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池村俊彦氏(名古屋市)が、土星の南極の周辺であるSSTZ(南南温帯)が赤くなっていることを指摘されています。昨シーズンは、青緑系の色調であったことから、非常に目につく大きな変化です。現象は2004年11月頃から始まっているようで、次第にSSTZの赤みは強くなっています。
SSTZが赤く観測されたのは、1999年秋以来の5年ぶりのことです(右下)。この時の池村氏の報告を、惑星の近況に掲載しています。それによると、半年をかけて赤みが増し、その後半年で元に戻っています。この現象はHubble Heritage Project(http://heritage.stsci.edu/2001/15/index.html)の画像で確認できます。
土星は、太陽から受け取ったエネルギーの2倍ほどを内部から放出しています。赤道付近は強い東西のジェット気流に支配されていますが、高緯度地方はどうなっているのか分かっていません。土星の地軸の傾きの関係で、この数年間は南半球を観測するには適していたと言えるでしょう。
土星の南極高緯度SSTZが赤い 画像:池村俊彦氏(31cm反射)、熊森照明氏(60cmカセグレイン)(画像を拡大) |
柚木健吉氏(堺市)は、土星の衝の前日である1月13日UTに撮影した土星のBリングが、非常に明るいことを報告され、これが衝効果と呼ばれる現象であることを明らかにしました。土星本体の明るさと比較すると、衝ではBリングは本体よりもはるかに明るく観測されました。
土星のBリングの衝効果 画像:柚木健吉氏(20cm反射)(画像を拡大) |
衝には、太陽光線が真正面から当たり、リングを構成している粒子どうしの影が全くできないので、明るく見えるというのが衝効果(opposition effect)です。惑星ガイドブック2(誠文堂新光社)ではハイリゲインシャイン効果と紹介されていますが、こちらは水滴や氷塊によるハロー反射を指すので、衝効果が正しい表現だと思われます。これまでは錯覚ではないかと思われていましたが、きちんとした衝効果が証明されたことになります。
さて、今年の衝は太陽-地球-土星が一直線に並ぶ特殊な条件だったのですが、それで衝効果が確認できたのでしょうか。永長英夫氏(兵庫県)は、1999年から2004年までの5シーズンに渡って、衝の頃とその前後の画像を比較しています。各シーズンともBリングの明るさは、通常は本体と同じかやや暗いのに対し、衝の頃は明らかに輝度が本体を上回っています。つまり、衝効果は、今回だけの特殊な条件ではなく、リングが開いている際にはいつも観測できる現象のようです。
1999-2004年に見られた衝効果 画像:永長英夫氏(25cm反射)(画像を拡大) |