夕暮れの空で火星、土星、木星の3大惑星が輝いています。 木星は西南天低くなり、観測シーズンはほぼ終了です。 土星も木星の後を追うように高度を下げています。 火星はまだ明るいものの、地球から遠ざかりつつあります。
ここでは9月半ばから10月初めにかけての惑星面についてまとめます。 この記事中の日時は、すべて世界時(UT)となっています。
10月に入り、視直径は約15秒になりました。 Lsは260°を越え、まもなく秋分を迎えます。 地球から離れつつあり、望遠鏡で見ると右が欠けて楕円形に見えます。
火星全面に広がった大ダストストームは時間とともに次第に淡くなってきています。 夏の良い気流の時期が短く、今シーズンの観測は残念な結果になりました。 しかし、火星面には新しい模様の出現など大きな変化がありました。 視直径は小さくなったものの、一方では模様が見やすくなっています。 しかし、ノーマルな火星面と比べると、まだ60%くらいに感じます。 本当に晴れた火星面を見るのは、まだ先になりそうです。
南極冠は順調に縮小を続けています。 Ausoniaの南の冷気の吹き出し部は、今月も同じ傾向を続けていて、この部分より北側は晴れ渡った姿が見られます。 画像では黒っぽく写ります。 縮小した南極冠にはミッチェル山が見えるようになり、9月27日には南極冠から分離した見え方になりました(図1)。
南極冠本体はずいぶん小さくなり、最大時の1/3くらいになりました。 10月初旬にはMare Cimmeriu側から見ると、非常に見えにくくなっています。 南極冠が偏心してできているためです。 これからはますます顕著になるでしょう。
10月1日にMare Sirenumの南方にある南極冠の縁で地域的なダストストームが発生しました(図2)。 この位置は、南極冠からの冷気の吹き出し口にあたります。 地域的なダストストームですが、またしてもこの部分で発生しました。 収まりかけては発生するため、南半球のダストストームがなかなか収まらない原因の一つとなっています。 発生翌日の2日には偏西風に流され、Mare Cimmeriumの南端付近に達しました。 さらに、3日にはその西まで移動しました。 これから南半球中緯度に広がっていくものと思われます。
Syrtis Majorが細く淡く見えています。 尖った部分がダストストームに覆われているか、堆積物によって覆われたかによるものでしょう(図3)。
火星面は、まだまだ変化がこります。 年末に向けて地平高度も上がってきます。まだまだ目ははなせません。
[図1] 南極冠から分離したミッチェル山 |
南極冠の左に白く見えるのがミッチェル山。気流が良いと眼視でもよく見える。撮像:熊森照明氏(大阪府、35cm) |
[図2] Sirenum南方のダストストーム |
南極冠の左下にある白い領域が、ダストストーム。撮像:ギャリー・ウォルカー氏(米国、30cm) |
[図3] 細くなったSyrtis Major |
中央から下に向かって突き出した暗い領域がSyrtis Major。10月初旬もこの傾向が続いている。撮像:マイク・フッド氏(米国、20cm) |
今月も木星は穏やかで、大きな変化はありませんでした。 赤道帯(EZ)は薄暗い状態が続いていて、特に北半分は黄色っぽくなっています。 北半球の北熱帯(NTrZ)や北温帯(NTZ)も薄暗いため、ゾーンでは南熱帯(STrZ)が最も明るく、オレンジ色の大赤斑(GRS)がとてもよく目立ちます。 経度は9月に3°以上後退してII=296°になりました。 大赤斑固有の90日周期の振動運動に対応した動きですが、予想より大きな後退量です。 大赤斑の後退運動は、南熱帯攪乱(S. Tropical Disturbance)との会合で鈍っていたので、今回の変化は攪乱の影響が完全になくなったことを示しているのかもしれません。
大赤斑の南方にある南極地方(SPR)の2つの白斑は、8月下旬に約10°まで接近した後、前方の白斑が加速、後方の白斑が減速して、結局合体しませんでした。 今シーズンは予想外の白斑の合体が続いたのですが、今回は逆の結果になりました。
永続白斑BAはII=335°と、大赤斑の後方40°に近づいています。 年末には大赤斑の南を通過するでしょう。 南南温帯縞(SSTB)では、高気圧性小白斑(AWO)の一群が大赤斑の南を通過中です。 接近したA1とA2の間には低気圧性の白斑(CWO)が新たに出現しました。 A1-CWO-A2の3つの白斑が並んだ様子は、2014年に話題になった「ミッキーマウス」の再来を思わせます。
[図4] 大赤斑の後方に迫る永続白斑BA |
南側のSSTBにはミッキーマウスのように並んだ白斑が見られる。撮像:クライド・フォスター氏(南アフリカ、35cm) |
土星のPolar Stormは現在も活動を続けていて、2つの明部は9月半ばにIII=130°付近でまたもや会合しました。 16日のマクドナルド氏(B. Macdonald、米国)の画像には、AとBの2つの明部が並んで写っています。 明部Aは現在も1日当たり-11.6°という高速で前進を続けている一方、明部Bは減速して、体系IIIに対してほとんど停滞しています。
10月号でふれた赤道帯(EZ)の白斑は、その後も観測されていて、10月1日のエナケ氏(P. Enache、ブラジル)の画像で、I=10°付近にあります。 これまでの観測を整理すると、体系Iに対して1日当たり-3.8°の割合で前進しています。
[図5] Polar Stormの会合 |
2つの明部、AとBが並んでいる。周囲にもモヤモヤとした明暗が見られる。撮像:ブルース・マクドナルド氏(米国、35cm) |
前号へ | INDEXへ | 次号へ |