月惑星研究会例会通信 No.173

■ 日 時 : 2019年3月17日(日曜)13時−17時

■ 場 所 : 明治大学生田キャンパス第二校舎5号館5205教室

■ 出席者 : 19名(敬称略、参加者一覧順)

  鈴木 達彦、平林 勇、鈴木 邦彦、恒川 穂乃佳、小河 萌、宮澤 紀希、山脇 諒一郎、
  三品 利郎、西岡 達志、山口 貴弘、水元 伸二、成田 広、米山 誠一、松浦 恵介、
  堀川 邦昭、長瀬 雅明、三谷 祥二、谷口 芳明、石橋 力
          例会の様子

■ 内 容

0.始めに


    今回は、明治大学の学生さんは、急用が発生した為に参加できなくなり、会場の教室は
    使えたけれど、プロジェクターが使えず、黒板に木星面の模様などを描く等の方法での
    解説となりました。

          黒板利用の解説

1.自己紹介


    詳細省略

2.2019木星トピックス(水元)

  1)N2ドメイン白斑の合体
   ・2019/02/13-14頃N2ドメインのNN-WS-6と後方の白斑(WSa)が合体した模様
   ・白斑の緯度差によるドリフトの違いで接近 --> 合体
   ・こうした白斑どうしの合体は他のドメインでも時々観測される
   ・詳細は、以下のPDFを参照願います。

   01_N2_WSs_marger(PDF)

  2)GRS周辺の活動

   02_Activity of GRS regions(PDF)
   03_Activity

3.木星入門講座(堀川)

  大学生向けに木星観測の基礎を説明した。

  1)2019シーズン(2019 Apparition)の木星
   ・へびつかい座
   ・赤緯  : −22°高度33°
   ・視直径 : 46秒
    - 合  : 2018年11月26日
    - 西矩	: 2019年 3月14日
    - 衝  : 2019年 6月10日
    - 東矩 : 2019年 9月 8日
    - 合  : 2019年12月27日

  2)観測シーズン(Apparition)とは?
   ・地球と木星の会合周期は約13ヵ月。
   ・その間、木星が太陽方向に位置して観測できない期間を除いた10〜11ヵ月を観測シーズン(Apparition)と呼ぶ。
    今シーズンは1月〜11月。
   ・今年の衝は6月10日。衝の前後は観測の好機、その理由は、
    - 視直径が大きい(地球に近い)
    - 夜通し観測可能
    - 高度が高い(真夜中に南中)

  3)木星はいつ見える?
   ・今年の木星は最南のいて座にあるため高度が低く、観測可能な時間は短い。衝の頃でも5時間程度で、
    冬に衝となるシーズンの約6割。
   ・シーズン後半は、2度の雨季(梅雨と秋の長雨)の影響をいけるが、その間の梅雨明けから東矩までの間は、
    夏場の好シーイングが期待できる。

    木星入門講座に関する堀川氏の解説資料(PDF)

4.木星の近況(堀川)

  1)大赤斑周囲の異変
    (詳細は水元さんの資料をご覧ください)
   ・1月末、RS後方から赤いブリッジ出現。
   ・ブリッジはメタンブライト。先端に白斑。
   ・メタン白斑は2/2に赤色斑点として可視化。
   ・その後、RSの巻きが緩んで、周囲に赤い具がはみ出る。
   ・SEBsのジェット暗斑がRSと会合し、高高度に持ち上げられてメタンブライト化&赤化したと思われる。
   ・2015年にも同様の現象があった。

  2)SEB北部の淡化の状況
   ・RS後方のSEB北部が淡い。幅広いSEBZが形成されている。
   ・post-GRS dist.は活動弱い(最近の状況は次項参照)。
   ・SEB南組織は乱れて濃い状態を保っている。南縁に沿って多数のジェット暗斑が見られる。
   ・ジェット暗斑は徐々に細くなるSEBsを伝って後退し、一部はRSと会合。前述の赤色斑点はそのひとつと思われる。
   ・RS前方では中央組織がII=120〜180°まで伸びる。南北組織との間は以前よりも明るくなったようだ。
   ・北部の淡化は昨年後半に目立つようになり、徐々に進んでいるようだ。

