300年前の天体衝突を日本の天文家が発見

朝日新聞 1997年 1月8日朝刊から


 1994年7月、木星にシューメーカー・レビー第9すい星(SL9)が衝突、最 大で直径約1万4千キロもの黒い痕跡を木星に残したが、1690年にも同じような 天体衝突が木星であったことを示す記録を、日本のアマチュア天文家がパリ天文台の 資料から見つけた。日本天文学会と国立天文台が7日発表した。

 見つけたのは、横浜市に住む科学教材会社社長の田部一志さん(40)。木星の観 測をしている田部さんは昨年七月、パリ天文台の図書室に保存されている古い資料を 調べ、1690年12月にフランスの天文学者カッシーニが19日間にわたって木星 表面を記録したスケッチを見つけた。

 記録には「影が突然現れた」との記述があり、12月5日に木星の赤道付近に直径 約7500キロの円形の影を見つけ、23日までに東西方向に細長く変形したことを 書いている。

 SL9の衝突では、噴き上がったチリの雲とみられる痕跡が、木星の成層圏の風で 東西方向に広がった。その変化の様子や速度と今回の記録がきわめてよく似ているこ とから、田部さんと渡部潤一・国立天文台助手らは「小天体の衝突によるもの」と結 論した。

 木星の場合、小天体の衝突頻度は950年から240年に1回と見積もられ、過去 の観測記録が探されていたが、明確な記録は見つかっていなかった。