Video Astronomy

ToUcam Proで惑星を撮影する

伊賀祐一

2003/03/01


ToUcam Proで実際に惑星を撮影してみましょう。自作の撮影アダプターを望遠鏡に取り付けます。基本的には拡大撮影になりますので、アイピースあるいはバーローレンズで引き伸ばします。フィルムよりもCCDチップ面積が小さいので、強拡大をする必要はありません。合成Fは25-35程度で十分です。

ToUcam ProのUSB端子をパソコンに接続します。キャプチャ・ソフトウェアVRecordを起動する前に接続を行わないと、エラーになります。

(1) VRecordの起動
直接にVRecordを起動するか、もしくはランチャ・アプリケーションVLounge(図1)を起動し、そこからVRecordをクリックします。ToUcam本体の赤色ダイオードが点灯します。

図1 ランチャ・アプリケーションVLounge

(2) VRecord
起動後のVRecordの画面に惑星は入っていますか?
下図は悪い例で、木星の縞模様が並行になるようにカメラを回転した方が良いですね。
ピント合わせはパソコンのモニターを眺めながら行います。

図2 キャプチャ・アプリケーションVRecord

(3) ビデオ形式の設定(Video Format)
まず、ビデオ形式の設定を行い、VGA(640x480)サイズに変更します。この手順はVRecordを起動するたびに行う必要があります。

メニューから[Options]を開き、[Video Format]コマンドを指定します。

Output Size:のコンボボックスから640x480のサイズを選択します。

Color Space/Compression(色空間/圧縮)ではI420かIYUVかが設定できますが、どちらの設定でもかまいません。基本的には1/2圧縮程度です。


図3 ビデオ形式の設定
Frame Rateで1秒間のフレーム数を設定できます。ただし、ここでの設定が有効になるのは、[Capture]メニューの[Set Frame Rate]コマンドでのUse Frame RateのチェックがOFFの時です。

Frame Rateは、VGAサイズでは60FPS(Frame per second)を選択できません。観測条件で変化するものですが、15FPSが適当だと思います。

※注
これは記録されるAVIのファイルサイズとも関連があります。私が標準として撮影している15FPSとすると、50秒露出で750フレームとなりますが、ファイルサイズは310MBになります。木星をコンポジット許容時間の2分間撮影するとして、5FPSならば600フレームなので250MB、10FPSならば1200フレームなので500MB、15FPSならば1800フレームで750MBになります。

Registaxでは2500フレームまでで、ファイルサイズが2GB以下のAVIファイルを読み込むことが可能です(テストしてみると、Registaxでは2466フレームまでが限界のようです)。

※注
キャプチャ時にロスト・フレームが多く出る場合は、パソコンへのディスク書き込みが間にあわない可能性があります。このような場合は、フレーム・レートを下がるしかありません。

(4) ビデオ・プロパティの設定(Video Properties)
カメラの制御を行うために、メニューから[Options]を開き、[Video Properties]コマンドを指定します。
最初は、Image controlsのタブを開きます。


図4 ビデオ・プロパティの設定(Image controls)

まず、ControlのFull Autoのチェックを外します。完全自動ではうまく惑星は撮れません。

Frame rateでは1秒当りのフレーム数を調整しますが、この設定は実は有効にはなりません。[Capture]−[Set Frame Rate]コマンドで Use Frame Rate がONの場合は、そのダイアログでのフレームレートの設定が採用されます。 Use Frame Rate がOFFの場合は、[Options]−[Video Format]での Frame rateでの設定が採用されます。

さらに、明るさ(Brightness)やGamma(ガンマ)の調整を行います。しかし、これらの設定の前に、次項目のゲインの設定を先に行ってください。撮影対象の惑星や合成F、あるいはその日の透明度で、これらの条件は大きく変化しますので、撮影のたびにチェックが必要です。撮影時のヒントとしては、ガンマはやや小さめにします。透明度などの急激な変化で、惑星画像が白飛びしないようにするためです。また、明るさは背景の輝度が上がりますので、主にはゲインで調整する方が良いでしょう。

※ガンマの設定は低めに設定してください。スライドバーを左から0-2/10ぐらいが経験上良いようです。

(5) ゲインの設定(Video Properties)
次に、Camera controlsのタブを開きます。


図5 ビデオ・プロパティの設定(Camera controls)

