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2005年2月18日の木星 画像:Zac Pujic(オーストラリア、31cm反射)(画像を拡大) |
2000年11月26日 観測:安達 誠(31cm反射) |
表面模様を観測するとなると、望遠鏡の倍率を高くすることが必要になります。縞模様だけなら100倍でも大丈夫ですが、大赤斑などの模様を見るためには150倍以上の倍率を必要とします。できれば200倍は欲しいものです。しかし、口径が小さいと光量が不足して、暗くて何を見ているか分からなくなるので、口径に応じた倍率を選びましょう。アイピースによっても見え方が大きく変わります。
スケッチには紙と鉛筆が必要ですが、苦労するのがスケッチ用紙でしょう。木星は14:15のだ円形をしていますから、パソコンで作図するか、書籍のスケッチ用紙をコピーします。コピー用紙はきめが細かく、初心者には描きにくいと思います。もう少しざらつきのある紙に印刷するのが適当でしょう。鉛筆は2Bが扱いやすいでしょう。描く時はぴんと尖った状態ではなく、やや先を丸めたものが使いやすいです。
「ゆらめく木星」木星は、視野の中をゆらめきながら日周運動で動いていきます。ゆらゆらとゆらめくのは空気の流れのいたずらです。上空のジェット気流によるものから、望遠鏡周辺の熱源まで原因はいろいろです。なるべく気流の落ち着いた時に観測するようにしたいものですが、ゆらめきのない木星を見るのはなかなか大変です。少しでも熱源のないところを観測場所に選びましょう。 低倍率で木星を視野に導入したら、高倍率に変更します。ピントを合わせて、何が見えているか、ベルトは何本あって、どれくらいの太さか、大赤斑のような模様は見えないかなど、気持ちを落ち着けてしっかり見極めて下さい。 「何枚か描いてみよう」ぼんやり見ていても、様子はつかめません。まずは、一度スケッチ用紙に書き込んでみましょう。いざ描いてみようと思うと、なかなか描けないものです。練習はとても効果があります。気に入ったスケッチや良く撮れた画像をお手本に練習しましょう。非常に早く上達します。
こういった点に注意して練習すると、めきめき上達します。何枚か練習したら、本物をみて観測しましょう。 |
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(1) ベルトの位置や太さを記録する
(2) 大きな模様の位置を記録
(3) 時刻の記入
(4) 細部の記録
(5) 仕上げ
(4)までの作業で25分。仕上げに10分はかかります。慣れてくるともっと早くなります。木星は自転が早いため、10分でかなり位置が変わります。時間を記入した時に見えた位置に戻して記録するようにします。スケッチがすんだらデータを計算して下さい。天文年鑑に計算方法がでています。
スケッチを元に展開図を作ります。経度を表したネットをコピーして使います。透明なシートにコピーできない時は、何枚かコピーして必要な緯度で切り取り、スケッチに合わせて読みとります。
展開図に位置を合わせながら記入します。仕上げはスケッチと同じです。時間のたったスケッチを使うと、経度方向に長い展開図を作成する事ができます。何本か並べると変化の様子が手に取るように分かります。
1993年の南赤道縞撹乱の展開図(作成:安達 誠) 大赤斑前方の暗柱から東西に急速に拡大する様子が分かる。(画像を拡大) |
色鉛筆を使ってカラースケッチをするのも、よい記録になります。大赤斑やフェスト?ン(赤道帯にできた青黒い紐のような模様)、赤道縞のオレンジ色など、部分的でも色に気をつけて着色するのは楽しい作業です。
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ToUcam PROによる木星 画像:永長英夫氏(25cm反射)(観測画像) |
木星を画像として記録するためには、古くはTri-Xを始めとする銀塩フィルムによるコンポジット法や3色合成法などの特殊な技術を駆使して行ってきました。IT時代の今では、デジタル機器を使用して、惑星観測を行うのはそんなに難しいことではありません。使用できる機材は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、WEBカメラ、冷却CCDカメラなど、種類も豊富です。得られた惑星画像を、パソコンで処理すると、驚くほど簡単にきれいな画像を手に入れることができます。
デジタルカメラや、もしくは携帯電話のカメラを、手持ちで望遠鏡のアイピースにくっつけても、簡単に木星の姿を写すことはできますが、像がぶれていたり、小さな像しか得られないでしょう。やはり専用のアダプターを使って、しっかりと望遠鏡に固定する必要があります。
ただ最近の傾向として、デジタルカメラは天体撮影用に普及しているのに、惑星用には使われなくなりつつあります。それはデジタルビデオ、あるいはWEBカメラを用いた動画による撮影が惑星観測には有利であるからです。
WEBカメラ(PHILIPS社 ToUcam PROシリーズ) |
WEBカメラは、パソコンでのテレビ電話などで普及していますが、感度の高いCCDを搭載したものが惑星観測にむいています。これには主にPHILIPS社のToUcam PROシリーズぐらいしか見当たりません。価格は20000円程度ですが、インターネットで注文するか、国内の代理店から購入できます。同時に望遠鏡取り付けアダプターも販売されています。
光映舎 | |
スターベース | |
アダプターを自作しようというのであれば、以下のWEB記事をご覧ください。 | |
ToUcamで撮影するとAVI形式の動画ファイルがパソコンにできます。2分間の露出では、15フレーム/秒とすると、実に1800フレームもの画像が得られます。これらの大量の動画像から、大気のゆらぎの影響が少ない良像を選び出すことは大変です。この難しい処理を一手に引き受けてくれるのがRegistax V3です。
Registax は、Cor Berrevoets氏(オランダ)が2002年から公開しているフリーウェアです(現在はバージョン3として、http://registax.astronomy.net/からダウンロードできます)。多くの画像から自動的に良像を判定し、その位置合わせを行い、そして良像だけをスタック(コンポジット処理)してくれます。こうして得られた滑らかなノイズのないスタック画像から、さらにウェーブレット(wavelet)画像処理を行うことで、驚くような高解像度の惑星画像が得られます。
画像処理ソフトRegistax V3 ウェーブレット画像処理を適用(画像を拡大) |
Registaxによる画像処理 画像:永長英夫氏(25cm反射)(画像を拡大) |
木星や土星などの惑星を観測することは、惑星の大気を見ることになります。きれいなカラー画像だけではなく、大気の特徴を探るために様々な波長で惑星を撮影することをお薦めします。例えば、メタンバンド(893nm)だけを通過する干渉フィルターで木星を撮影すると、大赤斑やSTBの白斑が明るく写ります。これらの模様が、木星大気の高層まで吹き上げている現象であることが理解できます。
近赤外とメタンバンドの木星 画像:阿久津富夫氏(32cm反射) |
ATKカメラを望遠鏡に装着したところ 提供:阿久津富夫氏(画像を拡大) |
これまでは、このようなフィルター観測は冷却CCDでしか観測できませんでしたが、AtiK Instruments (http://www.atik-instruments.com/) から、より高感度のモノクロCCDを搭載したWEBカメラが販売されています。価格は6-7万円ぐらいです。仕組みはWEBカメラと全く同じですが、長時間露出が可能になっています(パラレルポートが別途必要)。もちろん、このカメラではディープ・スカイもOKです。