天文ガイド 惑星の近況 2012年12月号 (No.153)
堀川邦昭
木星は10月4日に留となり、逆行に転じました。観測の好機となりましたが、夏 の終わりと共に、シーイングが悪くなってしまったのは残念です。火星と土星は 太陽に近く、観測できません。明け方の金星も地球から遠ざかりつつあります。 しばらくの間、夜空は木星の独り舞台となります。

ここでは9月後半から10月前半にかけての惑星面についてまとめます。この記事 中の日時は、すべて世界時(UT)となっています。

木星

大赤斑(GRS)の南を通過中だった永続白斑BAは、10月上旬には前方へ抜けました。 BA自身に通過による影響は見られず、むしろ以前よりも赤みの強い、オレンジ色 のリンク暗斑として顕著になりました。また、大赤斑前方の南熱帯(STrZ)にも今 のところ異常は見られません。BAに続いて、南温帯縞(STB)の小暗斑(CD1)と低気 圧性の白斑(CW1)が大赤斑を通過しつつあります。低気圧性の白斑やフィラメン ト領域(FFR)は不安定で、急に濃化することがあります。2010年にBAと南温帯 (STZ)の小白斑の合体が原因で、後方のFFRが突然攪乱活動を起こしてベルト化し たのは、記憶に新しいところです。今回も大赤斑通過に伴って活動があるかもし れませんので、注意が必要です。

[図1] 大赤斑周辺の状況
赤みの強いBAが大赤斑を通過、前方のSEBは南半分が暗く、バージや白斑が見られる。後方ではpost-GRS disturbanceが活動的。NEBにはリフトが発達し、北縁にはWSZが見られる。撮像:左) 熊森照明氏(大阪府、28cm)、岩政隆一氏(神奈川県、36cm)

大赤斑は以前よりも少し濃度が増して明瞭になったように感じますが、大きな変 化ではありません。9月後半の大赤斑は著しく小さくなり、9月20日の画像では長 径がわずか13.0°しかなく、形も楕円より円に近くなって驚かされましたが、メ タン画像では以前と変わらない大きさでしたし、10月には可視光でも楕円の形状 に戻りましたので、一時的な見かけの変化に過ぎなかったようです。

大赤斑後方の南赤道縞(SEB)に広がる活動領域(post-GRS disturbance)は、40〜 50°の範囲で乱れた白雲の活動が見られ、その後方では明帯が細くなりながら尻 尾のように長く伸びています。大赤斑近くでは、10月初めに明るい白斑が2個出 現し、活動的になっているようです。SEBのその他の領域ではベルトの中央が濃 く(中央組織)なっていて、II=300°より後方では、その北側には米粒を撒いたよ うな細かい明部が無数に見られます。このような様相は、近年SEBが濃化してい る時の定番といった感があります。

[図2] 10月前半の木星面展開図
月惑星研究会の観測から筆者作成 撮像:阿久津富夫氏(フィリピン、35cm)、熊森照明氏(大阪府、28cm)、池村俊彦氏(愛知県、38cm)、小澤徳仁郎氏(東京都、32cm)

SEBの南縁では、所々に孤立した小暗斑が散在しますが、SEB南縁を流れる後退方 向のジェットストリームの活動は弱く、高速で後退する暗斑は観測されていませ ん。特に大赤斑前方のSEB南縁は平坦で、暗斑などによる突起はまったくなく、 非常に静かな印象を受けます。ベルト内部も単調で特徴に乏しいのですが、II= 100°の中央組織上には顕著な小バージ(B1)があり、大変良く目立ちます。また、 その20°ほど後方には、中央組織を分断する大きな明部(W1)が見られ、周辺のベ ルト北部には比較的明瞭な小白斑が散在します。これらはシーズン初めから存在 していますが、激しい活動はなく静的な模様です。

激しい活動が続く北赤道縞(NEB)は、内部にリフトが数多く発達して乱れていま す。南縁には青みの強い暗部が並び、そこから赤道帯(EZ)に向かってフェストゥ ーン(festoon)が伸びています。赤道紐(EB)はシーズン初めに比べると、だいぶ 淡くなりましたが、まだI=300°台を中心に濃く赤みの強い部分が残っています。 NEBの北部は、北縁が北緯20°付近まで拡張していますが、II=300°台や0°台に は北縁が淡く、ベルトが細く見える区間が残っています。また、ベルトの中央北 側には、バージの「タネ」と呼びたくなるような小さな暗斑がいくつも形成され ていますし、北縁には高気圧性の白斑が増えつつあります。このうち、長命な白 斑WSZは大赤斑の北方を通過して、II=170°付近を前進中です。まだ形状は不安 定で、内部には明暗が見られる時もあります。

北温帯縞(NTB)は、赤みの強い南組織(NTBs)は濃度が落ちてきましたが、青黒く 波打った北組織(NTBn)はまだ大変顕著です。

メタンバンドによる画像を見ると、北半球の高緯度に明るい白斑があることに気 づきます。最も明るいのはII=300°の白斑ですが、他にもII=20°付近と90°付 近に見られます。これらはどれも北緯40°付近の北北温帯(NNTZ)に位置し、可視 光では、最初の2つは薄暗いリング模様ですが、II=90°の白斑は可視光で該当す る模様を認めることができません。この緯度には、以前からメタンブライトな白 斑が観測されていますが、同じ模様かどうかは今のところ不明です。

[図3] 北半球のメタン白斑
連続光では赤いリング斑点として見える(丸枠内)。撮像:左) 吉田智之氏(栃木県、30cm)、右) 山崎明宏氏(東京都、32cm)

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