月惑星研究会関西支部例会・支部通信 No.55

2008年1月27日

 今日は、2008年最初の例会となった。昨年11月に行われた木星会議での、話し合いを受け、一気に行動の起こったHPの統合の問題について、本部の了解と支部の了解のもと、伊賀さんが作成され、池村さんの点検など、検討が進み、着実に前に進むようになって来ました。本年は月惑星研究会にとって大切な節目になる年になったと思います。

 また、今日は久しぶりにビジター(神戸からお越しになった女性)の参加がありました。

安達 誠

参加者
安達・薄出・柚木・伊賀・福井・林・風本・畑中・奥田
松尾(ビジター)  以上10名
例会集合写真

参加者(9名、左から): 安達、風本、畑中、奥田、伊賀、福井、薄出、柚木、林

(画像をクリックすると大きく表示)

近況報告

安達
今は火星の観測を行っている、土星はまったく見ていない。仕事が忙しく、家には寝に帰っているだけの状態。1月30日から花山天文台の申請が通ったので、林さんと一緒に観測をするつもりだ。
薄出
冬眠していたので撮影できていないが、暖かくなったら撮影したい。3年間の冬眠期間中、ドームが痛んできている。木の部分が腐ってきており、雨漏りがひどく床もびしょびしょになっていた。これから修理をしないといけない状態である。観測以前の問題で、悩んでいる。(だれかドーム用の河童を開発してあげてください。by:A)
柚木
昨年の11月から12月の画像がよくない、光学系の問題が原因のようだ。鏡筒を回転したら像のためにはよくないということだったが、回転したためやはりだめになってしまった。調整してましになった。光軸を追い込むのがなかなか大変だ。昨日は土星を撮ったが、対象が変わるとそのたびに光学系の調整が大変になっている。
伊賀
昨年の木星会議のあとWebページを一新しようとがんばってきたが、ほぼ出来上がったと思っている。せっかく皆さんに公開して意見を求めようとしているのに、あんまり反応がなく残念に思っている。英語版も出来上がった。海外の人が最初に入るページは、英語版から入っていただくようにできればどうかと思っている。音声入力を使いながら、なんとかここまでがんばった。スタイルシートを多用して作ってきた。
今日は、木星の初観測のことや、土星について。メセンジャーのことを少し。金星のことを用意してきた。
福井
木星会議に出席した。2007年の終わりは木星は低くなったが、意地で最後までがんばった。年が明けて16日に初観測を行った。処理をしたら模様が出てきて驚いた。起きてすぐだったので、観測できてよかった。火星はマンションのベランダからは見えない。移動観測を2回くらいやってみたが、車の震動がひどく大変だった。
今年に入っても火星の観測をしたように思う。京都は天候が悪い。先々週に柚木さんのところで新年会を行って、刺激を受けてきた。2月いっぱいは火星をやりたい。安達さんと花山天文台で、観測もやりたい。(もっと長くやってくれなくちゃ・・by:A)
風本
シーイングがよくない。火星と土星を中心に見ている。土星は南中が早くなってきているのでがんばりたい。木星は低すぎる。沖縄宮古島の観測所が11月に調整を終えた。共同で観測所を作ることにしたが、じりじり遅れて、ようやく11月に完成した。機械は宇治天体精機で、鏡は田口さんの作。鏡は非球面になっている。ピンポイントで光軸をあわさないとやれないので鏡筒がなかなか思うようにならず、光軸を合わせられるように工夫した。しかし、それぞれ自宅から距離が遠いのでなかなか大変なことになった。セルの構造を基本的に変えないとまずくなって、大工事となった。その結果、よい像にすることができた。シーイングさえよければ1000倍以上でもきれいに見える。(ウラヤマシイ!)
※この話題は風本さんのブログ『北風と太陽の惑星日記』の2007年11月に書かれています(注:伊賀)
畑中
40cm鏡を磨きなおしてもらい、非常によく見えるようになった。撮像時にフィルターを入れるとピントがずれるので、凸鏡をずらしたら像が悪くなった。仕方なくもとに戻して、やっている。ソフトの問題もあって、なかなかよい像が取れなかった。
奥田
2年前の火星のビデオ撮影の後、あまり観測はできていない。暖かくなれば復帰したい。
松尾悠未
神戸から参加した。月などが好きで見ている。インターネットを見てここを知った。伊賀さんの紹介で参加することにした。

火星の近況報告 (安達・伊賀)

北極冠に関するレポート <安達>

 フランスのペリエさんから、北極冠に関する情報が流れた。それと同時に、支部に寄せられた 画像から、安達が独自に北極冠の形成に関する情報を集め、今シーズンの北極冠の結成時期の特定作業を行っている。

