もう一つのNEBn白斑のマージ(L2=約330度) by Y.Iga


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もう一つのNEBn白斑のマージ(L2=約330度) by Y.Iga


もう一つのNEBn白斑のマージ(L2=約330度) by Y.Iga
Another Merger of white ovals in the NEBn (L2=~330)
by Yuichi Iga

9月中旬に、L2=約330度のNEBnにある白斑に、前方から少し小さな白斑が接近してい
ることに気が付きました。直感的に2つの白斑はマージするだろうと思い、追跡を始
めました。

◆2つの白斑の接近からマージへ

2つの白斑は、9月20日まで順調に距離を縮めています。9月22日、白斑は接近を避け るように、前方の白斑が南に少し移動しました。この接近の様子は23日も続きますが、 大きな動きは見られません。北半球の高気圧性白斑は時計回りの渦で、2つの渦が接 近するとお互いの周りを時計方向に回り込みます。 9月25日、Watson氏の画像では2つの白斑は接していて、マージ直前です。10時間後の 前田氏の画像では、2つの白斑はついにマージして一回り大きな白斑になりました。 しかし、内部には2つの白斑の渦が回転しながら絡み合っている様子がはっきりと見 られます。このまま継続するマージの姿は、26日・27日と続いていました。

◆白斑の分離とマージの終了

9月27日、Parker氏の画像でマージ中の白斑の南部に明るい領域が現れ、その後の 太田氏の画像で明るい領域が白斑として分離を始めました。さらに28日、Dauvergne 氏の画像で白斑は完全に分離し、29日の風本氏の画像では分離した白斑は引き伸ばさ れ、後方に離れています。この後2日間の観測がありませんが、10月02日には、後方 に離れた白斑は消失したか、あるいは白いストリークになりました。一方、前方の 白斑は元の大きさに戻りましたが、白斑はかなり暗くなりました。04日の阿久津氏の 画像でも前方の白斑は暗く、またメタン画像でもほとんど見えなくなりました。 今回の現象について、2つの白斑は実際にはマージすることなく、すれ違っただけと いう見方もあります。確かに25日にマージしてから27日に分離するまでの期間が短く、 その間に2つの渦がどれぐらい回ったのか分かりません。しかし、白斑が分離した後 に両方の白斑の勢力が急速に衰えたことから、2つの白斑の相互作用は大きかったと 考えられます。私は、これもNEBn白斑のマージのパターンの一つと考えています。

◆前回のNEBn白斑のマージ(L2=約270度)

今シーズンの最初に観測されたこの緯度のマージ現象は、8月28日にL2=約270度で 接近していたNEBnの2つの白斑がマージし、1つの白斑になりました。しかし、マージ はすぐに終わるのではなくて、2つの渦がお互いの周りを時計方向に回り続けている 様子が観測されました。そして、7日後の9月4日には、マージによって一回り大きく なった白斑から、小白斑が後方に分離していく様子もとらえられました。この分離に よって、マージ後に不安定だった白斑は、安定なサイズになったと考えられます。 ・NEBnの白斑のマージ
http://alpo-j.asahikawa-med.ac.jp/kk10/j100831r.htm ・NEBn白斑のマージのその後 http://alpo-j.asahikawa-med.ac.jp/kk10/j100905r.htm

◆考察

今回のNEBn白斑同士のマージも、8月末に観測されたマージと同様なプロセスを示し ました。過去にもNEBn白斑のマージは観測されていますが、これほど高解像度画像で、 しかも連続した観測で追跡されたことはありません。 これまでは、2つの白斑が接近すると、時計回りに回避する動きを示した後に、1つの 白斑にマージし、一回り大きな白斑になることは知られていました。 この解析では、マージした直後の白斑の内部に暗条が見られ、しかも回転する様子が とらえられました。これは、マージはすぐに完了するのではなくて、2つの白斑の渦 が混じり合うことなく、お互いの周りを回り続けている姿でした。 さらに、マージによって一回り大きくなった白斑は、2日あるいは7日後に白斑が分離 する様子がとらえられました。これは、マージによって不安定になった白斑は、白斑 を分離することで、この緯度で安定するサイズになったと考えられます。また、これ まで考えていたよりもマージの活動期間は長いようです。 8月末のマージはほぼ同じサイズの白斑同士で起こりましたが、今回のマージは前方 の白斑がやや小さなサイズでした。この白斑の大きさの違いが、マージ期間の長さに 影響を与えた可能性もありますが、詳しいことは分かりません。

◆謝辞

今夏の猛暑がもたらしてくれた良気流と、それを逃さずとらえた全世界の観測者に 感謝します。 ≪京都市山科区 伊賀 祐一≫

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