木星のSEB淡化:赤斑孔の新しい現象 by John H.Rogers(日本語訳 伊賀祐一)
| 木星のSEBは現在とても速やかに淡化していて、大赤斑はきれいに孤立したオレンジ色の斑点になっている(すでに2007年以上の状態)。Christophe Pellierの最新のメッセージがこれらの変化を明快に解析し ている。一方、赤斑孔 (RSH, Red Spot Hollow)のエッジの、非常に明るい白斑に注目していて、これがとても興味深いことが分かっている。
この白斑についての電子メールの議論から、変わりやすいけれども、SEBの淡化期に再発する模様であることが分かってきた。これは新しい発見であり、通常タイプの活動が見られないことによって別に特徴付けられた期間での、特殊な活動のサインとして重要である。明るい白斑は、確かにその前方で青いストリークとつながっているようで、これもまた淡化中のSEBあるいは淡化したSEBで再発する模様である。
青いストリークはSEBが淡い時に何回も注目されている。『大赤斑の北前方のSEB(N)には、時々明瞭な青味がかったか、あるいはグレーの三角形が存在する(1942/43, 1957, 1962, 1974, 1989/90, etc.)。この色は 他にはめったに見られないので、淡化は白雲がただベルトを覆っているのではないという証拠である(自著p170)』。これは1992/93年にも見られ、2009年に再び出現した。
2009年の白斑は10月初め辺りに、青いストリークは10月中旬に発達した。Michel Jacquesson, Yuichi Iga, Toshirou Mishinaは、それぞれの組画像の作成と白斑の起源についての解析を行っている。【添付したのはYuichi Igaからのものである。要求があれば、Michelと私は大き な画像を送ることができる(※入手済)。】
白斑はSEB内部のより小さな模様から発達したかもしれないが、赤斑孔の目立たない小さな白斑から発達したというのがより本当らしく思われる(9 月27日と10月2日の画像)。これはすぐに赤斑孔のリムをせき止める非常に明るい白斑になり(10月4-9日)、それから赤斑孔の隣の狭いSEBの中に完全に移動した(10月12日、なおも非常に明るく、この日に白斑がメタンブライトであることを示す最初のメタン画像が撮影された)。その後、白斑は SEBの前方にあまり明るくない白いストリークを放出したが、その北縁に沿って青いストリークを伴っていた(10月19-26日)。両方ともに非常に明るい白斑から放出されている。
同様な白斑は今年の以前にも出現している。Michelは7月に撮影された素晴らしい画像の中に一つの例を、4月下旬にあまり目立たない白斑を見つけている。どちらも現在の白斑ほど明るくない。
特に、Antonioが指摘するように、白斑はメタンバンド画像でも明るい。白斑は10月12日(K. Yunoki)、10月14日(Don Parker)、10月24日(A. Cidadao)、10月25日(T. Akutsu)、10月28日(K. Yunoki)に撮影されていて、白斑は明らかにメタンブライトであり、SSTB白斑(AWO)より明るい。
赤斑孔のリムでの明るいせき止めは通常時に良く見られるもので、A. Sanchez-Lavegaのチームは、それらが後退する渦が赤斑孔でばらばらになった結果であることを示している。現在はSEBは静かで、そのような渦は存在していないので、明るい白斑の出現は驚きである。しかしながら、同一の白斑がSEB淡化の初期に発達する青い三角形に沿って観測された。時々、現在のように、白斑や青い三角形は1年以内に何回も行き来していた。
同様な白斑が1989-90年と1992-93年にSEBが淡化した時にも見られたことから、明るい白斑は再発する模様として確認することができる。JBAAの我々のレポートによる。
1992年には、4-5月に明るい白斑が赤斑孔に出現した(Christophe Pellierが思い出させてくれた)。彼は1992年4月17日のMiyazakiの画像を指摘している。
http://www.ii-okinawa.ne.jp/people/miyazaki/planet/92-01-250.JPG
また、1993年1月14日のPic du Midiのカラー画像では、白斑の前方に青グレーの三角形を伴っている明るく白いリフトとして見られる[Sanchez-Lavega et al., Icarus 121, 18: Fig.2B]。
1989/90年には、大赤斑の北前方の青いストリークが7月,11月,2月,4-5月に目立ったが、1ヶ月おきに淡くなった。高解像度写真によれば、1990年2月のストリークは小型のSEB復活のように発達し、大赤斑の真北の明るい白斑から前方に拡がった。青いストリークの前端は数日間DL2 =-92度/月で拡がった。今年の現象はこの現象の繰り返しである。
1974年には、青い三角形が時々見られ、再び変化しやすかった(パイオニア10と11の接近時には見えなかった)。白斑は記録されなかったが、赤斑孔は特に明るかった。
観測シーズン終了まで観測を続けることは、たとえ低解像度であったとしても、SEBがどのように発達するかを知るためには、明らかに重要である。
John H. Rogers,Ph.D.
Jupiter Section Director,
[British Astronomical Association.]
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