 北極冠の結成に関する情報としては
*佐伯恒夫 「火星とその観測」では、次のような記述が見られる。

Ls=315  北極冠結成開始
Ls=345  北極冠最大
*赤羽先生の著述文から 1986年

極雲の晴れ間の間からきらきら輝く極冠が見える。このときはすでに最大になっている。春先はダークフリンジによって囲まれている。
(今年も、ダークフリンジが年末から観測されている)
*東亜天文学会火星課  1992年

北極冠の周囲にできる暗線が重要な観測対象になっている。
(おそらくダークフリンジではなく、少し南に位置している暗いバンドだと思われる)
*赤羽先生の著述文から 1997年

北極冠は冬至の頃から発達し、春分の頃(Ls=0度)に極大となる。
*東亜天文学会火星課  2007年

Ls=0 ダークフリンジ エリシウムの北側
*安達はLs=4で極冠を取り巻くダークフリンジを確認している。

 これらのことから、極冠は少なくともLs=0のころにはできていたと思われる。
*MGSの画像では2002年にはLs=320で北極冠はできているような画像を公開している。本年はLs=340くらいで、北極冠が形成されているように思える。

ペリエさん作成のモンタージュ画像 <安達>

 2枚画像を繰り返し映すことにより、北極地方のクレーターの内部に霜のような白いものができて、移っている様子を記録したものが公開されている。また、詳しく検討すると、そのすぐ右側(西側)には三角形の、同じく地表に固定された白い部分が観測され、東西に帯状に極冠の周辺部分の形成が進んでいる様子が記録されている。これは、北極冠の形成時期の決定に重要な示唆を与えてくれる現象である。

極冠の形成 <安達>

 極冠は、昔は極雲の下で一気に形成されるものと考えられてきた時代がある。しかし現在は、違った考えられ方をしている。

 今回は、あちこちに帯状に北極雲の濃い部分が記録されており、極雲の濃い部分で北極冠が部分的に形成されているのではないかと思われる画像が多く記録された。

では、極冠の結成完了の日はいつか・・・
部分的にでもできた日にするか
ほとんどができた日とするか
完全に全周できた日とするか

定義があるわけではない。あいまいな表現になるだろう。

三品さんからの黄雲情報があった。<伊賀>

11月4日  クリセ(Chryse;33W,+10)付近のダストストーム発生

光点が3箇所見られた。

パーカーさんの画像は雲の情報が多い。<伊賀>

  • 熊森さんの画像に北極の白い固定した模様が2つ写った画像がある。
  • パーカーさんは、画像処理をP. Lazzarottiさんに習われ、今までよりも格段に雲の様子の記録がかわったことから、フードの様子がよく分かる報告を送ってくださるようになった。
  • 火星の画像撮影は、火星面の細かなスポットをたくさん撮ることが重要ではなく、観測対象を絞り、雲の状態などの、気象の様子を捉えるほうがより重要である。細部を追求して撮ることにより、大気の大切な情報を失っていることがある。
  • 12月13日パーカーは初めて北極冠のコメントを書いた。極冠のできた日に関して参考になる意見だ。
  • 12月26日柚木さんの画像にブルークリアリングが認められる。この画像を、スクリーンに映し出し、安達の解説でこの現象を確認し、全員でブルークリアリングを確かめた。

北半球高緯度の台風 <安達>

11月17日 ダミアンの画像に台風状のリングになった低気圧が記録された。地上からリング状の雲が撮影されたのは、初めてのことだろう。すばらしい画像だ。

木星の近況(伊賀)

今シーズンの初観測

1月16日(合から24日目)に福井さんが木星を観測した。ベルトが記録された。2系=240度くらいの位置の観測だ。1月18日にオリベッティーの観測もあった。

    気になるのは次の点だ
  • SEBは二条に分かれている
  • SEBsに団子が2個ある
  • STBはBAがありそうだがはっきりしない。
  • SSTBの濃化部が目立つ。

オリベッティーの画像の右にSTBの北よりにおかしなベルトが見えている。

昨シーズン終盤の観測から

昨年の9月の終わりに最終的な展開図が公開された。それによれば260度くらいにBAがあった。10月の終わりにオリベッティーが撮っている。

10月の終わりに南熱帯攪乱が崩れてしまったように見える。STrZの攪乱は普通の状態に戻りつつある。303度で南熱帯攪乱の崩れかけが写っている。

木星に起こる攪乱現象の予想

しばらくは何も起こりそうにない。SEB攪乱が2〜3年後に発生するかもしれない。


今シーズンの注目点

  • 南熱帯攪乱はどうなったか。
  • BAは赤いままか
  • STBnの濃化部はどうなっているか
  • SEBは淡化するか
  • GRSは?
  • NEBが細くなるか

土星(伊賀)

