NEBnの白斑のマージ(L2=270度) by Y.Iga |
The Merge between Ovals in NEBn(L2=~270) NEBnのL2=約270度で、8月26日UTに急速に接近する2つの白斑が観測されていましたが、28日UTにこれらの白斑がマージする様子が観測され ました。白斑はお互いの周りを時計回りに回転しながら接近し、マージしました。高解像度画像によれば、一つになった白斑内部に斜めの筋が 見えていて、2つの白斑のマージは進行中であることが分かります。 8月21-24日の前田和儀氏の観測から、NEBnの2つの白斑が急速に接近していることが分かります。これらの白斑は、25日のGenile Angelo氏の観 測まで接近を続けています。 26日のWayne Jaeschke氏の観測で、2つの白斑はそれ以上の接近を回避するかのように、前方の白斑が南側に回り込んでいます。さらに、10時 間後(1自転後)の山崎明宏氏の観測では、さらに南に回り込んでいて、メタン画像でも2つの白斑が斜めに傾く様子が確認できます。 山崎氏の観測から38時間後の28日、Wayne Jaeschke氏の観測では、2つの白斑はマージしている途中の姿が見られます。2つの白斑は南北に並び、 一回り大きな丸い白斑にも見えます。この観測の11時間後のAnthonyWesley氏の観測では、マージが進行中の白斑内部に斜めの筋があり、今なお も元の白斑(渦)の勢力が継続しています。1時間前の山崎氏の観測のメタン画像でも、2つの白斑の影響から非対称にいびつな白斑に見えます。 さらに翌29日のWesley氏の観測でも同様に、白斑内部に前日とは異なる角度に筋があります。まだマージは完了していなくて、2つの白斑はお互い の周りを時計回りに回っているようです。 ※北半球の高気圧性白斑は時計回りの渦で、2つの白斑が接近するとお互いの周りを時計回りに回転しながら、最終的に1つの白斑にマージ します。 一方、南半球の高気圧性白斑はコリオリ力で反時計回りの渦となり、接近する白斑はお互いを反時計回りに回りながらマージします。 2010/09/01 NEBnの白斑のマージについての補足です。(伊賀) 8月21日-29日の観測をまとめましたが、26日の山崎さんの観測から、28日のJaeschke氏の観測までの38時間の空白があります。 2010/08/26 16:28UT Akihiro Yamazaki 2010/08/28 06:53UT Wayne Jaeschke 2つの白斑が、いつ1つの白斑状に集合したのかを調べてみました。 該当する画像は、8月27日の観測報告にありました。 http://alpo-j.asahikawa-med.ac.jp/kk10/j100827z.htm 2010/08/26 16:28UT Akihiro Yamazaki -------------------- 2010/08/27 00:53UT Antonello Medugno 周辺だが、はっきりと2つの白斑が見える。 2010/08/27 13:11UT 菅野清一 条件は良くないが、2つの白斑が見える。 2010/08/27 21:52UT Manos Kardasis 条件は良くなく、斜めに引き伸ばされて見える。 -------------------- 2010/08/28 06:53UT Wayne Jaeschke 2つの白斑は南北に並び、一回り大きな白斑に見える。 その結果、菅野さんの画像が2つの白斑の最後となり、この後かあるいはKardasis氏の観測の後で、1つの白斑に集合したようです。 L2=約270度に観測されたNEBnの2つの白斑のマージですが、実はまだマージの完了が確認されていません。29日のAnthony Wesley氏の画像 では、一回り大きくなった丸い白斑内部に2つの渦が回っている様子を確認できます。このままマージが進行して、完全に1つの横長の白斑に なると思われます。しかし、もしかして再び白斑が分離するかもしれません。 2008年4月に、同様なNTropZの白斑のマージが観測されました。 (この時はNEBの幅が狭く、白斑はNTropZにありました。) http://alpo-j.asahikawa-med.ac.jp/Contents/Report/Jupiter/20080420-NTrZ-Merge.htm Rogers氏は、これについてマージは起こらなかったとレポートしています。 Jupiter in 2008 May (2) Detailed interim report http://www.britastro.org/jupiter/2008report02.htm 該当箇所の日本語訳です。 ■北赤道縞と北熱帯(NEB & NTropZ) 最も重要なことは、4月初めのWSZ前方の2個のAWOの衝突である(L2 ~320)。低解像度画像ではマージしたことを示唆しているけれども、 高解像度画像ではマージしなかったことが分かる。 両方のAWOは接近したときに縮んだ。特に北後方のAWOの南に押しつぶされた南前方のAWOは、その時に分解し、それから消失した。 小さな残った白斑はL2より速くドリフトした。これが、2006年6月に白斑がWSZと会合したときに、まさに起こった出来事である。我々が温帯の 緯度で報告した(Rogers et al., Icarus, 2006b)、AWOのマージに関するパラダイム(模範)は、北熱帯に関して適用できない。実際に、AWOの 真のマージは、この緯度ではかつて記録されたことがない。これらのAWOがなぜ異なって振る舞うのかを理解するために、理論的な研究 が必要である。 この領域の集中観測と、できればメタン画像をお願いします。 ≪京都市山科区 伊賀 祐一≫
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