天文ガイド 惑星の近況 2003年2月号 (No.35)
伊賀祐一
例年よりも寒波の訪れが早かったようで、2002年11月はかなり冷え込みました。そのために季節風の影響で、惑星に望遠鏡を向けてもシーイングが悪く、早々に観測を切り上げる日も多くありました。さて、今月の惑星観測は、木星が23人(内海外11人)から236観測(29日間)、土星が11人(内海外6人)から65観測(21日間)の報告を受けました。
木星

@ STrZの白斑と大赤斑の会合

2002年11月28日にBAAのJ.H.Rogers氏からメールが届き、『STrZ(南熱帯)の白斑が大赤斑と合体している、しかも今も現象は進行している』とありました。この白斑とは、2001年10月頃に出現し、ドーナツ型をしていて、SEBs jetstreamに乗ってゆっくりと後退していたものです。そして、2001年11月に発生したSTrZのダークストリークが白斑を通過したにもかかわらず、2002年4月まで追跡できていました。その後退速度から2002年秋には大赤斑との会合を予想していましたが、これまでの観測では何も見つかっていませんでした。

このSTrZ白斑は、10月までは低空で条件が悪かったのか検出されていないようです。10月11日UTの永長英夫氏の画像(図1)で、白斑が大赤斑の前端部に達しており、これが世界的にも最も早い観測のようです。その後、11月に入り、白斑が大赤斑孔に沿ってゆっくりと移動し、11月23日UTに大赤斑の真北に位置しています。11月下旬の観測が少なくて経過が不明ですが、11月28日UTには大赤斑後端部に達した模様です。

図1 STrZ白斑の大赤斑との会合

STrZ白斑は10月初めに大赤斑に達し、ゆっくりと大赤斑の周りを移動している。
撮影/2月23日:伊藤紀幸(新潟県)、11月23日:E.Grafton(米国)、他は永長英夫(兵庫県)

STrZ白斑の大赤斑との会合現象は1997年5月に詳しく観測されており、この時の白斑は大赤斑の周りを約2週間で移動しました。しかし、今回の会合現象はなんと2ヶ月間にも渡ります。どうしてこのような差が生まれたのでしょうか。

また、2000年12月に土星探査機カッシーニが木星通過時に撮影した同様なSTrZ白斑を図2に示します。この時は2001年3月に大赤斑と会合しましたが、太陽との合が近くて詳しい観測は得られませんでした。


図2 カッシーニ探査機のとらえたSTrZ白斑
2000年12月12日に撮影されたSTrZ白斑で、その後2001年3月に大赤斑と会合した。提供:NASA(拡大)

A SSTBの白斑

SSTB(南南温帯縞)には5個の小さな白斑が存在していますが、全周に分布しているのではなくて、11月には体系II=90〜180°の長さ90°の限られた地域に集中しています。この小白斑は、STB(南温帯縞)にある白斑'BA'と同様に、反時計回りの高気圧性の渦です。直径が小さいために、眼視での観測はむずかしい対象ですが、CCDによる高解像度画像によって追跡が可能になリました。

これらの小白斑は、2000年には4個と3個のグループに分かれて並んでいて、経度で170°の範囲に分布していました。しかしながら、小白斑の間の距離は次第に縮まっていて、後方の2個の小白斑は2002年3月についに接近し合体してしまいました。この時点で6個の小白斑となり、経度で140°の範囲に集まっていました。

今シーズンはこれらの小白斑がどうなっているのか、ようやく11月の観測で明らかになってきました。まず、小白斑の数が昨シーズンの6個から5個に減少しています。さらに小白斑は経度で90°の範囲にしか存在していません。詳しいことは今後の解析が必要ですが、再び小白斑同士の合体が起こった可能性があります。

B STBの活動

STBにただ一つ見られる白斑'BA'は、11月19日UTにII=330°付近に位置しています。後方にSTBの短い断片がありますが、'BA'本体は輝度がないので非常に見るのが難しい対象です。2000年3月に合体した直後に比べると、大きさが一回り小さくなった気がします。STBは、大赤斑の後方のII=110〜160°の経度だけ濃いベルトとして見えており、まもなく大赤斑を追い越していきます。

C SEBsの活動

9月〜10月上旬までに見られた大赤斑から後方のSEB(南赤道縞)の淡化現象は、再び元のベルトの様子に戻ってしまいました。大赤斑直後のSEB内には定常的な擾乱による白雲が見られます。

D NEBの活動

NEB(北赤道縞)は、ほぼノーマルな幅のベルトに戻ってきました。まだ、北に拡幅している領域はII=60〜110°、II=240〜270°の2箇所です。NEB北縁が明化したことによって、NTrZ(北熱帯)に細いベルトが見られます。この緯度がNEBの拡幅期の北縁にあたり、NEBの衰退期にしばしば見られる現象です。

E NTBの急速な淡化

比較的安定した1本の濃いベルトであったNTB(北温帯縞)でしたが、急速な淡化現象が始まりました。図3の2枚の展開図を比較すると、10日間ほどのうちにNTBが部分的に淡化しています。

図3 2002年11月の木星面展開図
NTBが10日間で急速に淡化している領域が見られる。
撮影/永長英夫(兵庫県、25cmニュートン)、風本明(京都市、30cmニュートン)、伊賀祐一(京都市、28cmシュミット)(拡大)
土星
2002年12月18日に衝を迎える土星ですが、9月下旬に出現したような白斑などは見られませんでした。
図4 2002年11月の土星

撮影/新川勝仁(堺市、28cmシュミット)、風本明(京都市)
火星
火星は2003年8月に大接近を迎えますが、11月には視直径はまだ3秒台でした。視直径が5秒台になるのは2003年1月中旬ですが、大接近に向けて観測の準備を始めましょう。

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