天文ガイド 惑星の近況 2023年10月号 (No.283)

堀川邦昭、安達誠


夏本番となり、惑星観測の最適の季節となりました。 木星は8月1日におひつじ座で西矩となり、視直径は40秒を越えました。 衝が近づいた土星はみずがめ座を逆行中です。 火星はしし座で観測シーズンはほぼ終了となりました。

ここでは8月初めまでの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。

木星

大赤斑(GRS)前方の南赤道縞(SEB)南縁にはリング状の暗斑が見られます。 白雲の占める割合が大きい大型の「リング白斑」も複数あり、6月末以降、少なくとも4個が赤斑湾(RS bay)に進入しました。 そのため、大規模なフレークの発生が懸念されたのですが、予想に反してごく小規模なものが見られただけでした。 その代わりに大赤斑の南にアーチが発達しています。 前端はストリーク(dark streak)となって伸び、後方はなだらかなスロープとなっていて、SEBが幅広く見えます。 アーチの内部は薄暗く、大赤斑をリング状に囲む赤斑孔(RS Hollow)の輪郭があらわです。 大赤斑周辺のこのような姿は1980〜2000年代においては標準的な見え方でした。

大赤斑本体は明るいオレンジ色で輪郭も明瞭ですが、周囲のSEBよりも淡くなりました。 経度はII=39°で、このひと月は停滞していました。

SEBは北部に明るい所がありますが全周で暗く、大赤斑後方の白雲領域(post-GRS disturbance)が活動的です。 I=200°前後では北縁が乱れていて、赤道帯南部(EZs)に伸びるフェストゥーン(festoon)も見られます。

永続白斑BAはII=90°にあります。 シーズン初めは小さかったのですが、現在は暗いリングに囲まれた元通りの見え方に戻りました。 南南温帯縞(SSTB)の白斑A2も拡散して不明瞭でしたが、7月初めにBAの南側を通過した後は再び明るく見えるようになっています。

北赤道縞(NEB)はリフト活動が収まり、局所的な拡幅も縮小気味です。 拡幅部分のベルト内部には大きな明部があります。 昨年北縁で見られたループ模様の名残です。 同様の明部は他にも残っていますが、どれも幅を広げたNEBの中に取り込まれてしまいました。

北北温帯縞(NNTB)南縁のジェットストリーム暗斑は数が減りましたが、7月16〜20日にかけて、II=200°付近で3つの暗斑が相次いで合体するのが見られました。 暗斑の合体はしばしば起こりますが、3つ同時期というのは珍しいことです。 合体した暗斑は7月末に急に淡化して消えてしまいました。

[図1] 今月の木星面
左)大赤斑周辺。アーチが発達し前後に伸びている。内部は暗く赤斑孔の輪郭が見える。撮像:石橋力氏(神奈川県、31cm)右)NEBの局所的拡幅領域。ベルト内部には元ループの大きな明部が見える。右の凹みは白斑WSZ。撮像:佐々木一男氏(宮城県、40cm)
[図2] NNTB暗斑の3重合体
3つの暗斑が吸い寄せられるように接近し、数日のうちにひとつに合体。暗斑同士の合体はしばしば起こるが、3つというのは珍しい。

土星

土星面は静かで大きな変化は見られません。 8月末の衝が近くなり、環は少し開く局面にあります。 そのため、環が本体の手前を横切って最も幅が狭く見える部分でも、カシニの空隙が明瞭に捉えられるようになっています。 また、環の左と北に見える影が小さくなってきました。 8月に入り、環が少し明るくなっています。 衝効果が始まったようです。

[図3] 土星と衛星たち
南半球高緯度をテティスとその影が経過中。画像の左下にはエンケラドゥス(E)とディオーネ(D)も写っている。撮像:熊森照明氏(大阪府、35cm)

火星

視直径は4秒となり、観測シーズンは大詰めとなりました。 図4は7月25日の伊藤了史氏(愛知県)の画像で、Hellasに白雲が広がっている様子が記録されています。

下の縁の明るいところが北極冠で、やや大きく見えています。 はっきりした形はわかりませんが、北の端がかなり黄色く、ダスティーな状態になっているようです。 また低緯度地方には赤道帯霧(氷晶雲)も出ています。

さて、今シーズンのまとめですが、北極冠が縮小してく過程で発生するエッジダストストームについて調べたところ、面白い現象が見つかりました。

北極冠が見えたLs=334°から96°までの期間に、エッジダストストームは合計15回発生しました。 この回数は筆者(安達)個人の判断で、規模の小さいものは含めていません。 ダストストームは一度発生すると2〜3回立て続けに発生します。 また、複数回発生すると、しばらく間をおいて、再び複数回発生しています。

また「発生の間隔」は北極冠が直径にして30%位になるまでは次第に短くなるという傾向が見られました。 たまたま、今シーズンだけそうなった可能性もありますが、非常に面白い結果が出てきました。 これからもっとたくさんのデータで検証していかなければなりません。 南極冠の方は、縮小過程で大きなダストストームが発生したため、こういった現象を検出することはできませんでした。

[図4] 視直径4秒の火星
左上がSyrtisで、その上の白い部分がHellasの白雲。昔は模様を見るだけでも大変だったが、今では雲の観測も可能、感慨深いものがある。撮像:伊藤了史氏(愛知県、30cm)

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