2009年の木星−中間報告− by John H.Rogers
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2009年の木星−中間報告−
『合と衝突』
●木星の海王星との合
この合は2009年に5月25日、7月13日、12月20日の3回起こる。5月の合はDavid Arditti (Fig.1)とBernd Gahrkenが撮影した。彼らは、まさにガリレオが1612年12月28日と1613年1月27日に描いたものを見た。
●明るい恒星の掩蔽
木星は8月3/4日の夜に6等星の恒星45 Capを掩蔽した。最も明るいこのような掩蔽は1971年以来のことであった。
ヨーロッパの何人かの観測者が現象を時間経過ビデオに記録した。そして、恒星が木星の南極地方の大気を通過して、消失する前に、数分間で恒星の1 回かそれ以上の劇的なフラッシュを観測した。このようなフラッシュは過去の掩蔽で注目されていたが、今回はいくつかのビデオが恒星の通常等級の範囲を越えたフラッシュを観測した。残念ながら、輝度が画像処理によって影響されているかをはっきりとできないし、現象の眼視レポートが無い。Maurice Toet、John Sussenbach (Netherlands)、Marc Delcroix (France)によって、ビデオが投稿された。Delcroixのビデオは最も詳細な記録であり、以下で公開されている。
http://astrosurf.com/delcroix/occ_20090803_Jupiter_45Cap-MDe.htm
●衝、昼夜平分点、衛星現象
木星の衝は2009年8月14日に、Capricornus座の南緯15度であった(偶然に、8月11日の土星の昼夜平分点の直後に起こった)。木星も今年の2009年6月23日に昼夜平分点を通過し、地球は2009年4月15日に木星の赤道面を横切った。そのために、今年を通してガリレオ衛星の相互現象があり、初めて何人かの観測者はこれらの現象を解明する時間経過ビデオを作成することができた。
また、低い傾斜角であるので、全ての衛星と影は赤道帯を経過する。8月12日に、イオが食に入っている間に、ガニメデとユーロパ本体とそれらの影の同時経過という、素晴らしい複数の現象が起こった(Fig.2)。これはこれらの3個の月の間の軌道結合の見事な図解であり、そして1週間後に繰り返されたというのが事実である(衝の後で影の位置は反転している)(Fig.3)。両方の現象はヨーロッパを越えて広く観測された(8月19/20日の独立したDave TylerとJose Antonio Soldevillaの素晴らしい画像は、Fig.3に含めていな い)。
●‘Bird Strike’ (Anthony Wesley発見の衝突痕)
7月19日、Anthony Wesleyによって南緯59度に発見された新しい衝突については、7月末まで我々の中間レポートに記述している。Fig.4は8月の高解像度画像の精選である。8月26日現在、暗い衝突痕は広く淡化し拡散したが、2個以上の斜めの暗いストリークが残っていて、その北東(Np)端は南緯53度の前進するジェット気流に乗って明らかに拡がっている。8月29日にJoel Warrenは彼の画像とともに、「Wesley の衝突痕は速やかに淡化していて、ちょうど淡いキズのようである。リムで見るのが最も容易く、CMに近づくとどのように見えるかを知る必要がある。」と報告している。完全なレポートはまもなくBAAジャーナルに掲載されるだろう。一方、2つのwebサイトは重要である。
1) Hans-Joerg MettigとTheo Ramakersによる、極投影マップのアニメーションでの、衝突痕の発達のグラフィック表示
http://www.ceastronomy.org/gallery/main.php?g2_itemId=6848
2) Kelly FastによるThe Hawaiian rock version, “1994 (The Jupiter Impact of 2009)”
http://www.youtube.com/watch?v=Ie_eiv4zzxk
『木星の大気』
木星は大規模な気象現象を表示し続けている。多くの観測者が現在素晴らしい高解像度画像を送っている。最近の2年間の高解像度報道の頼みの綱であるAustralia, Brazil, Philippinesの観測者ばかりではなく (Australiaの優れた新しい観測者Trevor BarryとDarryl Pfizner Milikaを加える)、Don Parker (USA), Brian Combs (USA), Efrain Morales Rivera (Puerto Rico), Paulo Casquinha (Portugal), Paolo Lazzarotti (Italy), Jean-Jacques Poupeau (France)のようなより北方の観測者も含まれている。Fig.5は8月13-14日の惑星全体をカバーする画像の組である。同じぐらいか、さらに良い組は上記の観測者からの画像を含めて、8月12-13日か18-19日の画像から準備できるだろう(また、Parker, Barry, Casquinha, Akutsuの画像からは、画像をブリンクさせることによって、気流やジェット気流を見ることができる)。
全体として、木星は2007年のグローバルな大変動から復元していて、多くの領域に広範囲の活動は見られない。しかしながら、SEBは淡化や復活の新しいサイクルの準備のために再び淡化し始めていて、NEBは北方への拡幅の新しいサイクルが始まった。以下はFig.5に示すいくつかの興味深い様相の予備のサマリである(これにはJUPOSデータの解析はまだ含めていない)。
●SPRからSSTB
高気圧性の永続白斑(AWOs)は、南緯60度から南緯40.5度までの4つのドメインのそれぞれでの超高解像度画像で、現在は普通の様相である。BAAとJUPOS記録の新しい解析から、通常わずかに赤味がかっている南緯50度のAWOは、おそらく1994年かそれ以前から存在している [Rogers, Adamoli & Mettig, submitted to JBAA]。
●STZ/STB
北に向かって次のAWOである、白斑BAは2006年から2008年まで赤味がかっていたが、2009年にはほとんど色が無い。白斑内部の以前はオレンジ色のリングは、現在はその周りと同じ淡い黄褐色である。
