土星が6月30日にみずがめ座で留となり、観測の好機となりました。 火星はおうし座に入り、アルデバランの北で輝く木星に接近しつつあります。 梅雨が明けましたが、天候の変化が激しく、夏の安定したシーイングは、まだ先のようです。
ここでは7月下旬までの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。
明け方の火星は高度が40°前後で、視直径も6秒近くとなり、いよいよ本格的な観測シーズンに入りました。
南極冠は小さくなって、熟練の観測者でないと眼視では見えなくなりました。 南極付近は白雲が出ているため、白っぽく見えますが、かなりの高倍率が必要です。 このような火星は南北が分かりにくいので、微動などを使って向きを確認してください。
火星のLsはおよそ300°になりました。 南半球はちょうど夏至と秋分の中間点に差し掛かったところです。 太陽から受ける輻射熱はまだ多く、大気の活動は非常に活発です。
6月23日、クライド・フォスター氏(ナミビア)によって北半球に特徴的なローカルダストストームが捉えられました(図1)。 Elysium(215W, +30)から東に30°くらい離れたところで、スポット状に発生しました。 25日にも再び観測されましたが、発見時よりも暗く、拡散していました。
7月2日には眞島清人氏(沖縄県)が、Hellas(275〜315W, -30〜-60)の北西側にダストストームを記録しました。 画像では明るかったものの、規模は小さいものでした。 その後、淡いダストがNoachis(335〜10W, -25〜-30)方面に広がっていく様子が見られ、10日にはMeridiani(0W, -5)やPandorae Fretum(330〜10W, -23)が見えにくくなりました。 Hellasから移動してきたダストと関係があるかもしれません。
火星は雲の季節に入りました。 リムやターミネーターに白雲が見られるようになり、アルシア山などの大きな成層火山には白雲が記録されています。 また、タルシス台地の広い範囲が雲に覆われるようになり、にぎやかな火星面になっています。 これらは青画像での記録が最適です。
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[図1] Elysium東側のダストストーム |
矢印で示した小さな光斑がダストストーム。撮像:クライド・フォスター氏(ナミビア、35cm) |
今シーズン注目されるのは、赤道帯南部(EZs)の攪乱領域です。 I=210〜270°の範囲で青みの強い暗斑や条模様、大小の白斑が入り乱れ、南赤道縞(SEB)北縁も大きく乱れています。 後端部ではSEB北縁のリフトを通って白雲がEZsに流れ込んでいるように見えます。 7月12日にはEZsに巨大な白斑が形成されていて、SEBから白雲を引きずる様子は1970年代末のEZs ovalを彷彿とさせました(図2)。 この区間のSEB北縁は昨年から活動的で、I系に対して1日当たり+1°の割合で後退しています。 このような活動を、英国天文協会(BAA)ではSouth Equatorial Disturbance(SED)と呼んでいます。 SEDは大赤斑(GRS)の北側を通過する際に、活動的になる傾向があるので、注視しましょう。
大赤斑はオレンジ色で明瞭です。 昨年よりも赤みが強くなりました。 経度はII=57°でほとんど動いていません。 7月10日頃には後方のSEBが盛り上がってフック形成かと思われましたが、すぐに崩れてしまい、前方の南熱帯紐(STrB)もほとんど濃化しませんでした。
永続白斑はII=250°にあり、薄茶色に濁って不明瞭です。 BAの前後で2つに分かれていた南温帯縞(STB)の暗部は一体になりつつありますので、今後はBAが見やすくなるかもしれません。 STrBは大赤斑前方では淡いのですが、STBの北側では明瞭で、II=170°から前方ではSTB北組織と融合しています。
北半球では赤茶色で幅広い北赤道縞(NEB)が目立ちます。 北縁の白斑は、ひとつ増えて6個になりました。 このうちII=180°のものは、長命な白斑WSZです。
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[図2] EZ南部の活動と大赤斑周辺 |
左) EZ南部に大きな白斑があり、SEBから白雲が流れ込んでいる。左上に不明瞭だがBAが見える。撮像:宮崎勲氏(沖縄県、40cm)右) 大赤斑はオレンジ色で明瞭。南側をアーチで覆われている。ガニメデの影が南極地方を経過中。撮像:井上修氏(大阪府、28cm) |
土星ではティタン、レア、ディオネ、テティス、エンケラドゥスといった衛星やその影の、土星面経過が頻繁に捉えられています。 6月30日と7月16日には、ティタンの経過が捉えられましたが、いずれも海外の観測で、日本からは見ることのできない時間帯でした。 ティタンの公転周期はほぼ16日で、今後も経過現象が繰り返し起こりますが、一公転でのズレはわずか1時間半程度しかなく、残念なことに、日本からの位置回りが悪い状況はしばらく続くようです。
土星の環は細く、本体は静かで追跡可能な斑点などの報告はありませんでした。 土星面は南北半球で色調の違いが際立っています。 北半球は薄茶色で縞模様がはっきりしているのに対して、南半球は薄暗い緑色で縞模様は不明瞭です。
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[図3] ティタンの土星面経過 |
右上の大きな黒点がティタン。撮像:クリストファー・バエズ氏(ドミニカ共和国、30cm) |
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