梅雨の悪天が続きますが、夕暮れの空では金星と火星が接近しています。 しかし、光度差が大きいため、眺めて楽しむのは少々難しいようです。 明け方の空では土星が6月18日に留となり、見ごろとなっています。 木星もずいぶん高く昇るようになりました。
ここでは7月初めまでの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。
条件が良くなり、木星面の詳しい様子がわかってきました。 大赤斑(GRS)は前後に淡いすじ(ブリッジ)が伸びていますが、鮮やかなオレンジ色に変化はありません。 経度は6月中に後退してII=38°です。 後方では南赤道縞(SEB)の白雲領域であるpost-GRS disturbanceが活動的で、30〜40°に渡って白斑や青黒い暗柱で乱れています。
さらに後方のSEBは、この数年とは様相が一変し、100°以上に渡って真っ暗になりました。 このような時期には、mid-SEB outbreakという攪乱活動が起こりやすくなります。 近年では、2016年末から2017年にかけて大規模な活動がありました。 今年は注意が必要と思われます。
SEB南縁には大型のリングが多数並んで、大赤斑に向かって後退しています。 6月末から順次、赤斑湾(RS bay)に進入していますが、今のところ目立つフレークは発生していません。
4月に短期間活動したフック(準循環気流)により形成された南熱帯紐(STrB)は、南温帯縞(STB)の北側に沿う細い組織として残っています。 5月からの先端のドリフトは1日当たり-2.8°で、前月号の見積もり(-2.0°)より大きく、先シーズンの活動と同程度のスピードです。 どこかの時点で加速したのかもしれません。
II=105°にある永続白斑BAの前後には、STBが長く伸びていて、全長は木星面の約半周に及びます。 BAの反対側、II=305°には青いフィラメント模様を伴った白斑が見られます。 これは昨シーズンに濃い暗斑として目を引いた「spot #8」が変化したものです。 spot #8は今年初めに消失したWS6と同様、白斑化したようです。
南南温帯縞(SSTB)には今シーズンも7個の高気圧的白斑(AWO)が見られます。 A1/A3/A7/A8は暗い縁取りがあり明瞭ですが、BAの南を通過中のA2はとても不明瞭です。
北赤道縞(NEB)ではII=200°台で活発なリフト(乱れた白雲領域)活動が見られます。 北熱帯(NTrZ)には明るい白斑が4個見られます。 長命な白斑WSZはII=265°にあり、NEB北縁に大きな湾入を作っています。 NEB北縁の局所的な拡幅は前半部分が明るくなり、WSZの前方約50°に短くなりましたが、後方でNEB北縁が厚みを増しています。
北温帯縞(NTB)は、実質的に消失しています。 3年ぶりとなるNTBs jetstream outbreakの発生に要注意です。
[図1] 大赤斑とSEB南縁のリング |
RS bay内に進入したリングと、進入直前のリングが見える。大赤斑の右下をイオの影が経過中。撮像:宮崎勲氏(沖縄県、40cm) |
[図2] NEBの局所的拡幅区間 |
中央から右側でNEBが幅広い。右端の大きな湾入はWSZ。昨年のループ模様がNEB内部の明部として見える。撮像:鈴木邦彦氏(神奈川県、19cm) |
土星面は静かで環にも異常は見られません。 高解像度の画像では、小白斑などが捉えられていますが、追跡できるものはありません。
土星の傾きが小さくなり、周辺に衛星が写り込むようになっています。 内側を回る衛星のいくつかは土星面を経過するようになり、 エンケラドゥス、テティス、ディオネの経過が度々捉えられています。 ただし、これらの衛星はとても小さいので、撮像にはかなりの好条件と解像度が求められます。
[図3] テティスの土星面経過 |
白線で示した先に経過中のテティスが見える。右の白点が衛星本体、左の黒点がその影である。赤外画像。撮像:阿久津富夫氏(フィリピン、45cm) |
火星はずいぶん遠ざかりましたが、画像ではまだ模様が捉えられています。 6月17日には、森田光治氏(滋賀県)と伊藤了史氏(愛知県)が、北極冠の近くにダストストームを記録しました。 視直径4秒台でダストストームを観測というのは、昔と比べると脅威的です。
観測シーズンはほぼ終わりましたので、シーズンを振り返っておきたいと思います。 それぞれの詳しい状況は、月惑星研究会のWebサイトで確認してください。
[図4] 北極冠のエッジダストストーム |
矢印の先に上を向いたアーチ状のダストの雲が白く見える。撮像:ティジャーノ・オリベッティー氏(タイ、50cm) |
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