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木星面で過去60年間観測されていた、STB(南温帯縞)の3個の永続白斑がついに1個になる現象が見られました。
最初の白斑の合体 BC + DE -> BE (1998年3月)3個の永続白斑は1940年頃に出現し、当初は90°の長さの明部でした。その後次第に長さが短くなり、BC,DE,FAと呼ばれる3個の白斑として、1960-70年代には小口径の望遠鏡でもよく目立っていました。 その後も白斑は長さが縮小するとともに、白斑同士の距離が接近し、1998年3月にはBCとDEが合体(マージ)し、BEと呼ばれる一つの白斑になりました。この時期は木星が太陽の近くにあり、残念ながらBEが合体する過程を観測することはできませんでした。 今回の合体 BE + FA -> BA (2000年3月)BEとFAは、その後もさらに接近を続け、ついに2000年3月に一つの白斑に合体しました。このBEとFAが合体する様子は、30cmクラス以上の望遠鏡によるCCD(冷却CCD、デジタルカメラ、デジタルビデオ)によって克明にとらえることができました。 右図は特殊な経度(体系III)について展開図を作成したものです。 1999年7-10月には、BEとFAの間に反対周りの渦である小白斑ができ、3個の白斑は並んで前進し、その距離を13°まで縮めていました。10月末から、白斑は順次大赤斑を通過しましたが、白斑の距離は16°まで開き、また12月には白斑の間の小白斑は消失したようです。 |
図1 BEとFAの接近から合体までの展開図 池村俊彦氏(名古屋市)の30cm反射+デジタルカメラNEC PICONAによる画像から独自ソフトで展開図を作成。上が南。(画像を拡大) |
合体の詳細2000年1月から再び白斑の接近が始まり、1月末には13°、2月末には10°に接近しました。BEとFAの大きさはそれぞれ10°と6°ですから、中心距離が8°まで接近する2000年3月には、渦同士が接触することになり合体が見られるのではと予想されていました。3月10日には10°、3月15日には8.5°、3月20日には7°まで接近し、この日を最後として、3月27日には一つの白斑に合体した様子がとらえられました。 合体の様子は高山に位置するNASAのIRTF望遠鏡(ハワイ・マウナケア)の赤外画像(4.78μm)やPic du Midi天文台の近赤外やメタンバンド(0.89μm)での画像で追跡されています。これらの画像からは接近した2つの白斑は、3月17日頃からお互いの周りを反時計回りに回転し、3月21日に一つに合体したようです。 |
図2 BEとFAの距離の変化 大赤斑を通過する際に一度距離は開いたが、2000年1月から急速に接近を続け、3月21日頃に合体したようだ。(画像を拡大) |
60年間も継続した3個の白斑が、合体を繰り返して一つの白斑になった事実から、170年以上も存在している木星面で最大の渦である大赤斑の長寿のメカニズムに迫ることができるかもしれません。そして、その大赤斑も決して永遠ではないということかもしれません。