ホワイト・バランス(White balance)は手動にします。Autoのチェックを外します。

※ただし、完全に手動では思った色になりません。また、自動のままですと、撮影中に大気の条件が変わることで、色が変化してしまいます。最初にAutoで眺めていて、これはというタイミングでAutoのチェックを外すのがテクニックです。

最も重要な設定が露出(Exposure)です。ToUcam Proはシャッター速度(Shutter speed)最長で1/25秒までしかありません。でも、これで十分な輝度で惑星を撮影できると思います。どうしても暗い場合は、合成Fを下げます。口径が大きくて光量が十分にある場合は、もっと高速なシャッター速度が良いかもしれません。

ゲイン(Gain)の設定も重要なものです。露出不足はRegistaxでのコンポジット処理(stack)で救われますが、ウェーブレット変換でリング状の偽の模様が出やすくなります。できるだけ十分な露光をかけたいところですが、逆に露出オーバーになると、惑星面の明るい模様が白飛びを起こしやすくなります。微妙な設定が必要ですが、良い画像を得るためには、試行錯誤でいくつかのパラメータを試すしかありません。

せっかく決めたパラメータは、DefaultsのUser情報として保存(Save)することができ、次回の撮影時に呼び出す(Restore)ことが可能です。ただし、保存できるのは1回しかありませんし、撮影条件で微妙に変化します。Saveで標準的な設定を記録し、Restoreで呼び出して、その日の条件に合わせて微調整を行ってください。

なお、Audio controlsのタブは使用しません。

(6) 音声トラックのオフ(Capture Audio)

音声は録音しないようにします。音声ストリームがあると、Registaxで読み込むことができません。

メニューから[Capture]を開き、[Capture Audio]コマンドにチェックがないことを確認します。

(7) フレームレートの設定(Set Frame Rate)

AVIファイルのフレームレートの設定を行います。このダイアログで、Use Frame RateがONの場合は、ここでの設定が有効になります。Use Frame RateがOFFの場合は、{Options]−[Video Format]コマンドでのFrame rateでの設定が有効になります。

(8) 録画時間の設定(Set Time Limit)

キャプチャする時間を設定します。

メニューから[Capture]を開き、[Set Time Limit]コマンドを指定します。

Use Time Limitにチェックを入れ、Time Limitに録画時間を入力します。

(9) AVIファイルの設定(Set Capture File)
キャプチャした動画を記録するAVI形式のファイルを決めます。

メニューから[File]を開き、[Set Capture File]コマンドを指定します。

フォルダとファイル名を入力します。


図6 AVIファイルの設定

ファイル名を決定すると、AVIファイルのサイズを問い合わせてきます。これは初期サイズですので、1MBとしておきます。

(10) キャプチャの開始(Capture Start)

メニューから[Capture]を開き、[Capture Start]コマンドを指定します。確認ダイアログが表示され、OKをクリックすると、キャプチャが開始されます。

確認ダイアログが表示されている間は、ウィンドウは真っ白になってしまいます。これはソフトウェアの欠陥だと思いますが、仕方ありません。

Set Time Limitコマンドで指定した秒数だけ、キャプチャが行われます。指定時間が経過すると自動的にキャプチャは終了します。途中で雲にかかったりした場合は、ESC(エスケープ)キーでキャプチャを中断することができます。最下行に、現在録画中のフレーム数や経過時間、あるいはロストしたフレーム数が表示されています。ロストがあまりにも多いような場合は、フレームレートを落とす必要があります。

次の撮影を始める前には、必ずAVIファイルの設定を行ってください。もしも設定を忘れると、前回のファイルに上書きされてしまい、大きなショックを受けることになります。


少しカメラの制御パラメータに試行錯誤が必要ですが、簡単に惑星のビデオ撮影ができます。パソコンのディスク容量と、撮影後のRegistaxでの処理時間を考えて、バンバン撮影しましょう。

その他の考慮することがら
ToUcamでキャプチャしたAVIファイルは、サイズが大きくなり、扱いが大変です。
  • ディスク容量(すぐにディスクの空き容量がなくなります)
  • データ転送(別なパソコンにコピーするにも時間がかかります)
  • データのバックアップ(CD-Rには640MBまたは700MBまでしか入りません)
  • WinZIPなどの圧縮アーカイブソフトを使う(1/3から1/10ぐらいまで圧縮できます)

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