天文ガイド 惑星の近況 2023年12月号 (No.285)

堀川邦昭


木星はおひつじ座、土星はみずがめ座を逆行中です。 夜半前は衝を過ぎた土星が、夜半過ぎはこれから衝を迎える木星が見ごろとなっています。 観測の好機になりましたが、長かった猛暑と共に好シーイングも去ってしまったのが残念です。

ここでは10月初めまでの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。

木星

永続白斑BAが大赤斑(GRS)のすぐ後方に迫り、まもなく大赤斑の南を通過し始めると思われますが、極めて不明瞭です。 8月までは暗い縁取りに囲まれた、リング状の大きな白斑でしたが、大赤斑に近づくにつれて縁取りが淡化、9月末には消失してしまいました。 BAの内部は薄茶色に濁って周囲とのコントラストが極めて低いため、後方に伸びる南温帯縞(STB)だけが目立ち、BAは高解像度の画像でも見逃してしまいそうです。

大赤斑は先月から4°も後退してII=44°に位置します。 10月初めから南赤道縞(SEB)南縁を後退する大型のリング白斑2個が相次いで赤斑湾(RS bay)に進入を始めました。 9日のメタン画像では大赤斑後部に明るいすじが現れ、可視光でも赤みを帯びたものがあるので、フレークが生じていることがわかります。 また、大赤斑南側のアーチや前方の小暗部も再び濃くなっています。 SEB南縁には他にもジェットストリームに乗って後退するリング暗斑などが数個残っていますが、II=270°より前方のSEB南縁は平坦で、暗斑はほとんど見られません。

大赤斑とBAの前後にはSTBの濃い断片が長く伸びていて、全体の長さは木星面の半周を越えています。 II=320°にある前端では、大量の暗斑が生成されていて、これらはジェットストリームに乗って高速で前進しています。 形成された直後の暗斑は南北に長い不規則な形で、南緯28°付近を1日当たり-2°という少し遅いドリフトで前進しますが、40〜50°進むと小さく丸い暗斑になりながら南緯25〜26°に移動し、ジェットストリームの標準的な値である-3°/dayに加速するという、興味深いふるまいを見せます。

赤道帯(EZ)には長く伸びたフェストゥーン(festoon)が多数見られ、ノーマルな状況に戻った印象ですが、北赤道縞(NEB)南縁はまだ活動的で、各所で小白斑が見られます。 これらはNEB内に細く伸びてリフトを形成しますが、大きく発達するものはありません。 NEB北縁の局所的拡幅領域は縮小して、ベルトの膨らみ程度の見え方となり、このまま終息しそうな様子です。 WSFという北熱帯(NTrZ)の白斑は、拡幅活動によってNEB北部に取り込まれ、暗斑に変化していましたが、拡幅域の縮小によって再びNTrZに露出し、淡く不明瞭になってきました。 再び白斑に戻るのかもしれません。

[図1] 大赤斑と不明瞭なBA
永続白斑BAは大赤斑の右上、STBの先端に位置するが、ほとんどわからないほど不明瞭。撮像:鈴木邦彦氏(神奈川県、19cm)
[図2] 永続白斑BAの変化
シーズン初めは小さかったが、夏には通常のリング状の見え方に戻った。しかし、大赤斑に接近するにつれて縁取りが淡化し、現在は注意しないと見落としてしまいそうである。
[図3] SEB南縁のリングと大赤斑の会合
SEB南縁を後退する2個のリングが大赤斑と会合する様子を木星の3〜5自転毎に並べた。大赤斑を周回して前端側に暗部が形成されている。下は10月9日のメタン画像。矢印の先の明るいところがフレーク。

土星

9月末から10月上旬にかけて、スポークと疑われるB環上の陰影が多数報告されています。 スポークは8月以降、筆者が把握しているだけでも16件確認され、濃淡は様々ですが、どれも丸い暗斑のような形状をしています。

スポークと体系IIIとの位置関係を調べると、10時間45分で公転する2つのクラスターがあるように見えます。 そのため、B環上に固定されているのではないかと思いたくなりますが、土星の環は平板ではなく小さな粒子で構成されているので、ケプラーの法則に従い内側では速く、外側では遅く公転しています。 スポークは土星半径の1.75倍のところにあり、この距離での公転周期は9時間48分程度と予想され、残念ながら前述の周期とは一致しません。

また不思議なことに、スポークが現れるのは土星の南を上にして右側(環が土星の手前に回り込む側)に限られ、反対側ではまったく見られません。 これは2011年のスポークでも見られた特徴です。

土星本体では、時々白斑などが捉えられていますが、概ね静かな状況にあります。 南赤道縞(SEB)の白雲活動は、9月6日に観測された後、9日の画像でも後端部が認められましたが、その後は経度のめぐり合わせが悪く、追跡できなくなってしまいました。 10月初めにはIII=0°前後に位置するはずですが、該当の画像では確認できないので、消失したと思われます。

[図4] 今月の土星面とスポーク
本体右側の環は強調画像。矢印(▲)の先にスポークが見える。撮像:阿久津富夫氏(フィリピン、45cm)

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