木星観測報告 8/17〜9/7

九条観測所: 浅田秀人


8月後半以降、好条件で見られる日は少なくなってきましたが、10回の記録観測ができました。

この期間にNEBが前月より更に太くなり、それに伴ってNTrZが暗化傾向。EZのfestoonはやや減少傾向です。RS後方の白斑群は相変わらず活動的です。一方、RSを取り囲んでいたアーチは次第に淡くなり、見えなくなりました。

各部の状況(南から)

SPR〜SSTB:

好条件の時にII=130〜210付近にSSSTBの存在を確認している。南半球高緯度地域が徐々に明るくなって、見えてきたものであろうか。

SSTBは普通の条件で見られるが、II=50〜150付近、及び170〜200付近で所々濃い。最濃部は140付近。悪条件ではSPR〜STZまで濃淡は見られない。

STZ〜STB:

STBがII系に対して前進している他は前月と同等。見え始めはII=100付近で北縁のみ。170以降で本来の太さで、300付近から南へシフトして、340付近で消滅。DE直後に濃部がありDEとのコントラストが顕著。

永続白斑等:

CMTデータ(第U系)
観測日BCWSDEWSNotchFA
8/17197.0
216.4


8/20



241.3255.2
8/22194.4206.5214.4226.5241.0254.3
9/ 3191.0202.5209.1


前月に引き続き6個を確認しているが、Notch直前のWS(左から4個目)は殆ど輝度を失い、CM付近でさえ見辛い。また、BC〜DE間のWSはDEに接近して、分離して見えるのはCM付近の時だけである。永続白斑は相変わらずDEが明るい。FAは小さいが輝度は有している。

STrZ:

相変わらず最も明るいzoneである。記録した2個の白斑はいずれもSEBsに接するもので、中規模の白斑はDE真北のII=212.7(8/17CMT),同じく213.3(9/3CMT)、大規模の白斑は11.5(8/18CMT)。なお、大規模白斑の経度幅は6度(8/18,SEBsのbayで計測)。

RS,dark streak(STrZ):

RSはこの期間もオレンジ色でよく目立ち、100倍未満の低倍率で存在はわかる。位置はI=60.7(9/2CMT)、62.1(9/7CMT)。まだ後退傾向である。

RSを取り囲むアーチはRS前半部から薄れて、9/2に淡いながらも確認したのが最後で、9/7には見えなかった。また、II=10付近のSEBsのbayから伸びていたdark streakの存在で、bayの前後でSEBsの高さが違って見えていたが、8/11以降では高さに差はない。一方、dark streakの後端はII=120(8/19CMT)、8/31には110付近である。

SEB:

SEBsはII=130〜155付近で淡いが、上記dark streakと接する部分があるので判り難い。南縁はSTrZの白斑がbayを数多く形成していた時と比べると、現在は随分平坦である。濃度は相変わらず南縁にある。

SEBZ〜SEBnの様子は、RS直後の白斑群を除くと、SEBnの活動次第という具合に見える。9/7には、その白斑群の直後からSEBnは右上がりに膨れ、SEBZを覆い隠している。また、II=100〜220付近の、SEB北縁より少し南に、長く連なる暗部があり、そこでもSEBZはzoneに見えていない。

尚、白斑群直後のSEBnの活動については、8/19にその前兆が見える。

RS直後の白斑(白雲)群は、この期間II=60〜90で見られる。東縁で見辛く、西縁で見やすい傾向があるようだ。CCD画像で9/5,西縁の白斑を捉えているが、永続白斑と比べて遜色ない。

9/7に3個の白斑についてCMTを得た。II=67.5 , 79.6 , 88.7

EZ:

8月中旬以降、festoonの活動は収まり、9月に入ってからのEZはSTrZと同等の明るさに戻っている。festoonは大きさ、濃度ともに縮小して、EBは見えないことが普通である。

NEB:

前月までの複雑な様子は次第に見えなくなっているが、太さは確実に増している。8/20以降ではSEBよりも太い。NEB全体としては、どちらかと言えば北部が濃い。条件の良い時には、festoonの根元から右下がりのriftが数多く見え、NEBは全体としては右下がりの波の集合体である。例外だが、左下がりのriftを8/22,II=185付近に見ている。

NTrZ:

NEBが北側に厚みを増した分、やや細くなり、8/22以降は暗化している。暗化の程度は、NTZと同等の暗さであり、8/18に眼視で暖色を認識し、9/2には赤味を感じた。

また、暗化の結果、明斑がいくつか見える。8/17,II=185付近、8/18,320付近、8/22,185付近,及び232(CMT)、9/3,245付近,及び225付近。これらの明斑は、NEB北縁に接しているものが多く、東西の縁近くでも確認できる。

NTB:

NEBが太くなった結果、NTBはNEBのおよそ1/3である。濃度はNEBと同等で、最悪の条件でも第3のbeltとして存在は明らかである。2条に見えるのはII=250〜310付近。

8/22にNTrZに見た明斑(II=232)はNTBに軽微なbayを形成している。

NTZ〜NPR:

9月以降、NTZがやや狭く感じられる。NPRから連続する濃部が南に上がってきているのか? また、両極付近の暗さは南北同等に見える。

堀川さん:

先日は細やかなRESを頂き、たいへん参考になりました。今回もよろしく。

追伸:

昨日、安達さんがやって来られ、緊急ミーティングをしました。SEBZの白斑がRSの北を通り過ぎた跡を9/7にスケッチされてます。RS直前のSEBZの南の端が薄ら明るい状況に描かれていました。

一方、私がそれらしいのを見たのは7/18に一回切り。RS前のSEBZの南寄りという点では一致しています。

ご意見がございましたら kfc01122@niftyserve.or.jp 浅田 秀人までご連絡ください。