  3)post-GRS disturbanceの活発化
   ・post-GRS dist.は2月前半まで活動弱く、20°前後の長さしかなかった。
   ・2月中旬から活動的になり、3月初めには約40°の長さになり、SEB北部にも乱れた白雲が広がった。
   ・後方のSEB南組織は乱れ、ジェット暗斑が増えた。
   ・今後のSEB南部の活動が激しくなると、濃化に転じる可能性もある。

  4)EZの暗化(着色現象)
    (1月の例会資料と同じ)
   ・EZが著しく薄茶色に着色し、薄暗い。
   ・EZ北部は薄暗く、ベルトと同じ薄茶色をしている。EZsも薄暗いが、EZnに比べると明るさが残る。
   ・EZ中央には太く濃いEBが発達、NEB南縁から数多くのfestoonが伸び、活動的なものがある。
   ・暗化(着色)は昨年後半に始まった。当初は薄黄色だったが、徐々に濃くなり、黄土色から薄茶色になりつつある。
   ・EZの暗化(着色)は、2012年以来6年ぶり。

  5)その他の状況
   5-1)NNTZの高気圧的白斑同士の合体
      詳細は水元さんの資料をご覧ください

   5-2)SSTBとAWO
   ・SSTBは全周で大きく二条に分離。北組織が濃く、南組織は弱い。
   ・AWOはA1/A2/A3/A4/A5/A5a/A7/A8の8個。A8は加速気味。
   ・A8〜A1間、A1〜A2間などに、低気圧的明部/白斑(CWO)が見られる。

   5-3)NEB北縁]
   ・NEBは全周で通常の太さだが、北縁はとても起伏に富んでいる。
   ・WSZはII=320°付近、NEB北縁に大きなbayを作っている。赤みはない。
   ・凹凸のいくつかは昨シーズンのものに対応。WSZ後方で形成が続いている。

    木星の近況に関する堀川氏の解説資料(PDF)

5.木星南北問題(堀川)

   ALPO-JapanのWebに掲載されている「Our policy」から、South-upの条項(惑星の南を上にして報告せよ)に
   ついては、プロアマの協業が進む世界の状況や、現行の更新オペレーションとの整合性に鑑み削除することを、
   昨年5月の例会で決定したが、その後、堀川の怠慢により実行されていない。
   そこで、再度、例会で合意を取ることにした(関西支部では安達さんにより合意が取れているとの連絡あり)。
   ・掲載する画像の南北は、報告者の意思に委ねる(報告れた画像をそのまま掲載する)。
   ・Our PolicyにあるSouth-up条項は廃止する(閲覧者からわかるようにその旨コメントを入れる)。
   ・最近、更新担当者に寄せられるメールで、South-up条項に起因する誤解(ALPO-Japanは南が上でないと
    受け付けないなど)がみられる。そこで、Our PolicyからSouth-up条項を削除するだけでなく、
    ALPO-JapanのTopページに「画像の南北は報告者の意思に委ねる」ことを明示する。
    掲載文を作成し(堀川担当)、オペレーターチームの了解を得た上で掲載する。

6.カイパーベルトの小天体発見に使われた望遠鏡とカメラなどについて(三品)

   2019年1月29日に、「カイパー・ベルトにある小さな天体が恒星を隠す現象を市販の小型望遠鏡と
   CMOSビデオカメラで捉えた」と報道されました。その望遠鏡がCP+2019で展示されていることが分かったので、
   見てきました。
   
    詳しくは、以下のリンク先を参照してください。
    カイパーベルトの小天体発見に使われた望遠鏡とカメラなどについて

7.2019年から2021年、火星の様子(三品)

   2019年3月には火星は視直径が5秒まで小さくなっており、4月末に4秒となります。
   9月に合(黄道座標系基準は2日、赤道座標系基準は4日)となり、年末には再び4秒台まで戻ります。
   3月末から4月にかけて火星がおうし座のプレアデス星団(M45)とヒアデス星団の間を通過します。
   火星は韋駄天のように黄道の星座を駆け抜け、2021年10月には、うお座で最接近し、視直径は22.6秒になります。
   そして、2021年2月には再びおうし座に戻り、プレアデス星団(M45)とヒアデス星団を通過します。
   また、海王星、天王星の近くを通ったり、黄道近くの散会星団、ふたご座のM35、かに座のプレセペ(M44)を
   通ります。それらのイベントを図に描きました。
   
