木の香りがしていたのですが、2年の放置で廃材のようになってしまいました。この秋、家をリフォームすることになったので、ついでに知りあいの工務店に頼んでやっと完成しました。かっこいいのはドームです。しかし私は月と惑星がメインですから温度順応やドーム内気流がないスライディングルーフの方が実用的です。どちらにすべきか迷いましたが、工務店の社長からドームは経験がないと云われ、結局スライディングルーフに決定しました。仕上がりはやはりプロの仕事で、これで周囲にも迷惑な建築物にならずに済みました。
@全景です。一辺2.8メートルの正方形です。一人では使用上十分な大きさですが、将来もう少し大きな望遠鏡をを導入するとしたら、長辺を3メートル位にしておいた方が良かったかもしれません。屋根は低空は割り切って高めにしました。将来の口径アップ(カセ系の際はベースを高くしなくてはなりませんから屋根も高くないと収納出来ません)を考えてのことですが、暗闇で頭上を気にするのも嫌だったからです。おかげで頭を打つようなことはありません。壁は石膏ボードで、屋根、壁ともに純白にペンキ塗りしています。当初予定していた内装は外気に早く順応するようにとしていません。
A夏場の観測室内の気温上昇を避けるため、ルーフにソーラー換気扇を付けました。
ルーバー窓を開いておけば、昼間自観測室内に外気が流入し、観測所内の熱せられた空気が天井から排出されると考えました。また、サーモスタット付き換気扇もつけています。このことにより、昼間不在の間にも空気が循環すると思います。 窓はルーバー窓を含め2カ所あります。
入り口も東西に2カ所付けました。東の低空の天体を狙うときには、Jに今まで使っていた20pを載せる為の搬出口も兼ねています。
Bルーフは片開きではなくレールレスの両開きとしました。片開きだとレールレスは困難で、その上庭が大きく占領されると考えました。観測の際の机は北西の角に設置しているので、上部を屋根で覆うことが出来て身体に夜露が直接降りるのを防ぐことが出来ます。
C両開きのレールレスの構造です。これは工務店の社長と鉄工所の社長が考えてくれました。鉄骨で作られていて全重量は200sを超えます。二人とも考えるのが好きな人で、様々な試作を繰り返したとのことです。おかげで大変良い構造で、重量物ながらも指一本で開きます。また、片方を押すだけで、もう一方のルーフも自動的に開きます。雨漏りを気にしていましたが、今のところ大丈夫です。
D伊藤氏よりお譲り頂いた、アスコSX赤道儀です。SXシリーズの中では最上位のType Mで、赤径目盛環恒星時駆動、大気差補正追尾回路(マルチ駆動回路ともいう)が装備されています。モーターは水晶発振式パルスモーターで、極めて滑らかで無振動な追尾をしてくれます。セッティングをきちんとしたので、赤道儀の優秀さもあって2時間以上経ってもToUcamの視野から惑星は出ません。望遠鏡は口径260mm 焦点距離1800mm(F6.9)です。
E今までのように観測の度に移動させることもなく赤道儀の性能も良いので、テルラドファインダーで探せば、対象物はたいてい暗視野照明付きのガイドアイピース(200倍)の視野に入っています。ガイドアイピースの十字の中央にコントローラーで導入すればそのままToUcamの中央に入っていて、即撮像に入れます。おかげで、観測所に入って3分以内に撮像が開始出来て今までの苦労が嘘みたいです。
ナビゲーター(エンコーダー付き)がありますから、テルラドでは見えない天王星などの暗い対象も探せます。接眼部をJIM'sのEV-1電動フォーカサーに交換し、モニターを見ながらピント合わせ出来るようにしました。
F東天の対低空用のJです。30年程前、今の職に就いた際の初ボーナスで買ったものです。酷使してきましたが未だに現役で使用できます。コントローラーはK-ASTECの川野氏のものに交換しています。
Gベランダも巾を広くしました。西天の対低空用のアトラクス(旧型)です。これはピリオディックモーションが2秒角で、Jよりも追尾性能は良いです。(もっともJは購入以来一切メンテナンスしていませんから仕方ないのかも知れません)極軸を追い込めば1時間経っても視野から出ることはありません。ただ、純正のままではパルス音が酷く共振しますから、これも川野氏に低振動用のコントローラーを製作して頂きました。
H天文仲間が12月29日にお祝いに訪ねてくれました。
I観測机です。ノートパソコンの液晶は見にくいのでCRTモニターを導入しました。やはりCRTの画像はいいですね。シーイングが2段階程アップしたように見えてピントの追い込みも楽です。
やはり観測所を作って良かったと思います。
ルーフを開くと、すぐに撮像に移れます。撮像後の片付けもほとんど気にすることもなく、今までの観測機器を移動していた苦労から解放されました。
撮像中はルーフの屋根で身体の上部を覆っているので、もう歳の身体に直接露が降りないのもありがたいと思います。
望遠鏡をお譲り頂いた伊藤さんには本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
≪柚木健吉 大阪府 堺市≫
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