土星観測報告 8/2〜9/24 in 1996
浅田 秀人
土星のSEBが活動的で、北に勢力を広げている様子を8/2から観測している。
Y氏(茨城県)から「9/16、SEBの真北のEZに東西70度の暗斑を見た」との連絡を受け、9/18に確認観測すると共に、9/15の土星画像から同じ暗斑を確認した。
以下に8/2以降のSEBn〜EZsに見られる特徴について記す。
尚、今回の暗斑はほぼベルト状であり、単に暗斑と呼ぶには誤解が生ずるので、とりあえず名称は「(SEBn〜EZsに発生した)ベルト状暗斑」と致します。
- CCD画像でSEBn〜EZs域に暗斑(小規模な暗部を含む)を捉えた経度を示す。時刻は撮像時(JST)で経度値はいずれも画像から測ったもので、眼視のCMTではない。
項目 | 1996 | JST | 暗斑の始点-終点 (体系I) | コメント |
(1) | 8/ 2 | 26h55m | ? - 137 | 137以降はstreak状(?) |
(2) | 9/ 3 | 24h45m | 95 - ? | 淡い暗部 |
(3) | 9/15 | 24h59m | 127 - ? | 濃い暗斑 |
(4) | 9/18 | 24h39m | ? - 125 | (3),(5)に比べると若干淡い暗斑 |
(5) | 9/18 | 25h17-55m | 159 - 211 | 211は太さを保っている状態での後端 |
(6) | 9/24 | 25h23m | ? - 179 | (4)で見た時よりやや濃いか? |
(7) |
| 同上 | 219 - ? | 中央子午線より27度東ながら明瞭 |
- 濃い「ベルト状暗斑」の緯度はスケッチ(安達,浅田等),CCD画像から計測して、中心は-10度。この緯度でのドリフト(+10/1day)、また模様の特徴から(3),(5)は同一のベルト状暗斑であることを確認した。(7)も同一。
- (3),(5)から求めた体系Iに対する移動(後退)は +10.62/1day である。
- 尚、Y氏の9/16の観測データ「I=155(21h55m,CMT)を中心とする東西70度」も(3),(5)及び(7)と同一である。
- また、(1),(2)はドリフトから判断して、(3),(5),(7)とは別の暗斑であろう。
- (4),(6)は(3),(5),(7)の直前の暗斑で、未だ子午線付近で捉えていないので、濃淡の判断をするのは早計である。
- 経過を追うと、
- 8/2からSEBnが北に膨れていることを画像から確認している。また眼視観測でもEZがやや狭いと見ていた。尚、8/2の画像は過剰なシャープ処理ではSEBnに起伏が見られ、画像処理上の問題かと考えていたのも事実である。
- その後9/3迄は、眼視観測のみで自転を検出する模様が検知できない為、画像、スケッチとも無し。
- 9/3は今期最良の条件で見たが、当該緯度では淡い暗部が認められるのみ。
- 9/15は眼視、画像ともベルト状暗斑(眼視で自転が追える程度)の存在を確認したが、眼視観測時のseeingが悪く、目立った模様の発生とは気づかず。
- このような状況で、濃い「ベルト状暗斑」の発生が9/15以前の何時であるかは判断できない。
- ベルト状暗斑の発生を次のように見ている。
- 土星面全周で、SEBnが北に膨れ、そこに「白帯」が走り(安達)、SEBとは別のベルト(暗斑)が発生したかのように見えている。「白帯」はSEBZの活動かも知れない。
- 以上から、暗斑の緯度位置はSEBn〜EZsであるが、SEBの活動として捉えている。
- この暗斑で目立っているのは先端。50数度は濃く太い状態を保つが、後端は切れ長状で判り辛い。
- 白斑の発生との見方について。
- 暗斑と暗斑の間(例えば、9/18のI=130〜155)は、「白斑」と見えないでもないが、輝度は全くないので「隙間」と見るのが適当と思われる。
- 9/18の画像では、EZsのI=156,-5付近に微かに明るい部分があり、「強いて言えば白斑」という模様があることは事実。
305mm(反射) 眼視観測 326x + CCD / 九条観測所(京都市) 浅田 秀人
連日これら土星の画像とにらめっこで、昨夜(9/24)は久しぶりに現物と対面しました。何となく眠い毎日が今しばらく続きそうです。
Sep.25,1996