    詳しくは、以下のリンク先を参照してください。
    2019年から2021年、火星の様子

8.Winjuposで大赤斑の経度を合わせる方法(三品)

  1)Winjuposで Tool−Ephemerides−Optionを開き、Texture image で Jupiter.jpg を選ぶ。
  2)North at top を選択し、Longitude of left margin に、GRSの経度(今なら305度)を入力する。
    in Sysytem は“2”。

    Winjuposで大赤斑の経度を合わせる方法(PDF)

9.カメラレンズで撮影したガリレオ衛星(松浦)

   デジカメ[オリンパスのOM-D E-5(1200万画素)とOM-D E-M1 Mark II(2000万画素)]のレンズだけで
   撮影された木星の星景画像のプリントを紹介されました。画像にはガリレオ衛星も写っています。

10.今年の木星会議と月惑星研究会60周年パーティ

  1)開催日時
    ・11月9日−10日もしくは11月16日−17日が候補。初日の懇親会を60周年パーティとする。
  
  2)開催場所
   ・大学関係は、今回不参加の明治大学は不明、中央大学・理科大・法政大学・工学院大学はNG。
   ・国利天文台は可能性はあるけど未調査。
   ・横浜の開港記念館(堀川さん)
     横浜開港記念館は、横浜市の中心部にあるレンガ造りの歴史的建物。1994年に木星会議を行った。
     部屋 収容人数 料金(土日)     備品
             (午前+午後) ホワイトボード スクリーン 暗幕
     講堂  480名	    12600
     1号室 110名  1920+2520    有(2)     有    有
     6号室 110名	  1920+2520    有(2)     有    無 → 対象外
     9号室  63名  1920+2520    有       有    有
     プロジェクターの貸し出し制で、料金は午前午後各2000円です。
     予約は講堂が6ヶ月前、会議室は3ヶ月前ですが、1号室/6号室は講堂と一緒に使用する場合、
     6ヶ月前から予約可能となっています。
     1号室(暗幕あり)が候補だけど講堂と抱き合わせで押えられるので3ヵ月前になって土日連続で
     確保するのは難し。
     したがって、ここで60周年をやるには、初日を講堂で行い、2日目を63名入りの9号室というのが、
     最も可能性が高いと思わる。それでもリスクはあるので、大学関係で使える会場があれば、
     そちらを優先した方が賢明と考えます。明治大学駿河台が候補か?

   ・例会後に三品さんからの追加情報
    a.地球あーすぷらざ、映像ホール(125席)
     場所はJR本郷台駅前、JR本郷台へのアクセスは
     ・羽田からは隣の港南台駅までリムジンバスあり。所要時間は50〜75分。
     ・のぞみ号なら新横浜から40分、ひかり号/こだま号なら小田原から40分。
     パーティ:同じ建物にある「レストランメルヘン」

    b.川崎市国際交流センター、レセプションルーム(150席)
     場所は東急東横線元住吉駅から徒歩10分、東急元住吉へのアクセス
     ・羽田からは隣の武蔵小杉までリムジンバスあり。所要時間は70分程度。
     ・のぞみ号/ひかり号/こだま号、新横浜から16分
     パーティ:レセプションルーム使用

  3)開催内容案
    ・ゲスト : 国立天文台−渡部副台長、JAXA−佐藤先生、明治大学−鈴木秀彦先生
    ・過去の活動・歴史やこれからの活動など講演
    ・功労者表彰−月惑星研究会の創設者などに表彰状を贈呈
    ・プレゼント
    ・等々

11.その他

  1)次回の関東地区例会は、5月12日(日)か19日(日)とし、明治大学の学生と調整して決める。

2次会:懇親会

  向ヶ丘遊園駅近くの居酒屋にて16名参加の懇親会でした。


月惑星研究会のHomePageへ戻る  東京地区のPageへ戻る