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初めて買った望遠鏡を、誰もが月や惑星に向けて、とても小さいけれど、その美しい姿に感動を覚えていませんか。 探査機の画像はきれいですが、望遠鏡を使って、自分の目で、生の惑星を見ると感激します。 シーイングでゆらいでいるけれども、そこにかすかな模様が見えると、別世界が広がります。 双眼鏡でもいいし、小口径の望遠鏡でもいいし、木星に向けると、とにかくいろんな楽しみ方があります。 夜の8時ごろ、東の空に木星が昇ってきています。 ちょうど衝が4月4日で、これから3ヶ月ほどの期間は木星観測の絶好期をむかえます。 |
カッシーニ探査機による木星 2000/12/12、画像:NASA/JPL(画像を拡大) |
2005年4月15日 20時の東の空 (画像を拡大) 左上:25cm反射による木星 2005/01/27 永長英夫(兵庫県) |
木星には4個の明るい「ガリレオ衛星」があります。これらは1610年にガリレオ・ガリレイが、天体の周りを公転する初めての天体として発見したものです。内側からイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストと呼ばれ、大きさは地球の月や水星ぐらいで、明るさは5-6等級です。双眼鏡でも簡単に見ることができますから、ガリレオの気分を体験しましょう(双眼鏡は三脚に固定します)。
望遠鏡を使ってガリレオ衛星を観察すると、2-3時間のうちに衛星が移動するのが分かります。内側の軌道を回っているイオやエウロパの動きは速く、外側のガニメデやカリストは思っているよりも木星から離れて感じます。グラフ用紙に木星の大きさを基準に、衛星の位置を記録していくと、衛星が木星の周りを公転する様子が浮かび上がってきます。ガニメデは太陽系で最大の大きさの衛星なので、慣れてくると衛星の色や大きさから名前が見分けられるようになるでしょう。 |
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ガリレオ衛星が木星の周りを公転すると、衛星が木星の表面を横切ったり(経過)、背後に隠れたり(掩蔽)、木星の影に入ったり(食)、逆に衛星の影が木星に写ったり(影の経過)、といろいろと楽しむことができます。天文年鑑には、衛星の運行図と合わせて、これらの食現象が掲載されています。下の画像には、イオ、エウロパ、カリストの3個の衛星の影が写っています。同時に2個の影はたまに見ることはありますが、3個同時というのは貴重な現象です。しかも、右側の2個の影の真ん中にはイオ本体の経過も写っています。ところで、この衛星の影の中から見ていると、実は日食が起こっているのです。
イオ、エウロパ、カリストの影の競演 2003/01/17 23h39mUT D.Peach(英国) |
ガリレオ衛星はほぼ木星の赤道面を回っていますので、ちょうど真横から見ていると衛星どうしが重なることがあります。その重なり方にも、衛星が他の衛星の背後に隠れたり(掩蔽)、衛星が他の衛星の影に入ったり(食)します。下の画像は、イオがカリストの背後に隠れる現象をとらえています。このような条件がそろうのは、木星の公転周期11.8年の半分である6年毎のことです。
カリストによるイオの掩蔽 2003/01/18 11h56mUT, 12h36mUT, 13h03mUT 米山誠一(横浜市) |
木星にはたくさんの縞模様を見ることができます。縞(Belt)という暗い模様と、帯(Zone)という明るい模様が、赤道に平行に交互に並んでいます。それぞれには緯度による赤道・熱帯・温帯・極という気象用語で名前が付いています。これらの縞模様の何本が見えますか?
木星の模様の名前 |
なぜ、木星には赤道に平行な縞模様ができているのでしょうか。木星は巨大でありながら、10時間弱という短い周期で自転をしています。そのために、東西方向だけのジェット気流が大きくなるからです。そして緯度によってその気流の速度差が大きく、境界では乱流や渦が生じて、複雑な模様を見せてくれます。
カッシーニによる木星の展開図 2000/10/31-11/09(画像を拡大) |
木星でもっとも有名な模様は大赤斑です。大赤斑は300年前から観測されていて、地球の大きさの2倍もあるような巨大な渦です。色はオレンジ色をした横長の楕円の形です。それでも、大赤斑がいつでも見えるわけではありません。木星は10時間弱で自転していますので、模様は1時間で36度も移動していきます。しばらく観察することで、模様がゆっくりと自転することが楽しめます。衝の時に一晩がんばれば、木星の全周を見ることもできます。
大赤斑は小口径の望遠鏡でも見えやすい模様です。表に示す時間の前後30分以内であれば、大赤斑を見るチャンスです。
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【5cm】 焦点距離が長く、倍率がかけられる良い光学系でないと、模様までの観望はかなり難しい作業です。低くても100倍は欲しいところです。木星本体にベルト(縞模様)が何本か見えます。また、極地方や、ベルトとベルトの間が暗く見えるところもあります。大赤斑は、ベルトのくぼみに淡く見ることができるでしょう。 | |
【10cm】 焦点距離の長いものを選びましょう。倍率は150倍は欲しいところです。5cmと比べると光量がありますから、見やすくなるでしょう。主な模様はほとんど見ることができます。衛星の本体が木星面を経過して行く様子や、木星面に映った衛星の影もはっきりと見えるようになります。 | |
【15cm】 本格的な観測が可能となります。ある程度細かな模様を見ることができます。今シーズンなら、大赤斑の色もはっきり分かるようになるでしょう。この口径までは、地上付近の悪気流の影響を受けにくく、安定した観測ができます。 | |
【20cm】 模様の細部まできちんと見ることができ、光量が多くなり、色もはっきりしてきます。ベルトのオレンジ色や、赤道付近の青っぽい模様。さらに、赤味がかった大赤斑の様子など、しっかりした観測ができます。口径が大きくなるほど色彩がはっきりしてきれいな像を見ることができますが、反面、地上付近の悪気流の影響などを受けやすくなり、安定した気流での観測日数は大きく減っていきます。 |
観望会を行い、木星や土星を見ていただくことが良くありますが、ほとんどの方は、覗いている時間はほんの数秒です。なんともったいないことでしょうか!でも、時々望遠鏡を覗いたまま離れない人も…。せっかくですから、次のような点に気をつけて、納得するまで見て下さい。
できれば、見たことをその日のうちに記録に残すようにすると、良い思い出になるでしょうね。
夕方の西空に目を向けると、ふたご座に土星がいます。土星の衝は1月14日でしたが、実はまだ木星よりも高度は高いのです。
探査機の画像もきれいですが、実際に望遠鏡でのぞいてみましょう。小望遠鏡でもリングがはっきりと見えます。感動ですよ。
2005年4月15日 20時の西の空 右上は31cmによる土星 2004年11月23日 画像:風本 明(京都市、31cm反射)(画像を拡大) |
NASAのカッシーニ探査機は、今後も4年間にわたって土星を周回しながら、すばらしい画像を送ることになっています。
2003年3月7日にハッブル望遠鏡が可視光で撮影。 画像:NASA/JPL(画像を拡大) |