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天文ガイド 2001年1月号
 
『木星観測のポイント』
木星の表面模様とは |  近年に観測された現象 |  代表的な模様と観測のポイント

木星の表面模様とは

木星は、直径が地球の11倍もある巨大なガスでできた惑星です。火星の場合は直接に表面の模様を見ることができますが、木星の場合は木星を厚くおおっている雲を見ることになります。木星の自転は10時間弱とかなり速く、またボイジャー探査機の測定から緯度によって東西方向の気流に大きな速度差があることが分っています。これらのことから、木星の雲は何本もの赤道に平行な帯状の模様として見えます。白く見えている高度の高い雲は低気圧性で、帯(zone)と呼びます。暗く見えているさらに低い雲は高気圧性で、縞(belt)と呼びます。図1のように、帯と縞は交互に並び、緯度によってそれぞれの名前が付けられています。

図1 木星の模様 2000年9月9日 18h32m(UT)、撮影:前田和義氏
STrZの中央に大赤斑が見える。


また、木星の模様には地球の台風のような渦が数多く見られます。皆さんが良く知っているオレンジ色の大赤斑は、300年以上も続いている巨大な渦で、その大きさは地球2個分にも相当します。南温帯縞にある永続白斑は60年間も続いている3個の渦でしたが、1998年3月にはそのうちの2個が合体し、さらに2000年3月には残った白斑同士が合体して、1個の白斑'BA'となってしまいました。これ以外にも数年の寿命を持つ白斑や暗斑や、数ヶ月という短命な渦も数多く見られます。このように木星の模様は、定常的に見られる帯や縞が濃くなったり淡くなったりする現象と、大赤斑に代表される暗斑や白斑による現象を観測することになります。また、南赤道縞撹乱(disturbance)や南熱帯撹乱といった突発的な現象が発生すると、全周に渡って激しい変化を示します。この現象は木星観測の醍醐味といって良いでしょう。

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近年に観測された現象

木星にはどのような模様の変化が起こっているのかを、近年に見られたトピックスで紹介しましょう。

1996年

1997年

1998年

1999-2000年

2000-2001年

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代表的な模様と観測のポイント

次に、代表的な模様についての特徴と、これからの観測のポイントを説明しましょう。

●大赤斑(GRS)

オレンジ色の横長の楕円形をしている、木星面上で最も有名な模様です。本体が淡化して、大赤斑孔だけが見えることもあります(最近では1991年)。ここ2-3年は南半分のコアだけしか見えず、少々物足りない感じでしたが、今年はオレンジ色が濃くなってきました。大赤斑はSTrZ-SEBの気流にあるために、大赤斑周辺の気流は複雑になっています。STrZやSEBsに暗斑や白斑が出現している場合は気流の解析を行う良い機会です。

●永続白斑(LEBS)

図2 2000年10月10日 15h52m(UT) 撮影:池村俊彦氏
STBの白斑BAが見える。

1939年頃に形成された3個のSTBの永続白斑は、1998年3月にBAとDEが合体してBEができ、さらに2000年3月にはついにBEとFAが合体して、1個の白斑BAができました。永続すると考えられていた白斑が、渦どうしの合体を繰り返すという希な現象を観測することができましたが、これから残ったBAがどのような変化を示すのか興味深いところです。

●南赤道縞(SEB)

図3 2000年10月1日 20h17m(UT) 撮影:永長英夫氏
SEBsの暗斑が目立ち、SEBは中央部が淡化している。

SEBは濃化と淡化を繰り返している太いベルトです。木星面上で最も活動的な現象である南赤道縞撹乱(SEB Disturbance)は、SEBが濃いベルトに復活する劇的な現象です。SEBが淡化している時に、1本の暗柱と白斑が出現し、その発生源から次々と暗柱がSEBを後退していきます。同時に、暗斑群がSEBsを後退するとともに、SEBnをも前進し、ほぼ2-3ヶ月で全周に波及してSEBは濃化します。1919年の最初の観測から、1928, 1938, 1943-58(3年毎に発生), 1962, 1964, 1971, 1975, 1990, 1993年と15回の発生が観測されています。2次的な撹乱も1943, 1971, 1975, 1990年に発生しました。濃化したSEBはその後淡化して、新しいサイクルに入ります。今年はSEBの中央部の淡化が顕著で、次第にSEB全体は淡化する傾向にありますので、これからの数年間は撹乱の発生に向けて期待が高まります。

●北赤道縞(NEB)

SEBとともに太く目立つベルトです。南縁のNEBsからEZnに向けて、青暗いフェストーンが多く見られます。NEBは太い1本のベルトの時期から、内部に白いリフト構造が見られる時期を経て、2本のベルトになる時期があります。それに伴ってNEBの幅は、北に広がった太い状態から、NEBnにバルジやノッチが見られる状態を経て、北半分が淡化した細い状態が周期的に繰り返しています。今年のNEBは、リフト構造が活発で、次第に北への拡幅が始まっています。

図4 2000年9月上旬の展開図

撮影:池村俊彦、永長英夫、河原義則、前田和義(画像を拡大)


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