STBは通常通りほとんどの経度で薄くなっているが、新しく暗い断片が発達していて、大赤斑の後方にあり、今年後半に大赤斑を通過する (Fig.5で'STB-1'とマーク)。この断片は、別の長命な2個のSTB断片【白斑BA後方の短くて非常に暗いブロック(Fig.5 'STB-2') と、長くて非常に淡い青色の'STB Remnant'】の収れんによって開かれた、長いギャップで発達した。STB Remnant自身は2004-05年に同じ環境で形成された [http://www.britastro.org/jupiter/2006report07.htm and ...report11.htm]。これが低気圧性のセルである証拠が今年の画像から得られていて、それはメタンバンド画像での暗さと、8月4日にWesleyによって撮影された例外的な詳細な画像での曲がりくねった青い外形である。
●SEB & GRS
大赤斑はL2=138度に位置する。
SEBの活動の停止。3月-4月には、まだ大赤斑後方に密集した明るいリフトの活動があった。リフトの活動は6月初めにかなり急に停止した。確かに5月以来新しいリフトはなかったかもしれないし、残っていたリフト領域はその後端が大赤斑に達すると消失した。大赤斑と後方のSEBsをつなぐアーチは、淡い斑点ではあるが孤立するように大赤斑を離れて、7月初めに淡化した(Fig.7)。それで、何人かの観測者は、活動の停止が再びSEB淡化を導くだろうと予測した。確かに、8月にSEBは全体的に淡いように思われ、内部のバージが目立って暗い。それで、2010年か2011年のいつかにSEB復活 (SEB Revival)の outbreakが始まるまで、淡化が続くように期待したい。
●SEBn
SEDは2009年初めにはあまり目立たなかったが、7月8日に大赤斑を通過したL1=約35度の明るい細片として同定された。8月中旬には、大赤斑に再び接近するので、さらに長く延びたけれども(8月13日にL1=約95度)(Fig.5)、SEDは一部典型的な形態に戻っている。
EZは大きなフェストーンもEBさえも無く、幅広く白色であるが、高解像度画像ではおびただしい淡い青味がかったストリークのもつれたネットワークが現れてくる。
NEBsにはなおも少し大きなprojectionだけが見られる。
●NEB/NTropZ
今年の最大の活動の場面である。春には、2008年のようにNEBに出現して、明瞭なリフトに拡がる小白斑の典型があった。しかし、夏にはリフトは例外的な範囲まで拡がり、ベルトの全ての幅とほとんどの外周を覆った。いつもNEBリフトとその他の現象との関係をはっきりとさせるのは難しかったが、現在始まっているNEBn拡幅現象と非常に関係しているかもしれない。
この現象は5月31日に始まり、巨大なリフト領域の南西(Sf)端が、以前は見えていた暗いバージの位置に存在するNEBn projectionを通過した際に、NTropZに暗い物質を方向転換させた(これは大赤斑の真北のL2=136度、Fig.7。以前のレポートを参照。引き続いた解析はMichel Jacquessonによって行われている)。3個の非常に暗い暗斑が続けざまにこの場所に出現し、NTropZを前進したが、それから再び南に移動して、それらのドリフトは反転するか停止した。暗斑2と3はL2=98度と118度に残っている。これらは以前のNEB拡幅現象の初期に出現した高気圧性の Little Brown Spotsと似ている。8月には、それらの周りの領域は薄暗い黄色がかった色に変わり、明らかに拡幅現象の始まりである。後端には明るい白斑がある(Fig.5の任意のラベルWSY)。
8月7日、L2=20度に第2のoutbreakがまさに同様に始まり(Fig.6)、明るいリフトの北西(Nf)端の小さな赤いバージの周りで方向転換し(8月4日のWesleyの画像に見事に見られる)、NTropZに暗い茶色のリングを形成し、1週間は-40度/月で前進して、その後L2= 7度で停止した。同様に元の経度でNTropZに噴出し続けている乱流とともに、この暗斑もNEBn拡幅の中心を続けているように思われるが、その他の暗斑はまだ現れていない。
一方、NTropZの白斑Zは、現在12歳で、今なお非常に明るく、高速に前進しているが、最初のNEBn outbreakに接近して、現在はちょうど白斑Yの直後に位置している(Fig.5)。
●NTB/NTZ
NTBは、2007年の劇的な復活の後で、今なお幅広くオレンジ色である。北縁は今なお非常に曲がりくねっていて、内部に埋め込まれたものは非常に暗い灰色のストリークと小さな赤味がかった斑点である。1個以上の断片で、disturbance(攪乱)がNTZを横切って北方へ拡がり、北温帯攪乱 (N. Temperate Disturbance)を形成しているように思われる。これは、このような様相は強力なNTB復活の遅れた続編であるという、昨年の推測を検証するだろう。まだ、これらを詳細に解析していないので、今年の超高解像度画像キャンペーンの対象は、ジェット気流をさえぎっているかを調べるために、これらの断片の中や周りの斑点の動きを決定することになるだろう。
●NNTB/NNTZ
最も注目すべき模様はNNTZの小赤斑(Little Red Spot)である。今年は例外的に赤い。NNTBがなかったために、最初は孤立した赤い斑点だったが、その後周りにいくつかの暗斑やストリークが集まってきて、現在は隣接するNNTBに暗い輪郭が見える。BAAとJUPOS記録の解析から、このLRSは少なくとも1993年から存在している [Rogers, Adamoli & Mettig, submitted to JBAA]。
John H. Rogers, Ph.D.
Jupiter Section Director,
British Astronomical Association.
http://www.britastro.org/jupiter
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Fig.1
Fig.2
Fig.3
Fig.4
Fig.5
Fig.6
Fig.7
John H. Rogers,Ph.D.
Jupiter Section Director,
[British Astronomical Association.]
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