木星観測報告 7/16〜8/15
九条観測所: 浅田秀人
この期間は、梅雨前後に見られた好シーイングには出会えないものの、16夜の記録観測ができました。
全体の印象として、SEB,NEB,NTBが目立つのは前月までと同様。NEBはNTrZ側に厚みを増し、経度によってはSEBより太く見えるところがある。RSを取り囲むアーチはやや淡くなったのか、悪条件ではアーチは後ろ半分だけになっている。
注目したのは、前月までと同様に、RS直後のSEBZの様子です。
各部の状況(南から)
SPR〜SSTB:
SSTBが独立したbeltに見える他、特徴なし。
悪条件ではSPR〜STZまで連続した濃部である。好条件の7/17にSSTBがII=300付近から南にシフトする様子をとらえている。ほぼ同じ経度でSTBが太く、STZ〜SSTB域が南に寄っているように見える。
SSTB上、II=30.6及び39.6に白斑有り。(7/18CMT)
STZ〜STB:
STZはSTBが太い部分と同じ経度上で暗い。
STBはII=110付近から北縁が見え始め、200付近から本来の太さになっている。
FA直前の北向きのnotch付近から濃度が増し、300以降で濃く太い。その辺りからゆるやかに南にシフトして350付近で途切れている。
永続白斑等:
BCを先頭に6,7個の大小白斑等が並んでいる。
LEBSでは依然DEが明るく大きい。FAがやや明るくなった。(7/17)
FA直前の北向notchはやや暗化し、さらにその直前の小白斑は7/24に確認しただけである。7/17,FAから約15度後方に小白斑有り。
CMTの結果
観測日
BC
Notch
DE
WS
Notch
FA
7/17
269.2
7/24
264.7
8/ 5
211.2
222.1
8/10
199.8
219.7
245.7
STrZ:
相変わらず、最も明るいzoneである。SEBsに湾を形成する大きい白斑はII=7.8(7/27CMT)、9.2(8/8CMT)、10.6(8/11CMT)にあり、このペースで移動が続けば、来年の4月,5月にRS(II=60と想定)と会合する。
上記白斑以外ではII=177.2(8/7CMT),298.2(7/17CMT),DE真北の210付近に小〜中規模の白斑があり、SEBsに軽微な湾を形成している。
RS:
オレンジ色で濃いが、北側は淡い。位置はII=60.1(8/6CMT)、59.1(8/9CMT)。
RSを取り囲むアーチは8月に入いってから前半部分が淡くなっている。
SEB:
全体的には太さ、濃度ともNEBと同等。II=10の湾以降からRSの後方まで南側が隆起して太い。(隆起と言うよりSEBsに接して発生したdark streak?) SEBsは南縁が濃く、SEBnは一様に濃い。 SEBZはRS前後で幅広いがその他の経度ではやや狭く、悪条件下では南組織、北組織が分離せず、1本のSEBに見えることもある。
RS直後はSEBZを中心に、この期間も変化を見せている。
白斑状に見たのは8/2,8/6,8/9。
8/2はRS直後に2個の白斑(II=75付近)、その後方に2個の白斑が連なったように見える明部があり、さらに後方のII=125〜139付近(followの値はCMT)に黄味を帯びた2個の白斑を見ている。
見方を変えれば、II=70〜140でSEBnは緩やかな山なりで、SEBnからSEBZに数本の暗柱が立っているようにも見える。
しかし、各明部は白斑状に近い輝度があり(黄味を帯びたものを含めて)、また最後尾の白斑はSEBnをEZ側に押し下げている。
8/6にはRS直後の2個、8/9にはRS直後に3個の白斑を記録している。
7/13,15に見たRS直後のSEBsの淡化のその後
7/16に淡化の経度幅20度、7/21に同30度と広がる傾向だが、同時に淡化は次第に収まっている。8/2に、幅40度の淡化と見たが、同日のCCD画像ではblueで判断できる程度である。8/6,8/9の記録から判断すると、淡化の部分はやや後退しているようである。
以上の事柄から、RS直後のSEBZに生じた白斑を起点に、上層の白雲(?)が南後方へ一時的な広がりを見せたものと想像する。即ち、SEBsの淡化とは言い難い。
付け加えて、7/18に1回きりの確認であるが、通常は黄味の強いRS直前のSEBZに白色部を観測している。
EZ:
前月と同様に濃いfestoonが多く見られ、NEBsに接する根元部分は木星面上の最濃部である。前月はEZ全体が暗化するかと見たが、まだその傾向ではないようだ。
7/11以降のfestoonの位置データから、festoonの数と移動を求めてみた。
fes.1
7/15
7/17
7/24
64
67
67
fes.2
7/13
7/15
121
125
fes.3
7/11
7/13
7/15
7/18
152
156
152
154
fes.4
7/16
7/27
207
216
fes.5
7/16
7/21
268
272
fes.6
7/21
8/ 2
8/11
309
315
323
(経度の値はsystem-I,データの多数はCMTではなく視位置)
以上から、festoonは体系Iに基づく移動(やや後退)であることを確認した。
またfestoonの間隔はおよそ45度で、中程度以上のfestoonは全周で8個ほど存在すると推測する。尚、たいへん濃度のあるfestoonはそのうち6個(上記データ)。
NEB:
NEBsのfestoon根元部分から各々右下がりのriftが見られ、その流れがNEB北縁まで続いている。長いriftは緩傾斜で100度に及ぶ。
NEB北縁は7月中は比較的平坦であったが、8月初旬から再び大波状の凹凸が見られ、太い部分はSEBの太さに勝っている。
NTrZ:
NTrZの明るさはSTrZ,EZに比べるとやや暗い。眼視ではわかり辛いが、CCD画像では赤味が強い。
NTB:
細い部分、太い部分(2条に見える部分も有り)がある
太い部分はII=255〜280(7/17),320〜50(7/17,18),100〜140(8/2)等であるが、8月初旬からは顕著ではない。
NTZ以北:
特徴をとらえていない。
305mm(Newtonian) 眼視観測(280x)+CCD / 九条観測所(京都市)
その後も8/17,18,19と連夜見ていますが、20時過ぎの観測はシーズンの終わりを感じてしまいますね。今から旬の土星を見ます。
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