12月6日 テチスの通過を捉えている。衛星本体と影が記録された。

12月26日 永長さんは高緯度がグリーンになっていると報告された。

12月29日 北半球が詳しく記録されるようになった。

1月9日に熊森さんが白斑を捕らえている。

土星のベルトの南北非対称性。HSTのものを比べると年によって違いが認められる。

2010年にリングは真横になる年が来る。

調べたら2009年9月の誤りでした。ただし合が近いので、観測は厳しそう。2009年1月にはDe=-0.8まで傾きが小さくなるが、真横にはならない。(伊賀)

今シーズンの注目点

  • STB北縁の白斑
  • EZsの白斑
  • 南半球高緯度の色の変化
  • 北半球の見え方
  • 衛星本体および影の記録

水星(メッセンジャー)

2004年に打ち上げられた。フライバイを繰り返し2011年に水星軌道に入る。

最近、撮影された水星の画像を公開した、1974年と1975年にマリナー10号が撮影したが、それから後はなく、久しぶりの画像だ。クローズアップ画像は分解能が400mくらいまで記録された。

月にない種類のクレーターがたくさん見られた。安達が気のついたことを報告した。

<要点>
月のクレーターは、大きなクレーター(雨の海や静かの海など)が形成された後に小さなクレーターができるなど、後から大きなクレーターができて、周囲の小さなクレーターを跳ね飛ばすことは比較的少ないが、今回得られた画像には、それとは違うものがどんと見えており、興味深い。
また、小さなクレーターにも中央丘のできているものが多いことも特徴で、太陽に近く、衝突スピードが速いことが、影響している。

金星の雲 (伊賀)

S&Tの記事から。模様がよく記録されている。記事の日本語訳を紹介された。

  • 金星は何も模様のない天体だったがUVで撮ると模様が写るようになった。
  • 300〜400nmの波長を透過するフィルターを使ったら模様が撮れた。
  • よい光学系ほどUVを吸収するのでふさわしくない。石英ガラスを使うとよい。
  • 石英ガラスならば1枚レンズでも非常によく撮れる。
  • UVはよいシーイングが必要。
  • 露出はオーバーに気をつける。
  • RGBでも撮れば模様は出てくる。(ターミネーター付近に)
  • バーダーのフィルターがよいようだ。

その他

Planetary Imaging DVD・・・・・熊森さんが入手した。
(Damian Peachさんが作られたDVDのこと)

WEBサイトのスタイルについて

英語版のページ  切替画像に日本語の文字も入れたほうがよい。

天王星・海王星は別にしないとフレームが縦に長すぎて表示されない。<現状通りとする>

惑星観測を抑えると、全惑星が表示されるというスタイルにしようか迷っている。<現状通りとする>

BAAやALPOもフレーム表示になっている。

月面課に関しての報告
大口さんから掲載の了解を得た。
月面の画像のデイリーの受付を正式に開始するということで、池村さんにお願いする。
担当者を分担できるようにしていきたい。
<分担例>
惑星は池村さん
月面は薄出さん
支部例会・木星会議は阿久津さん
東京は田部さん
月面に関しては、新規なのでホームページビルダーを使う方法があるかもしれない。
支部通信も保存のときにHTMLで保存して池村さんのところに送ると、処理がしやすいはずだ。
<注>
できなくはないが、やはり良い方法ではなさそう。(伊賀)

次回の木星会議(仙台天文台)

○開催期日は11月29日(土)12時30分〜11月30日(日)13時ころまで

○宿泊料金は 1泊2食付で15000円とします。(ただし、飲み代別)

ニュー水戸屋 〒982-0241 仙台市太白区秋保町湯元字薬師102
電話022-398-2301

○一応30名で予約を取る。(御夫婦でご参加の場合は「木星会議参加の者・・・」と言うことで予約する)

○新天文台は、最新のバリアフリーとなっています。

○1.3m大型望遠鏡他施設見学を17時から18時30分頃まで。

○宿所での懇親会は19時からとする。

○天文台⇔宿所の移動は送迎バスをお願いする。(1月25日現在未確認)

○それぞれで交通手段を考えるが、関西からは飛行機で1泊2日のツアーを探すと格安でいける方法もあるかもしれない。ただし、宿泊は別のところにニュー水戸屋さんからタクシーで行かねばなりませんが。

○以上のことを小石川さんに連絡する。

事務連絡

次回例会

4月20日(日)

発表資料

(1) 火星 伊賀祐一

2007年11月〜2008年1月のトピックス

発表資料
PDF(4056KB)

(2) 『木星・土星の近況』 伊賀祐一

木星:新しい観測シーズン始まる

土星:北半球が見えてきた

水星:NASA水星探査機メッセンジャー

発表資料
PDF(3978KB)

(3) Sky&Telescope, October 2007 日本語訳 伊賀祐一

Sean Walker: "Revealing the Clouds of Venus"

Sean Walker: S&T Test Report"A New Planetary Camera"

発表資料
PDF(444KB)


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