天文ガイド 惑星の近況 2010年11月号 (No.128)
堀川邦昭

木星はまもなく衝を迎えます。今年の夏は異常とも言える猛暑でしたが、惑星観 測には好都合で、どの画像を見ても国内の観測とは思えないほどのディテールが 捉えられています。夕暮れの西南天では金星が東方最大離角となっていますが、 土星と火星は太陽に近く、観測はお休みです。

ここでは8月後半から9月前半にかけての惑星面についてまとめます。なお、この 記事中の日時は、すべて世界時(UT)となっています。

木星

※またしても小天体の衝突!

木星と小天体の衝突現象は、今年6月に観測されたばかりですが、8月21日未明 (日本時間)、熊本県の立川正之氏は木星を撮像観測中、北赤道縞(NEB)北縁に輝 点が出現し、まもなく消失するのを発見しました。この情報を得て、当会では追 跡調査を行い、立川氏の他に、東京都の青木和夫氏と富山県の市丸正幸氏がこの 現象を捉えていることがわかりました。約1000kmも離れている熊本と東京で、木 星面の同じ位置に輝点を観測したという事実から、小天体が木星大気に突入した 際に起こった発光現象であることが確実となりました。

当会で解析したところ、衝突日時は8月20日18h22m(UT)で、発光の継続時間は1.3 秒、衝突場所はII=140.4°、北緯21.1°という結果が得られました。また、6月 の現象と同様に、この衝突による痕跡模様はまったく観測されませんでした。衝 突した小天体は木星大気中で燃え尽きてしまったようです。

[図1] 小天体の衝突による発光現象
撮像:立川正之(熊本県、15cm)


それにしても、衝突現象がこれほど頻繁に観測されるとは驚きです。6月の衝突 天体と今回の衝突天体に何らかの関係があるか、大変興味のあるところですが、 今のところわかっていません。小天体の衝突頻度は、これまで考えられていたよ りも高い可能性がありますので、我々は、これからも同様の現象が起こるという 前提で観測に臨む必要がありそうです。また、過去の観測を精査して、データを 掘り起こすことも重要ではないかと思われます。

※木星面の状況

南赤道縞(SEB)では、ベルトが急激に濃化復活するSEB攪乱(SEB Disturbance)の 発生が期待されていますが、現在は極めて静かな状態が続いています。北組織 (SEBn)の淡化がさらに進んで、明るい赤道帯(EZ)との区別がつきにくくなってき ました。SEB内部に残るバージ(barge)の痕跡模様は、最も顕著だったRS後方の暗 斑が、8月末までにほぼ淡化消失してしまい、II=260°付近の暗斑だけが残って います。

当観測期間中、永続白斑BAが大赤斑(GRS)の南側を通過しました。BAは8月初めに 大赤斑後端に追いついた後、25日頃に大赤斑の真南を通過して、9月には前方に 抜けつつあります。BAは赤みが戻ってきたものの、大赤斑の顕著さには及ばない ため、残念ながら「赤ダルマ」には見えませんでした。大赤斑は4月以降、ひと 月当たり+1.5°の割合で後退していましたが、8月以降はII=154°でほぼ停滞し ていました。これがBA通過の影響かどうかは今のところ不明です。

[図2] 大赤斑とBAの会合
撮像:風本明氏(京都府、31cm)


BA後方の南温帯縞(STB)の暗部は、6月に形成されたばかりですが、早くも崩壊が 始まっているようで、長さが約30°に短縮しています。暗部後方の南温帯(STZ) にあった2つの暗斑は、8月末に合体して大きな三角模様が出現しました。前方の STBから後方に放出される暗斑を取り込んでいるようで、2008年に観測された目 玉暗斑と同じ活動が見られます。STBのもうひとつの暗部は、II=330〜50°に見 られ、濃い前半部分とSTB南縁(STBs)に沿って伸びる後半部分に分離しつつあり ます。どちらの暗部も前方のSTB北組織(STBn)が顕著で、ジェットストリームに 乗って前進する小暗斑が無数に見られます。

[図3] NEBの白斑の合体
伊賀祐一氏作成の展開図を筆者改編
撮像:前田和儀氏氏(沖縄県、50cm)、山崎明宏氏(東京都、32cm)、
アントネロ・メドゥーニョ氏(イタリア、36cm)、アンソニー・ウェズレー氏(オーストラリア、35cm)、吉田知之氏(栃木県、30cm)、柚木健吉氏(大阪府、26cm)、
ダミアン・ピーチ氏(イギリス、35cm)


幅広くなった北赤道縞(NEB)は、真ん中の濃い組織によりベルトが三層構造にな っています。以前に比べると濃淡が少なくなり、一様で単調な見え方になってき ました。ベルト内部には3ヵ所で長さ約30°の短いリフト領域が存在します。ま た、ベルト北部(NEBn)には5〜6個の白斑があり、II=95°にあるWSZが最も大きく 明るく見えます。伊賀祐一氏は、8月末にII=270°付近で2個の白斑が合体したと レポートしています。それによると、2つの白斑は徐々に接近し、26日から互い に時計回りに回り始めて、28日には合体してしまいました。そして、ひとつの丸 い白斑となった後も、内部では元の2つの白斑が回り合っていて、28日のWesley 氏の画像では、丸い白斑の内部が暗条によって2つに区切られ、まるで中国陰陽 のシンボルのような形になっています。合体後の白斑はひと回り大きくなりまし たが、9月に入っても小白斑が後方に分離したり、内部にはモヤモヤとした明暗 が見られ、また合体の途上にあるような印象を受けます。

金星

金星は8月20日に東方最大離角となりましたが、日没時の高度は20°ほどで、今 後は急速に低くなって行き、9月24日に最大光輝を迎える頃には12°前後まで下 がってしまいます。今年の金星はあまり条件がよくありません。

[図4] 赤外光と紫外光による金星
撮像:柚木健吉氏(大阪府、26cm)


木星会議

恒例の木星会議が10月23日、24日の二日間、姫路市の姫路科学館で開催されます。 月惑星研究会のホームページに案内が掲載されていますので、奮ってご参加くだ さい。参加を希望される方は、下記URLにアクセスの上、申し込みを行ってくだ さい。

http://alpo-j.asahikawa-med.ac.jp/Latest/Jupiter-C2010.htm

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