天文ガイド 惑星の近況 2020年4月号 (No.241)

堀川邦昭、安達誠


日没後の南西天では金星が輝いています。 一方、明け方の空には、4時台に火星が昇ってきます。 また、日の出直前には合を過ぎた木星が姿を見せるようになり、新しい観測シーズンが始まりました。

ここでは2月初めまでの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。

火星

火星は2月になると、視直径はほぼ5秒になりました。 筆者(安達)は眼視での観測をしていますが、400倍かけられる光学系であれば、気流がよければ模様を見ることができます。 依然として明け方の地平高度は30°くらいですが、非常によく撮れた画像が集まってきています。

火星の季節を現すLsは、2月1日で145°と、南半球は冬至を過ぎ、次第に春めいてきています。 北極冠は最小の状態になっています。 まだ、北極点が見える位置のため、図1のように永久北極冠が画像に記録されています。

この時期はヘラス盆地に白雲が広がる季節で、画像には白く明るいヘラスの姿が記録されています。 また、氷晶雲といって低緯度地方の上空を東西に帯のように広がる雲が見えますが、これも画像に記録されています。 このような小さな火星で記録されているのは驚きです。

北極冠が小さくなった時には、北極域に北極の冷気が引き金になって極付近にダストストームがよく起こります。 1月13日に、熊森照明氏(大阪府)がシルチスの北側にダストベールのような黄色くなったリムを記録していますが、15日と17日にクライド・フォスター(Clyde Foster)氏が、黄色くベールに覆われた北極を記録しました。 赤外画像では写りますが、緑光像では記録できないことからそれが分かります。

これからは、南極部が見えてきます。 南極フードの下に見える南極冠の出現を待ちましょう。

[図1] 火星の永久北極冠
一番下の小さな白点が北極冠。左のユートピアはダストベールに覆われて淡い。撮像:クライド・フォスター氏(南アフリカ、35cm)
[図2] ヘラスの白雲
上部の大きな白い領域がヘラスに広がる白雲。撮像:熊森照明氏(大阪府、35cm)

木星

2020シーズンの木星はいて座にあり、衝は7月14日です。 南中高度は最大でも33°で昨年とほとんど変わりませんが、夏に近づいた分、好シーイングを期待できそうです。

今シーズンの最初の観測は、カリブ海・キュラソー島のエリック・シューセンバッハ(Eric Sussenbach)氏と、ブラジルのビニシウス・マーティンス(Vinicius Martins)氏による1月25日の木星でした。 赤みのとても強い大赤斑(GRS)や北部が淡化した南赤道縞(SEB)など、昨シーズン末と概ね変わらない様相です。 大赤斑の経度もII=323°で、ほとんど変わっていません。 北赤道縞(NEB)は北縁の凹凸がなくなり、やや細くなったように感じます。 南縁には大きな青い暗部が並び、フェストゥーン(festoon)が目立っています。 赤道帯(EZ)北部の薄茶色は、まだ残っているものの、だいぶ薄れたようです。

A5aとA7が合体!

合直前の12月26日、24回目の近木点通過(PJ24)を迎えた木星探査機ジュノーが、南南温帯縞(SSTB)の高気圧的白斑(AWO)であるA5aとA7の合体という、衝撃的な瞬間を捉えました。 公開された画像では、永続白斑BAのすぐ南でA5aがA7が接触し、白い雲が両者に巻き付いている様子が見られます。 AWOの合体は数日で終わる場合が多いので、53日周期の近木点通過に重なるのは、まさに奇跡です。

SSTBのAWOの合体は過去に何度か観測されています。 最近では2018年5月にA6とA7が合体しました。 どの例も、永続白斑BA−AWOの会合や大赤斑−BA−AWOの三重会合のタイミングかすぐ後に起きています。 A5aとA7は、昨年何度か接近しましたが、間にあった低気圧的な渦が合体を阻んでいたようです。 BAとの会合によって低気圧的な渦が消失したことが、合体の直接の原因かもしれません。

(左)大赤斑は赤みがとても強い。NEB南縁の暗部とフェストゥーンが目立つ。撮像:エリック・シューセンバッハ氏(オランダ、28cm)。(右)大赤斑前方の様子。SEBには中央組織が伸びる。NEBではリフト活動が見られる。撮像:アンソニー・ウェズレー氏(オーストラリア、33cm)
[図3] 今シーズンの木星面
[図4] 合体しつつあるA5aとA7
月惑星研究会のメールでは、まるで雪ダルマだとか、近接連星の想像図のようだといった声が上がった。下の大きな白斑はBA。NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS/Kevin M. Gillより。

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